東京都は2026年3月23日、育毛剤(医薬部外品)「イクモアナノグロウリッチ」を通信販売するプルチャーム株式会社(東京都目黒区)に対し、景品表示法措置命令を行いました。Instagram上の広告から遷移したウェブサイト等において、優良誤認表示5件・ステルスマーケティング(ステマ)告示違反2件、計7件の不当表示が認定されています。
今回の処分の5つのポイント
- Instagram上の広告から遷移したウェブサイト等を対象に、優良誤認(5件)とステマ告示(2件)の計7件が認定
- 合理的根拠のない発毛効果、ノーベル賞受賞級表現、架空の使用前後の比較画像、SNS投稿、完売表示に対する優良誤認認定(発毛効果表示は、不実証広告規制(※)による)
- 発毛効果の承認を受けた医薬部外品においても、根拠の認められた効能効果の範囲を逸脱した広告表現は認められない
- 広告代理店・広告制作会社に内容の決定を委ねた場合でも、景表法上の表示責任は広告主に帰属。「事業者の表示」であることの記載(例:「広告」「PR」等)がなければ、ステマ認定
- 自社の従業員(毛髪診断士)の意見を第三者の見解のように表示した場合もステマ告示違反に該当
以下、処分の概要と東京都によるネット広告監視の動向を整理します。
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景品表示法に基づく措置命令
Instagram上の広告から遷移したウェブサイト等で育毛剤に係る不当表示を行っていた通信販売事業者 (東京都 2026年3月23日)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/03/2026032307
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
違反事業者
プルチャーム株式会社
違反概要
【対象商品】
「イクモアナノグロウリッチ」と称する育毛剤(医薬部外品)
【表示媒体・期間】
ウェブサイト①(「\国が育毛効果を認可/」という文言から始まるウェブサイト)
少なくとも、2025年1月(16日~19日、22日、24日、25日、26日、30日)、
2月(1日~5日、13日、15日、16日、18日)、
4月(15日、17日)、5月(14日、26日)、6月(2日、16日、23日、30日)、
7月(4日、11日、22日、28日)、8月18日、9月19日
ウェブサイト②(「アンケート回答で85%OFF」という文言から始まるウェブサイト)
少なくとも、2025年1月(28日、29日)
自社販売ウェブサイト
2025年1月10日~2月19日、4月(15日、17日)、5月(14日、26日)、6月(2日、16日、23日、30日)、
7月(4日、11日、22日、28日)、8月18日、9月19日
【違反内容】(7件)
(1) 優良誤認表示(効果性能)
ウェブサイト①②において、あたかも、本件商品を使用することで商品に含まれる成分の作用により、「誰でも容易に、外見上視認できるまでに薄毛の状態が改善されるほどの発毛効果を得られる」かのような表示を行っていた。
【表示例(ウェブサイト①)】
・「1日3分習慣で生え揃いました」のキャプション付きで頭部の使用前後画像を2枚並べて掲載。(「※スタイリング効果」と付記)
・「\9割以上が効果実感/ 髪がフサフサになる人続出!」の記載と体験談。
「鏡見る度に実感して感動しています」、頭部の使用前後画像を2枚並べて掲載し、「テレビやSNSで大絶賛されている塗る女性ホルモン※育毛ですが、さすがにウソだろうと思い、半信半疑で使ってみたのですが…口コミ通り サッと塗るだけなのに髪がフサフサに増えたんです!だから毎朝鏡を 見ることが楽しくて仕方がありません笑」と記載。
(「※個人の感想」「※スタイリング効果」「※女性ホルモンと同様の働きを持つ女性ホルモン様成分」と付記)
【表示例(ウェブサイト②)】
・「塗る 女性ホルモン」、「NHK放送後爆売れ!」「国が認めた最新育毛法」「母(74)も激変「一生これ使う」」というキャプション付きで頭部の使用前後画像を掲載。(「※女性ホルモンと同様の効果を持つ女性ホルモン様成分」と付記)
・「なんでも 男性用AGA治療にも使われる成分 も入ってて、」、「男性用成分なので ボリュームアップ」というキャプション付きで頭部の画像を3枚並べて掲載すると共に、「塗るだけで髪が増えるから 薄毛女性の間で話題になっているんです!」と記載。
重要:
「※個人の感想」「※スタイリング効果」「※女性ホルモンと同様の働きを持つ女性ホルモン様成分」等の打ち消し表示は、一般消費者が表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものとは認められませんでした。

