育毛剤(株)RAVIPAに景表法措置命令。「いつでも解約」「顧客満足度」「使用体験者の年齢」「お手入れなし・あり写真」に不当表示認定(埼玉県:2019年8月20日)

8月20日、埼玉県は豊島区の女性向け育毛剤等の通信販売事業者(株)RAVIPA(ラヴィパ)に対し、同社が供給する「薬用Hairmoreスカルプエッセンス」と称する女性向け育毛剤の表示について、景品表示法違反(有利・優良誤認) の措置命令を行いました。

「いつでも解約」、「顧客満足度」、「使用体験者の年齢」、「お手入れなし・あり写真」に対して、有利・優良誤認の判断となっています。

「特定商取引に関する法律施行規則」の一部改正により、定期購入契約での支払総額や販売期間などの販売条件の明記が義務付けられる中(※)、「いつでも解約できる」と顧客に安心感を与えつつ、定期購入に誘導する手法が増えています。
また、それ以外の誤認表示の手法も、広告に多用されており、注意が必要です。

(※)
通販の定期購入契約で気を付けたい特商法の留意事項とは。購入手続き画面表示の具体例(特定商取引に関する法律施行規則改正(平成29年12月1日施行))

処分のポイントについて確認します。

———-
女性向け育毛剤の通信販売事業者に対する措置命令について
(埼玉県 2019年8月20日)
http://www.pref.saitama.lg.jp/a0001/news/page/2019/0821-03.html
———

●違反概要
【対象商品】
「薬用Hairmoreスカルプエッセンス」と称する食品

【表示媒体・期間】
同社が運営する公式ウェブサイト
2018年10月1日~2019年7月23日

【違反内容】
●有利誤認 「いつでも解約」
表示内容:
自社ウェブサイトにおいて、例えば、
「いつでも好きな時に1ステップで解約できます」等と表示するなど、あたかも、対象商品の売買契約を容易に解約できるかのように表示していた。

実際:
解約の手段は電話に限られ、平日午前10時から午後5時までに申出せねばならず、その電話もつながりにくく、本件商品の売買契約を容易に解約できないものであった。

表示例:

●優良誤認
ア)「顧客満足度」
表示内容:
自社ウェブサイトにおいて、例えば、
「顧客満足度98.6%」等と表示するなど、あたかも、対象商品に対する顧客の満足度が非常に高いものであるかのように表示していた。
※「自社調べ(2018年4~8月 n=194)」と注釈記載の表示と記載なしの表示、いずれも違反表示。

実際:
顧客満足度等の算定には無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されている調査を行わなければならないが、同社の行った調査はそのようなものではなかった。また、同調査は、顧客に対するものではなく、商品モニターに対して行ったものであった。

表示例:

イ)「使用体験者の年齢」
表示内容:
自社ウェブサイトにおいて、例えば、
2019年7月10日から同年7月23日までの間、「50代弓削さん」と氏名等が表示された女性の顔写真を表示。あたかも対象商品により頭皮のお手入れをするだけで、商品に含まれる成分の作用により、実年齢よりも年齢が若く見えるかのように表示していた。

実際:
記載されている「50代弓削さん」の年齢は、1973年生まれで40代であるにもかかわらず、50代と表示しており、事実と相違する。

表示例:

ウ)「お手入れなし・あり写真」
表示内容:
自社ウェブサイトにおいて、例えば、
「髪は加齢と共に細く・薄くなり、放っておくと取り返しのつかない事態に。」「49歳同じ年齢でもこの差…お手入れなしお手入れあり」等と表示するなど、あたかも対象商品により頭皮のお手入れをするだけで、商品に含まれる成分の作用により、髪の量が増えるかのように表示していた。
※「ブローによるお手入れ」と注釈記載の表示と記載なしの表示、いずれも違反表示。

実際:
「お手入れなし」の状態として写真表示された女性が、「お手入れあり」の写真の状態となるためには、対象商品の使用以外にも、ブローによるお手入れが必要であり、商品の使用のみでは表示しているような髪の量の変化は得られないものであった。

表示例:

「いつでも解約」の有利誤認について、RAVIPAは電話で平日午前10時から午後5時まで受け付けており、また、8月1日付でコールセンターの人員を大幅に増員したとホームページで公表(※1)していました。
(※1)

【8月1日付けお知らせ】お問い合わせのお電話の受電状況について
(株式会社RAVIPA ホームページ)
https://ravipa.co.jp/

しかし、報道(※2)によると、国民生活センターや埼玉県に寄せられたRAVIPAに関する相談(※3)の8割が、「解約できない」「定期購入と思わなかった」など契約をめぐる相談だったと報じており、今回の処分となっています。

(※2)
埼玉県 「いつでも解約」に措置命令、有利誤認で育毛剤通販のRAVIPAへ
(通販新聞 2019年 8月29日)
https://www.tsuhanshimbun.com/products/article_detail.php?product_id=4820

(※3)
国民生活センターPIO―NET:1321件(8月26日時点)
埼玉県:1年間で69件(8月19日時点)

他方、優良誤認については、最近の健康食品等の広告での不実証広告規制による措置命令において、使用前後の比較写真や体験談に対する打消し表示が、消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識に対して無効であるとの指摘はなされてきました。

しかし今回の処分においては、「顧客満足度」、「使用体験者の年齢」、「お手入れなし・あり写真」の表示そのものに対して虚偽・誇大であると認定しています。

本件は医薬部外品の育毛剤として、認められた範囲での効能効果の標ぼうは認められるものですが、景品表示法の観点から各種広告手法において、表示内容に対する合理的な根拠が求められることに留意すべき事案であると言えるでしょう。

・景品表示法(優良誤認)の不実証広告規制。表示の裏付けとなる「合理的な根拠」の判断基準とは

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《関連記事》
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。