Salute.Lab、首下げ空間除菌製品 の表示に景表法措置命令。実証データは、訴求内容に適切に対応を(消費者庁 2020年12月22日)

12月22日、消費者庁はSalute.Lab(株)に対し、同社が自社ウェブサイトにおいて販売していた「首下げ型の空間除菌製品」の表示に、景品表示法違反の措置命令を行いました。
消費者庁及び公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所の調査による事案です。

Salute.Labは大阪市の日用品雑貨等の製造販売業を行っている事業者です。
「首下げ型の空間除菌剤」に関しては、2020年8月28日に(株)東亜産業(東京都)に対し措置命令が出されています。

・通販事業者 東亜産業、首掛け空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)

いずれの違反も優良誤認で、不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」について、正しい認識がなされていないことがうかがえます。

内容を確認します。

———-
Salute.Lab株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2020年12月22日)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_201222_01.pdf
———

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。

【対象商品】
「イオニアカードPLUS」と称する商品

【表示媒体・表示期間】
自社ウェブサイト:2020年7月16日、同年4月1日~11月5日までの間

【違反内容】
表示内容:
自社ウェブサイト:
例えば、
「検証結果で分かるイオニアカードの確かな効果」と記載のあるウェブページにおいて、商品の画像と共に、
「検証結果で分かるイオニアカードの確かな効果」、
「スギ花粉 84.5%除去」及び円グラフの画像、「ヒノキ花粉 77.6%除去」及び円グラフの画像、「PM2.5  90.1%除去」及び円グラフの画像、
「カードを身につけるだけで空気のトラブルからあなたを守る」、「花粉」、「アレル物質」、「ウイルス」、「PM2.5」、「タバコのニオイ」及び「これらは、ぜんそくや鼻水・鼻詰まり、目のかゆみなどの原因に。インフルエンザには、二次感染のリスクもあります。『イオニアカード』は、そんな”空気のトラブル”からイオンの力であなたを守ります。」
等と表示することにより、
あたかも、対象商品を身につければ、商品から発生するイオンの作用により、商品から半径1.5メートルから2メートル程度又は半径1.5メートル程度の身の回りの空間における花粉及びPM2.5を除去し、商品を身に着けた者にウイルス、菌等を寄せ付けない効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例:自社ウェブサイト

(消費者庁発表資料より抜粋)



実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

●打消し表示について
例えば、
「検証結果で分かるイオニアカードの確かな効果」と記載のあるウェブページにおいて、
「●本製品は空気の清浄効果を保証するものではありません。」
「※60L(50㎝×40cm×30cm)のボックス内に8,000個/㏄濃度のスギ花粉を入れ時間経過による濃度を測定し、イオニアカード有・無の時間経過による濃度を測定し、比較検証致しました」
等と表示していたが、当該記載は、一般消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされています。


表示例(赤枠部分)

(消費者庁発表資料より抜粋)


——

●Salute.Labの今後の対応
Salute.Labは、自社HPにて、「ウェブサイト内の広告表現に関するお詫びとお知らせ」という件名で、「消費者庁に対し、第三者評価機関での実証実験や各種参考文献等の具体的根拠となるエビデンスの提出をしたが、結果としてこのような措置命令を受けたことを真摯に受け止め、広告表記の適正化に努める」として、以下のように説明しています。

・本件商品からイオンが発生すること、「イオニアカード」(本件商品と同じ原料で、本件商品より配合が少ない商品)では、閉鎖空間における実験により花粉やPM2.5の除去作用があることについて第三者評価機関にて実証されていたが、適切な広告表現ができていなかった。

・今後は、広告表現の合理的根拠とした試験の内容、試験の条件、試験の範囲、試験の結果等、情報を分かりやすく表示するとともに、実際の製品による生活空間での試験を試み、その結果を基にして、本件商品の作用が広告表示の内容に合致していることについての客観的な検証を行う。

(Salute.Lab株式会社HP 令和2年12月22日)
https://ion-e-air.jp/news/detail?id=77

●不実証広告規制による、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」と認められるには
不実証広告規制で求められる根拠資料が、表示の裏付けとなる合理的な根拠であると認められるためには,次の2つの要件を満たす必要があります。
(1)提出資料が客観的に実証された内容のものであること。
(2)表示された効果、性能と、提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。

今回、Salute.Labが提出した表示の裏付けとなる「合理的な根拠」データは、閉鎖空間における実験での花粉やPM2.5の除去作用についての、第三者評価機関による実証データでした。
これは、(1)の条件は満たすものの、表示された効果、性能が「身の回りの空間」における花粉やPM2.5の除去作用であることに対応するものではなく、(2)の条件を満たせていませんでした。
本件の打消し表示では、閉鎖空間における試験条件が具体的に記載されていましたが、打消し効果は認められませんでした。

訴求したい商品の性能や効果に関して、その根拠となる実証データは、訴求内容に適切に対応した試験内容、試験条件、試験の範囲、試験結果等が求められます。

●新型コロナウィルス関連広告は今後も注意
「空間除菌剤」に関しては、消費者庁が実施した新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った商品のネット広告緊急監視(※)において、改善要請を受けた品目に含まれており、監視の目が強まっていました。

(※)
3月10日(第1弾)、3月27日(第2弾)、6月5日(第3弾)の3度にわたって実施され、99事業者125商品の表示に改善要請と一般消費者への注意喚起が行われた。
・続く、消費者庁の新型コロナウイルス予防商品緊急監視(第3弾)、35事業者38商品の表示に改善要請 (消費者庁  2020年4月1日~5月22日)

特に、「首下げ型の空間除菌剤」に関しては、5月15日に販売事業者5社に対する行政指導も行われています。

・携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導について
(消費者庁 2020年5月15日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/019867/

また、過去においては2014年3月に、二酸化塩素を使った空間除菌剤を販売していた大幸薬品(大阪)や大木製薬(東京)など17社に対し、一斉処分の措置命令が出されています。

・「空間除菌剤」17社、景表法措置命令。大幸薬品の新たな広告も問題視(消費者庁 平成26年 3月27日)

性能に関する表示への不実証広告規制による類似の事案では、過去に以下のものがありました。

2012年11月:シャープ「プラズマクラスターイオン技術を搭載した電気掃除機」

2014年5月:エム・エイチ・シー「車載用マイナスイオン発生器」

2015年2月:空間用虫よけ剤4社に景表法措置命令

2019年5月:通販事業者BLI「害虫駆除用品」

今後も、新型コロナウィルス関連広告に対する法執行は続くことが予想されます。
しっかりと、効能効果の根拠資料について理解し準備しましょう。
フィデスがサポートいたします。

《参考記事》
・景品表示法上の表示の裏付けとなる「合理的な根拠」。効能効果の適切な実証方法

・気になる消費者庁のネット広告監視動向と処分。新型コロナウイルス予防関連商品は注意!

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。