パソコン通販サイトの二重価格と期間限定キャンペーンに有利誤認。富士通の販売会社に措置命令 (消費者庁:2023年6月23日)

パソコン通販サイト上の不適切な二重価格表示と期間限定表示に、景品表示法の措置命令です。
消費者庁は6月23日に、パソコン製造販売事業者の富士通クライアントコンピューティング(株)(川崎市)に対し、景品表示法の措置命令を行いました。
販売実績のない「通常価格」での二重価格表示や「まとめ買いキャンペーン」に対して、期間限定をうたいながら、期限後も、繰り返し同様の割引での提供をしていたことが、有利誤認とみなされました。
処分内容と二重価格表示、期間限定キャンペーンの有利誤認の考え方を確認します。

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富士通クライアントコンピューティング株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
 (消費者庁:2023年6月23日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/033742/
———-


【違反内容】

(1)二重価格表示
対象商品:
ノートパソコン15商品

  1. LIFEBOOK WU2/G2
  2. LIFEBOOK WU2/G2 5G
  3. LIFEBOOK WU4/G2
  4. LIFEBOOK WU-X/G2
  5. LIFEBOOK WU3/G2
  6. LIFEBOOK WUB/F3
  7. LIFEBOOK WU2/F3
  8. LIFEBOOK WU3/F3
  9. LIFEBOOK UH-X/G2(返品再生品)
  10. LIFEBOOK UH90/G2
  11. LIFEBOOK UH90/G2(返品再生品)
  12. LIFEBOOK UH90/F3
  13. LIFEBOOK UH75/F3
  14. LIFEBOOK UH75/F3(返品再生品)

表示媒体:
「富士通 WEB MART」と称する自社ウェブサイト
期間:
遅くとも2022年10月4日から2023年2月8日までの間
表示内容:
例えば、1.の商品について、遅くとも2022年10月4日から同月5日までの間、
「WEB価格(税込) 187,880円 キャンペーン価格(税込) 148,425円 21%OFF(10/5 14時まで)」と表示。
あたかも、「WEB価格」と称する価格は自社ウェブサイトにおいて通常提供している価格であり、「キャンペーン価格」と称する価格が通常提供している価格に比して安いかのように表示していた。(表示例、赤枠箇所)

実際には「WEB価格」は自社ウェブサイトにおいて本件15商品について販売された実績のない価格であった。

(2)期間限定販売表示
対象商品:
a)本件15商品のうち①から⑨、⑪、⑬及び⑭の12商品
b)本件15商品のうち①から⑧までの8商品
期間:
遅くとも2022年10月4日から2023年1月24日までの間
表示内容:
a)例えば、1.の商品について、遅くとも2022年10月4日から同月5日までの間、
「WEB価格(税込) 187,880円 キャンペーン価格(税込) 148,425円 21%OFF(10/5 14時まで)」と表示。
あたかも、表示期限内に購入した場合に限り本件12商品を「キャンペーン価格」で購入できるかのように表示していた。(表示例、赤枠箇所)

    実際には、表示期限後に購入した場合であっても、当該キャンペーン価格で本件12商品を購入することができるものであった。

    b)例えば、1.の商品について、遅くとも2022年10月4日から同月26日までの間、
    「“まとめ買いキャンペーン実施中”買えば買うほどお得! 対象商品のお買い上げ数量に応じて割引額がアップするお得なキャンペーンです。3台以上のお買い上げ→1台につき3,000円OFF!5台以上のお買い上げ→1台につき5,000円OFF!」
    「[期間:2022年10月26日(水)14時まで]」と表示。
    あたかも表示期限内に本件8商品を含む「まとめ買いキャンペーン」の対象商品を複数購入した場合に限り、キャンペーン価格からさらに値引きした価格で本件8商品を購入できるかのように表示していた。(表示例、青枠箇所)

    実際には、表示期限後に購入した場合であっても、当該キャンペーン価格からさらに値引きした価格で本件8商品を購入することができるものであった。

    【表示例】

    (消費者庁発表資料より抜粋)

    様々な不適切な二重価格表示での処分事例

    パソコン販売の二重価格表示に対する措置命令には、2021年3月に東京都による処分事案がありました。
    ・二重価格表示の適法の工夫とは。パソコン通販サードウェーブ、二重価格表示に景表法措置命令
    (東京都 2021年3月30日)
    サードウェーブ事案の二重価格表示で問題となったポイントは、比較対象価格の販売時期と商品同一性でした。

    1. 比較対照価格で販売された最後の日から2週間以上経過していた。
    2. 比較対照価格は同じ商品の過去の販売価格ではなく、別モデルの過去の販売価格を使用していた。

    2.に関しては、以下の理由で同一製品での価格比較とは認められず、比較対照価格での販売実績が認められなかったとしています。
    ・比較対象価格に設定した製品が旧モデルであるのに対して、販売価格の製品はCPUやストレージのスペックが異なっていた。
    ・比較対象価格が製品単体価格であるのに対して、販売価格はサービス加入がプラスされていた。
    ・販売価格の製品は、既存製品にマイクロソフトオフィスをプリインストールしたモデルであった。
    上記以外にも、ネット通販で陥りがちな、通常価格表示が比較対象価格として認められずに不当表示とみなされたケースがあります。