実際:
東京都から合理的な根拠を示す資料の提出を求められたが、提出された資料は表示の裏付けとなる合理的な根拠とは認められなかった(不実証広告規制の適用)。
東京都による消費者への注意喚起:
「商品等を使用や摂取等するだけで、発毛効果や痩身効果等といった特定の効果が容易に得られるかのような広告表示がありますが、合理的な根拠なく記載されていることがあります。表示内容をうのみにせず、よく確認した上で、商品やサービスを選択しましょう。」
(東京都公表資料より)
(2) 優良誤認表示(ノーベル賞受賞級)
ウェブサイト①において、あたかも、本件商品が、現在においてノーベル賞を受賞する程の画期的な効果を有しているかのような表示を行っていた。
【表示例(ウェブサイト➀)】
・「国が認めたNHK特集成分×ノーベル賞級育毛法(メダルと思われるイラスト) 医薬部外品」とのキャプション付きで国会議事堂と思われる建造物の画像を掲載し、「国が育毛効果を認めているので、髪が生えるんです!」と記載。
・「ノーベル賞受賞級の育毛処方が話題」「東大研究で解明!女性ホルモン※が育毛の鍵」等のキャプションをニュースサイトの掲載画面を連想させる画像と共に掲載し、「※スタイリング効果」「※女性ホルモンと同様の働きを持つ女性ホルモン様成分」、「研究結果は、確かな育毛効果があると立証され、次期論文掲載の候補になるほど!」と記載。

実際:
20世紀にビタミンの研究者がビタミン研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した事実をもとに、ビタミンを含む本件商品にも「ノーベル賞を受賞するほどの画期的な効果がある」と同社が称しているにすぎず、現在においてそのような事実はなかった。
(3) 優良誤認表示(比較画像)
ウェブサイト②において、使用前後の頭髪の状況を示す画像を掲載することにより、あたかも、本件商品を使用した人物達が、容易に、外見上視認できるまでに薄毛の状態が改善されるほどの発毛効果を得られたかのような表示を行っていた。
【表示例(ウェブサイト②)】
・「ザ!世界仰天ニュース」「驚愕チェンジ」のキャプション付きで頭部の使用前後画像を2枚並べて掲載。
・「●●さん ☑ 女性38歳 フォロー+ 2023/7/22 20:39:08」
「iqumore/イクモアナノグロウリッチ 購入品6★★★★★★
今まで毎月クリニックに3万円かけて薄毛治療していたんですが、イクモアに出会って速攻解約!! 毎朝『今日も増えてる!』って 鏡を見るのが趣味になっちゃいました笑」、頭部の使用前後画像を2枚並べて掲載。

実際:
同社から委託を受けた広告制作・運用会社が、取得したモデル画像に対して「頭髪が薄い人の画像を合成する等の加工」を行って作成したものであり、実際に本件商品を使用した効果を示すものではなかった。
(4) 優良誤認表示(SNS投稿)
ウェブサイト②において、あたかも、「SNSアカウントを持つ実在の人物が本件商品を使用した体験談及び自身の使用前後の画像をSNS上に投稿した」かのような表示を行っていた。
【表示例(ウェブサイト②)】
「子供が生まれてからずっと薄毛に悩んでたんだけど、 イクモア使ったら髪増えてきた!(絵文字×2) 何しても髪生えなかったのにコレだけは違うみたい!」とのテキストに使用前後の頭部画像を2枚並べて掲載し、当該画像の下部にコメント数や閲覧数等を掲載。

実際:
同社から委託を受けた広告制作・運用会社が作成したものであり、実在する人物による投稿ではなかった。
(5) 優良誤認表示(完売表示)
自社販売ウェブサイトにおいて、あたかも、「本件商品が大好評の結果、2024年10月〜12月は在庫が無くなり、2025年1月16日時点も在庫が僅少のため早期に注文しなければ在庫が無くなる可能性がある」かのような表示を行っていた。
【表示例(ウェブサイト②)】
・「先月発送分 大好評頂き完売致しました SOLD OUT」「先々月発送分 大好評頂き完売致しました SOLD OUT」等と記載し、「今なら すぐにお届けできます!」「在庫数には限りがございます。完売の可能性があるためお早めのご注文をお願い致します。」と記載。

