亜塩素酸による空間除菌スプレー2社に景表法措置命令。根拠認められずも取消訴訟へ(2021年4月9日 消費者庁)

消費者庁は4月9日、除菌スプレーの製造・販売2事業者に対し、商品に含有される亜塩素酸による空間除菌効果の表示について、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。

措置命令を受けたのは、レック(株)(東京都中央区)、三慶(株)(大阪市中央区)の2社。
亜塩素酸含有空間除菌スプレーに対する措置命令は、3月に(株)IGC、アデュー(株)、(株)ANOTHER SKYの3社に出されています。

本件では、レックは自社ウェブサイトと動画広告で、三慶は、自社ウェブサイトで、リビング等の室内空間に浮遊するウイルス又は菌を除菌する効果が得られるかのような表示していました。

今回の違反もいずれも不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められませんでした。また、レックは「すべてのウイルス・菌を除去できるわけではない」旨の打消し表示をしていましたが、打消し効果が認められませんでした。

なお、レックと三慶では、措置命令に対する対応が異なっており、消費者庁はレックにのみ、消費者に対する誤認排除措置を命じています。

違反概要と、措置命令に対する2社の対応について確認します。


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亜塩素酸による空間除菌を標ぼうするスプレーの販売事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(2021年4月9日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/023821/
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。

【2社の概要】
レック(株)
東京都中央区、化粧品、医薬品等の製造、販売業

三慶(株)
大阪市中央区、亜塩素酸水とその製剤の製造販売業

【対象商品・表示媒体・期間】
レック:「ノロウィルバルサン」と称する商品
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト:2020年9月8日及び同年10月19日
YouTube又は小売業者等の店頭における動画広告:2019年11月28日から2020年10月28日

三慶:「ケア・フォー ノロバリアプラス スプレー」と称する商品
自社ウェブサイト:2020年8月31日~2020年10月19日

【違反内容】
レック:

自社ウェブサイト:
「クロラス酸で空間除菌 目に見えないウイルス・菌を99.9%除去」、「空間の気になるウイルスに効く」、「●空気中のウイルスに対するの除菌効果はありますが、あくまで対策としてご利用ください。」、「空間のウイルス除去・除菌」等と表示することにより、あたかも、商品を空間に噴霧することで、商品に含有されるクロラス酸の作用により、リビング等の室内空間に浮遊するウイルス又は菌を99.9パーセント除去又は除菌する効果が得られるかのように示す表示をしていた。
動画広告:
商品の映像と共に、「空間除菌のノロウィルバルサン」との音声及び文字の映像、「微細なミストになった除菌成分のクロラス酸が気になる場所のウイルスや菌を99.9%除去」との音声及び「ウイルス・菌 99.9%除去」との文字の映像等と表示することにより、あたかも、商品を空間に噴霧することで、商品に含有されるクロラス酸が空気中で作用することにより、リビング等の室内空間に浮遊するウイルス又は菌を瞬時に99.9パーセント除去又は除菌する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例(自社ウェブサイト):
(消費者庁公表資料より引用)

三慶:
自社ウェブサイト:
「ケア・フォーノロバリアプラスをシュッとひと吹き」、「浮遊菌をカット!!」、「空間(キッチン・リビング・トイレ・浴室・厨房・調理場・便所・風呂・食堂・ホールなどの狭小空間)のウイルス除去・除菌」、「気になる空間に1m²当たり1回を目安に噴霧してください」、「*当社試験として、狭小空間でケア・フォーノロバリアプラススプレーを噴霧し、空気中のクロラス酸(HClO2)が特定の『浮遊ウイルス・浮遊菌』を除去できる濃度を確認しています。」等と表示することにより、あたかも、商品を空間に噴霧することで、商品に含有されるクロラス酸が空気中で作用することにより、キッチン、リビング等の室内空間に浮遊する菌又はウイルスを除菌又は除去する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例:
(消費者庁公表資料より引用)

実際:
2社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

●打消し表示について
レックは、
「※すべてのウイルス・菌を除去できるわけではありません」等と表示していましたが、当該表示は、一般消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされています。

●措置命令に対する2社の対応
三慶は、処分を前に不当表示を認める謝罪広告を日刊新聞紙2紙及びホームページ上に掲載しています。
このため、消費者庁はレックにのみ、消費者に対する誤認排除措置を命じています。
謝罪告知の説明では、「表示は自社の試験データをもとにして掲載されたものだが、社外の専門家に内容を確認して検討した結果、表示している効果を裏付ける根拠資料は見当たらず、優良誤認表示にあたるという結論に至った」としています。

三慶(株) (2021年3月26日)
「ケア・フォー ノロバリアプラス スプレー」による空間除菌表示に関するお詫びとお知らせ」
https://www.sankei-group.com/pdf/news210326.pdf

他方、レックは4月10日、今回の措置命令に対して、取締役会を開き、措置命令に対する取り消し訴訟の提起と、執行停止の申し立てを行うことを決定したと自社ウェブサイト上で公表しています。

レック(株) (2021年4月10日)
「消費者庁からの措置命令に対する取消訴訟の提起及び執行停止の申立について」
https://www.lecinc.co.jp/news/detail/20210410/

同社の主張は以下のような内容です。
「商品を空間に噴霧することで、本件商品に含有されるクロラス酸の作用により、リビング等の室内空間に浮遊する「ウイルス又は菌を99.9%除去又は除菌」する効果の表示については自社試験等での検証データをもとにして掲載しており、消費者庁に対しても根拠データとして提示した。」
「当社は消費者庁に対して、室内噴霧により、天井、壁、床、手すり等に付着しているウイルス・菌に対する効果について、大学機関の試験結果を提供することにより、ウイルス・菌に対する不活化については説明しており、消費者庁もこの点に関しては優良誤認とは判断されていない。」

本件の措置命令の判断においては、広告で訴求する内容に適切に対応した、室内空間におけるスプレーによる空間除菌効果を測る試験設計となっているかがポイントとなります。
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。