    通常の販売活動とは言えない価格を比較対象価格に用いるケース(ネット販売サイトでの二重価格表示において、店頭販売価格を比較対象価格に用いるケース)
    ・ECサイトでの二重価格表示に店頭販売での「通常価格」認められず。北海道産地直送センターに景表法措置命令(消費者庁 2022年7月29日)
    ネット販売する際の自社サイトの表示において、自社サイトでの販売実績のない店頭での販売価格を単に「通常価格」として比較対象価格に用いることは、通常の販売活動(ここではネット販売)とは言えない価格(ここでは店頭販売価格)との比較で安いとの誤認をまねくとみなされ、有利誤認となりました。
    このケースにおいては、「通常価格」が最近相当期間にわたる販売実績があることを前提に、店頭販売価格であることを正確に表示することによって誤認を免れた可能性があります。

    「会員価格」での値引き表示に対する比較対照価格において、「非会員価格」での「通常価格」が認められなかったケース
    ・非会員価格を比較対照価格にしてもOK?ジャパネットたかたの二重価格表示に景表法措置命令
    (消費者庁:平成30年10月18日)
    入会金が無料であったり、簡単(チェックボックスにチェックを入れるだけなど)な手続で容易に会員になることが可能な場合、「非会員価格」を「通常価格」として、「会員価格」の比較対照価格に設定することは注意が必要です。

    公正取引委員会では「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(※)を発表しています。
    (※)
    ◆不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
    (平成12年6月30日公正取引委員会 改定 平成28年4月1日消費者庁)
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf

    上記ガイドラインより、二重価格表示に関する景品表示法の解説記事をまとめました。
    どうぞご参考ください。(会員限定コンテンツです。会員登録(無料)はこちらから

    ・二重価格表示の注意点~セール時の価格表示~
    ・二重価格表示の注意点 ~比較対照価格の商品同一性~

    同一内容のキャンペーンでなければ継続可能の落とし穴

    期間限定キャンペーンは、消費者に「今買う(申し込む)ことが得だ」と思わせて購入を促す手法ですので、表示した期限後も同一内容のキャンペーンを間断なく継続することは、実際よりも有利な条件で購入できるかのように誤認させる有利誤認となります。
    同一内容のキャンペーンでなければ継続可能ということになりますが、わずかな内容変更の場合は認められないおそれがあります。
    わずかな変更はあるものの、同様とみなされる商品を同様の値引き価格で提供したり、同様とみなされる特典を付与するキャンペーンの継続に対して、不当表示とみなされたケースがあります。
    ・セドナエンタープライズ脱毛器、期間限定キャンペーンの繰り返しに有利誤認。同一とみなされたキャンペーン内容は?
    (消費者庁:2022年3月15日)

    また、価格そのものが同一ではなかったものの、同一の割引率だった場合に、同じ内容の割引キャンペーンとして扱われ、不当表示とみなされたケースもあります。
    ・キュラーズ、レンタル収納の「期間限定」割引キャンペーン表示に景表法措置命令 有利誤認の考え方は?(消費者庁:2020年1月17日)

    これら以外にも、期間限定割引キャンペーンに対する処分事案は多数あります。
    期間限定割引キャンペーンの恣意的な繰り返しには注意が必要です。

    過去の処分事例:
    ・オンライン個別学習指導のバンザン、不適正な「満足度1位」と期間限定キャンペーンに景表法措置命令。(消費者庁 2023年1月12日)
    ・資格取得講座の二重価格と期間限定キャンペーンに有利誤認。「未来ケアカレッジ」のEE21に措置命令 (消費者庁:2022年3月24日)
    ・ファクトリージャパン、整体の「期間限定」割引キャンペーン表示に景表法措置命令 有利誤認の考え方は?(消費者庁:2019年10月9日)
    ・加熱式タバコ「期間限定」割引キャンペーン表示 フィリップ・モリス・ジャパンに景表法措置命令(消費者庁:2019年6月21日)
    ・マカフィー 期間限定キャンペーンの「標準価格」「特別価格」に景表法措置命令!打消し表示にも注意 (平成30年3月22日 消費者庁)
    ・「期間限定」割引キャンペーン表示 中国電力の子会社(株)エネルギア・コミュニケーションズに景表法措置命令 (平成29年3月24日 消費者庁)
    ・「今なら無料!」キャンペーン表示に注意。GMOインターネットのネット接続サービスに景表法措置命令(消費者庁:平成29年3月22)
    ・値引きキャンペーン「1カ月限定」が、実際は5年近く継続。法律事務所に景表法措置命令!
    いつでも値引き?キャリアカレッジジャパンの通信講座値引きキャンペーン表示に景表法措置命令

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    久保京子

    このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
    (財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。