続く除菌剤の景表法措置命令。サプリメント・ワールド、新型ウイルス除去、空間除菌、消臭効果に優良誤認(消費者庁:2021年6月15日)

消費者庁は6月15日、食品の販売及び輸出入事業者(株)サプリメント・ワールド(東京都世田谷区)に対し、同社が販売する除菌剤3商品の表示について、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。

同社は、3商品の容器ラベルやパッケージ、リーフレットなどに、商品に含有される成分(二酸化塩素等)による新型ウイルスを除去する効果、空間除菌効果を表示し、自動車販売店などで販売していました。

今回の違反もいずれも不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められませんでした。また、一部の商品の表示には、「※閉鎖試験による試験結果です。全てのウイルスや菌、カビや害虫に効果があるわけではありません。ご使用環境や季節により成分の広がりや使用期間は異なります。」と打消し表示をしていましたが、打消し効果は認められませんでした。

なお、サプリメント・ワールドは、処分を前に不当表示を認める謝罪広告を日刊新聞紙2紙に掲載しており、再発防止策を講じることと同様の違反表示を行わないことのみ命じています。

違反概要と、過去の空間除菌剤に対する措置命令事案について確認します。


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株式会社サプリメント・ワールドに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2021年6月15日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/024570/
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。

【事業者の概要】
(株)サプリメント・ワールド
東京都世田谷区、食品の販売及び輸出入等

【対象商品・表示媒体・期間】
「エクステアライズゲル」と称する商品
容器、商品パッケージ:遅くとも2011年12月31日頃から2020年11月6日までの間
リーフレット:2017年3月14日から2020年11月6日までの間

「エクステアライズスプレー」と称する商品
容器に貼付したラベル、商品パッケージ:
遅くとも2013年1月31日頃から2020年11月6日までの間
リーフレット:2017年3月14日から2020年11月6日までの間

「エクステアライズプラス」と称する商品
容器、商品パッケージ、リーフレット:
遅くとも2016年7月31日頃から2020年11月6日までの間

【違反内容】
エクステアライズゲル
容器・商品パッケージ:
「車内・室内用」、「新型ウイルス対応・空間除菌」、「アルコールの10万倍の除菌力」、「用途」及び「ウイルス除去、空間除菌」、「成分」及び「ClO₂(二酸化塩素)」と表示することにより、
あたかも、本件商品はアルコールの10万倍の除菌力を有しており、商品を自動車内又は室内に設置することで、商品に含有される成分の作用により、自動車内又は室内において、新型ウイルスを除去する効果及び空間に浮遊する菌を除菌する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例(「エクステアライズゲル」容器):
(消費者庁公表資料より引用)

リーフレット:
例えば、
・「除菌」、「エクステアライズゲル」及び「お車などに置くだけ簡単除菌!!」との記載と共に、本件商品①を設置した自動車内の写真及び同自動車内に浮遊する菌のイメージ画像
・「エクステアライズの特徴」、「■アルコールの10万倍の除菌力」、「■あらゆる細菌・ウイルスに対応します」、「■インフルエンザやノロウイルス等のあらゆる細菌・ウイルスに対応。」、「■嫌なニオイも完全消臭。」等と表示することにより、
あたかも、本件商品はアルコールの10万倍の除菌力を有しており、商品を自動車内又は室内に設置することで、商品に含有される成分の作用により、自動車内又は室内において、新型ウイルスを除去する効果、空間に浮遊する菌を除菌する効果、あらゆる細菌又はウイルスを除菌又は除去する効果及び臭いを完全に消臭する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例(「エクステアライズゲル」「エクステアライズスプレー」リーフレット):
(消費者庁公表資料より引用)

エクステアライズスプレー
容器に貼付したラベル:
「新型ウイルス対応」、「【使用法】」及び「除菌したいところやニオイの気になるところへ直接スプレー噴霧するか、もしくはスプレー拭きをしてご使用ください。」、「成分:ClO2」と表示することにより、
あたかも、本件商品を対象物に噴霧することで、商品に含有される成分の作用により、新型ウイルスを除去する効果が得られるかのように示す表示をしていた。
表示例(「エクステアライズスプレー」容器ラベル):
(消費者庁公表資料より引用)

商品パッケージ:
例えば、
・「新型ウイルス対応」
・「エクステアライズの特徴」、「除菌力:アルコールの10万倍を誇る高い除菌力。」、「消臭力:ニオイの元となる原因菌を除去する完全消臭。」、「利便性:気になる場所にシュッとひと吹きするだけでお手軽簡単。」及び「特徴:空間に噴霧すれば空間除菌にもあります。等と表示することにより、
あたかも、本件商品はアルコールの10万倍の除菌力を有しており、商品を対象物又は空間に噴霧することにより、商品に含有される成分の作用により、新型ウイルスを除去する効果、空間に浮遊する菌を除菌する効果及び臭いを完全に消臭する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

