平成30年度の食品表示法違反「指示件数」国12件、都道府県11件、検挙事件数26件(食品表示法:H30年度、警察庁:H30年)

先日の記事では、平成30年度の食品表示法指導状況をお伝えしました。
今回は、食品表示法違反「指示」や、食の安全に関する警察の処分といった悪質な事件の発生状況について取り上げます。


指導:
「食品表示法に基づく指示及び指導並びに公表の指針」に照らし、食品表示基準違反が常習性がなく過失による一時的なものであり、違反事業者が直ちに表示の是正を行い、事実と異なる表示があった旨を速やかに情報提供している場合に行う行政指導
指示:
「食品表示法に基づく指示及び指導並びに公表の指針」に照らし、指導に該当しない場合に行う行政指導(食品表示法第6条第1項及び第3項)
命令:
食品表示法第6条第1項又は第3項の指示に係る措置を、正当な理由なく履行しない事業者に対する行政処分(食品表示法第6条第5項)、「食品表示法に基づく命令等の指針」に照らし、食品の回収等又は営業停止を命ずる行政処分(食品表示法第6条第8項)

食品表示法第4条第1項の規定に基づいて定められた食品表示基準の違反に係る同法第6条第1項及び第3項の指示及び指導並びに公表の指針
(消費者庁 国税庁 農林水産省 平成27年3月20日)
http://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/tuti/attach/pdf/t0000924-1.pdf

●食品表示法の食品表示基準に関する指示件数、国は12件、都道府県は11件

平成30年度の指示の対象となった品目の内訳では、生鮮食品について国が2件、都道府県は5件。加工食品については国が10件、都道府県は8件となっています。
また、「指示」に従わない場合の改善措置の命令は、国は0件、都道府県は加工食品で2件となっています。

食品表示法の食品表示基準に係る指示及び命令件数(※1)

注: 一つの指示の中で複数の品目区分の食品が対象となったケースがあり、品目区分数の合計は指示件数と一致しない。

●食の安全に関する事犯の検挙事件数は、平成21年以降減少傾向

食の安全に関する事犯について、悪質なものや国民の生命・身体に影響を与えかねないものなどについては、警察により摘発され処罰を受けます。
警察庁の発表(※2)によると、食の安全に係る事犯(食品衛生関係事犯及び食品の産地等偽装表示事犯)の検挙事件数は26件で、前年と同件数となりました。

平成21年以降の食の安全に係る事犯の検挙状況の推移(※2)

具体的な検挙事例(食品の産地等偽装表示事犯)は以下のとおりです。

・食糧品製造販売会社役員らによる食品衛生法違反事件

食糧品製造販売会社役員(62)は、平成 29 年7月、保健所長の許可を受けないで食肉製品製造業を営んだ。
30 年4月に1法人1人を食品衛生法違反(無許可営業)で検挙した(福島)。

・水産物輸入販売等会社役員らによるアサリの原産地偽装に係る不正競争防止法違反等事件

水産物輸入販売会社役員(42)らは、平成 30 年5月頃から6月頃までの間、外国産アサリについて、納品書に「熊本産あさり」と商品の原産地について誤認させるような表示をするとともに、取引先 12 社に対し、その表示をしたアサリを譲渡した。
30 年 11 月までに、3法人9人を不正競争防止法違反(誤認惹起行為)で検挙した(熊本)。

原料産地の不当表示では、食品表示法、不正競争防止法による処分だけでなく、景品表示法での処分の可能性もあります。

・(有)鹿北製油に対する景品表示法に基づく措置命令について
 (鹿児島県 2019年5月15日)
  https://www.pref.kagoshima.jp/ab11/hyouji.html

・大阪府がヤムヤムクリエイツのシュークリームに景表法措置命令。都道府県による処分続く
 (大阪府 平成31年3月13日)

・石垣島の農組に景表法措置命令。スパイスの原料産地表示に優良誤認
 (消費者庁:平成30年5月15日)

(※1)
食品表示法の食品表示基準に係る指示及び命令件数について(平成30年度)
(2019年6月 消費者庁 国税庁 農林水産省)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_190627_0001.pdf

(※2)
平成30年における食の安全に係る事犯の検挙状況について
(2019年3月 警察庁生活安全局 「平成30年における生活経済事犯の検挙状況等について」より)
http://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/seikeikan/H30_seikatukeizaijihann.pdf

≪参考記事≫
・食品の表示違反動向
(食品表示法:H29年度、警察庁:H29年)
食品表示法:H27年度、警察庁:H27年
(JAS法:平成26年度、警察庁:平成26年)
(JAS法:平成25年度、警察庁:平成25年)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。