実際:
当該期間・時点において在庫は相当数存在しており、在庫が無くなった事実も、早期に無くなる可能性が高い事実もなかった。
(6) ステルスマーケティング告示(ウェブサイト全体)
ウェブサイト②の表示は、広告代理店及び広告制作・運用会社にその決定を委ねていたことから、同社の表示と認められるにもかかわらず、同社の表示であること(例:「広告」「PR」等)を全く記載していなかった。
(7) ステルスマーケティング告示(毛髪診断士)
自社販売ウェブサイトにおいて、毛髪診断士の意見を第三者の専門的見解のように表示していたが、当該人物は毛髪診断士資格を持つ同社の従業員であったにもかかわらず、その旨を明らかにしていなかった。
【表示例(自社販売ウェブサイト)】
・「知識豊富な毛髪のスペシャリスト」「毛髪診断士®が解説」「最近は、薄毛に悩む女性が増えています。」「毛髪診断士®は公益社団法人日本毛髪科学協会の登録商法です。」「※写真はイメージです。」等と記載し、白衣を着た人物の画像を掲載。

重要:
ウェブサイト①②については、広告代理店や広告制作・運用会社に広告内容の決定を委ねていましたが、そのような場合であっても、原則として景品表示法上の責任は広告主にあります。
(東京都公表資料より)
SNS経由の不当なネット広告への監視を強める東京都
本件はInstagram上の広告から遷移したウェブサイトが処分対象となっています。東京都はこれまでもSNS上のバナー広告から遷移したアフィリエイトサイトや、広告代理店等に制作させたウェブページを対象とした措置命令を積極的に行っています。
《関連する主な処分事例》
・東京都によるステマ告示措置命令。ダイエットプレミアムのダイエット食品アフィリ広告、優良誤認も (東京都 2025年3月28日)
・アフィリエイト広告への処分続く。ヴィワンアークスの育毛剤の発毛・白髪改善効果表示に景表法措置命令(東京都 2024年10月10日)
・東京都も痩身系機能性表示食品ヘルスアップとニコリオに景表法措置命令。SNS経由のアフィリ広告に注意 (東京都 2024年3月27日)
・アフィリエイト、広告代理店に決定を委ねた場合の表示責任。ツインガーデンの痩身サプリとエムアンドエムのシワ改善医薬部外品に景表法措置命令(東京都 2023年3月28日)
東京デジタルCATSによる監視強化
東京都は2023年7月より「東京デジタルCATS」として、弁護士・Web広告専門家等の外部専門家から助言を得る体制を構築し、SNS広告の調査・法執行につなげています。
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不当なインターネット広告への対応力を強化します!
– 「東京デジタルCATS」始動! -(東京都 2023年8月25日)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/torihiki/hyoji/cats
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さらに2011年度から継続するインターネット通販サイトの広告監視においても、2024年度よりSNS広告が監視対象に加わり、監視範囲が拡大しています。
2024年度の監視結果では、SNS広告の違反率が66.7%に上り、「有利誤認」「ステルスマーケティング」に関する指導が急増していることが明らかになっています。
《関連記事》
・東京都のネット広告監視がSNSへ拡大!SNS広告違反率66.7%、「有利誤認」「ステマ」指導が急増(2024年度東京都デジタル広告監視結果)
広告代理店やアフィリエイターに広告作成等を依頼する際、たとえ広告主が広告の内容を把握していない場合であっても、「表示内容の決定を委ねている」として、基本的に広告主である販売者が景品表示法上の責任を負い、措置命令等の対象となります。
事業者は、自社サイトに留まらず、SNS広告、アフィリエイトサイト、その他第三者に作成させた広告の適正管理の徹底が求められます。
《関連記事》
・広告主に課されるアフィリエイト広告の適正管理。ステマ規制も示される(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)
続きは会員限定記事で:違反認定のポイントと執行トレンドを深堀解説
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