リーフレット:
例えば、
・空間に浮遊する菌のイメージ画像に対して本件商品を噴霧するイメージ画像と共に、「除菌」、「エクステアライズスプレー」及び「気になる場所にシュッとひと吹きするだけでお手軽簡単除菌!!」
・「エクステアライズの特徴」、「■アルコールの10万倍の除菌力」、「■あらゆる細菌・ウイルスに対応します」、「■インフルエンザやノロウイルス等のあらゆる細菌・ウイルスに対応。」、「■嫌なニオイも完全消臭。」等と表示することにより、
あたかも、本件商品はアルコールの10万倍の除菌力を有しており、商品を対象物又は空間に噴霧することで、商品に含有される成分の作用により、新型ウイルスを除去する効果、空間に浮遊する細菌又はウイルスを除菌又は除去する効果、あらゆる細菌又はウイルスを除菌又は除去する効果及び臭いを完全に消臭する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

エクステアライズプラス
容器・商品パッケージ:
「新型ウイルス対応」、「新型ウィルス対応・ウィルス除去」、「用途」及び「ウイルス除去」、「成分」及び「植物エキス・香料・精油・界面活性剤・エタノール」と表示することにより、
あたかも、本件商品を設置することで、商品に含有される成分の作用により、新型ウイルスを除去する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

リーフレット:
例えば、
・「従来、空間内の『ウィルス除去・除菌・消臭・防カビ』を安定して行うことは、化学物質でしか出来ませんでした。しかし、Xsterilize Plusは、ファイトケミカルを主原料に用いることで、これら効果を天然由来成分で実現することに成功した画期的な商品です。天然由来成分を主原料に用いることで、安全性が更に高まりより一層安心してお使いいただくことが出来ます。」
・「■インフルエンザやノロウイルス等のあらゆる細菌・ウイルスに対応。」及び「■
嫌なニオイも完全消臭。」等と表示することにより、
あたかも、本件商品を自動車内又は室内に設置することで、商品に含有される成分の作用により、自動車内又は室内において、新型ウイルスを除去する効果、空間に浮遊する菌を除菌する効果、あらゆる細菌又はウイルスを除菌又は除去する効果及び臭いを完全に消臭する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例(「エクステアライズプラス」リーフレット):
(消費者庁公表資料より引用)

実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

●打消し表示について
「エクステアライズプラス」リーフレットについて、「※閉鎖試験による試験結果です。全てのウイルスや菌、カビや害虫に効果があるわけではありません。ご使用環境や季節により成分の広がりや使用期間は異なります。」と表示していましたが、当該表示は、一般消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされています。

●続く空間除菌剤。除菌スプレーに対する処分
新型コロナウイルス対策を謳った空間除菌剤や除菌スプレーに対する処分が続いています。

2021年4月9日、消費者庁は亜塩素酸含有除菌スプレーの空間除菌効果の表示について、レック(株)と三慶(株)に対し、措置命令を行いました。

・亜塩素酸による空間除菌スプレー2社に景表法措置命令。根拠認められずも取消訴訟へ(消費者庁:2021年4月9日)

また、亜塩素酸含有空間除菌スプレーに対する措置命令は、2021年3月に(株)IGC、アデュー(株)、(株)ANOTHER SKYの3社に出されています。
・亜塩素酸による除菌効果スプレー3社に景表法措置命令。根拠認められず(消費者庁 2021年3月4日)

コロナ禍以前には、2014年3月に、二酸化塩素を使った空間除菌剤を販売していた17社に対して、同年5月に、車載用マイナスイオン発生器について大阪市の家庭用電気機械器具販売事業者(株)エム・エイチ・シーに対し、措置命令が出されています。

「空間除菌剤」17社、景表法措置命令。大幸薬品の新たな広告も問題視(消費者庁:平成26年3月27日)

・マイナスイオン発生器「旅の恋人」、景表法措置命令。二酸化塩素空間除菌剤に続く(消費者庁:平成26年5月1日)

全ての事案が、不実証広告規制を用いた措置となっています。
除菌効果そのものが客観的に実証されたものであると同時に、広告で訴求する内容に適切に対応した使用条件下での除菌効果を測る試験設計となっているかがポイントとなります。
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。