「消費者庁公認」を謳った首下げ型の空間除菌製品。ドラッグストアチェーンのププレひまわりの店頭POP広告に景表法措置命令(消費者庁 2021年6月11日)

「首下げ型の空間除菌製品」に対する景品表示法の措置命令です。

6月11日、消費者庁はドラッグストアチェーンを運営する(株)ププレひまわり(広島県福山市)に対し、同社が販売していた「首下げ型の空間除菌製品」の店頭POPの表示に、景品表示法違反の措置命令を行いました。
消費者庁及び公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所四国支所の調査による事案です。

今回の違反も優良誤認で、身の回りの空間のウイルスを除去・除菌できる効果表示に対して不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められませんでした。
また、その効果が消費者庁公認であるかのような虚偽表示も指摘されています。

今回、処分の対象となったのは商品のメーカーの表示ではなく、販売事業者の店頭POP表示でした。両者の表示の違いを比較しながら、誤認表示について確認してみます。

———-
株式会社ププレひまわりに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2021年6月11日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/024534/
———

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。

【事業者の概要】
(株)ププレひまわり
広島県福山市、日用雑貨等の販売業(大型ドラッグストア運営)

【対象商品】
「ウイルオフ ストラップタイプ」と称する商品

【表示媒体】
店舗(17店舗)における店頭POP

【表示期間】
2020年9月13日~同年12月15日まで

【違反内容】
表示内容:
「様々な使用シーンに合わせて開発した除菌剤」、「ウイルオフ」、
「【ストラップ式】消費者庁公認の首掛け式ウイルス除去剤 お出かけ先でのパーソナル空間のウイルス除去・除菌に。」
商品を首から掛けている人物の画像と共に、「オフィス」及び「外出時」と表示することにより、
あたかも、対象商品を身に着けることで、オフィスや外出時などの様々な使用シーンにおいて、身の回りの空間のウイルスを除去又は除菌できる効果が得られ、その効果を消費者庁が公認しているかのように示す表示をしていた。

表示例:店頭POP

(消費者庁発表資料より抜粋)

実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

●措置命令に対するププレひまわりの見解と対応
ププレひまわりがホームページ上で発表した措置命令に対する謝罪告知の説明では、違反表示が行われた原因について、次のように説明しています。
・該当となる POP を作成した当時、本件商品とは別の弊社非取り扱い商品が消費者庁より措置命令を受けており、本件商品はその対象ではない、という旨をお客様に情報伝達しようと考え、過剰な表現に至った。
・また、その内容を確認する機能が不足していた。

なお、同社では、店頭において返金対応を行っています。


消費者庁による措置命令に関するお知らせ
((株)ププレひまわり 2021年6月11日)
https://himawarinews.com/wpcms/wp-content/uploads/2021/06/cda40569d6ac0ed9bbdec625ed11a2c0.pdf

——

今回、処分の対象となったのは商品のメーカーの表示ではなく、販売事業者の店頭POP表示でした。販売事業者として仕入れ商材の仕様や機能性の根拠資料をきちんと把握し、表示を行うにあたっては広告で訴求する内容と根拠データとが適切に対応したものであることが必要です。
不実証広告規制の正しい理解が求められます。

なお、メーカーの当該商品の紹介ページを確認すると、商品の使用範囲について「室内用(~1㎥)」と表示され、注釈においても「1㎥エリアの密閉空間におけるウイルス試験において、99%の除去効率が証明されています。」と記載がありました。
「オフィス」や「外出時」の画像については、ストラップでの装着シーンの説明として表示されており、ウィルス除去効果の得られる使用範囲として説明されているものとはなっていない印象です。

大木製薬株式会社ウェブサイト
「ウイルオフ ストラップタイプ」製品紹介ページ(抜粋)
https://www.viruoff.com/products/strap.html

「空間除菌剤」に関しては、新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った商品に対する消費者庁の監視が強まっています。
首下げ型の製品については、2020年度中に5社に対して措置命令が出されており、今回は21年度最初の処分事案となります。

2020年8月に東亜産業、2020年12月にSalute.Lab、、2021年1月にNature Linkと萬祥、3月にレッドスパイスに対して措置命令が出されています。

・今年度5社目。レッドスパイスの首下げ空間除菌製品に景表法措置命令。除菌効果への打消し表示認められず(消費者庁 2021年3月18日)

・Nature Link、萬祥、首下げ空間除菌製品2社の表示に景表法措置命令。分かれる両社の対応(消費者庁 2021年1月15日)

・通販事業者 東亜産業、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)

・Salute.Lab、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。実証データは、訴求内容に適切に対応を(消費者庁 2020年12月22日)

今後も、新型コロナウィルス関連広告に対する法執行は続くことが予想されます。
また、その他の広告においても、商品の効能効果を謳う表示に対する不実証広告規制による処分は引き続き厳しく執行されることが予測されます。

しっかりと、合理的根拠や打消し表示の考え方について理解し準備しましょう。
フィデスがサポートいたします。

景品表示法上の表示の裏付けとなる「合理的な根拠」。効能効果の適切な実証方法

・消費者庁が本気で調査!打消し表示は明瞭に

《参考記事》

・携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導について
(消費者庁 2020年5月15日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/019867/

気になる消費者庁のネット広告監視動向と処分。新型コロナウイルス予防関連商品は注意

・消費者庁、新型コロナウイルス予防商品緊急監視 30事業者による46商品の表示に改善要請(消費者庁  2020年2月25日~3月6日)

・根拠なし新型コロナの感染予防効果、34事業者41商品の表示に改善要請。消費者庁の緊急監視(第2弾) (消費者庁  2020年3月9日~3月19日)

・続く、消費者庁の新型コロナウイルス予防商品緊急監視(第3弾)、35事業者38商品の表示に改善要請 (消費者庁  2020年4月1日~5月22日)

・2度目の緊急事態宣言下、消費者庁の新型コロナウイルス予防商品緊急監視(第4弾)、45事業者42 商品・役務の表示に改善要請 (消費者庁  2021年1月~2月上旬)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。