【事例解説】2025年度、通販定期購入の特商法違反認定ポイント比較分析(MIO/Meilie/WELLVY/ピュレアス/ASUNOBI/BIZM)

2025年度末、消費者を誤認させる手法が類似する通信販売業者3社に対する特定商取引法(特商法)処分が同時公表されました。
処分の適用条項は「誇大広告(第12条)」と「最終確認画面の表示違反(第12条の6第2項)」。広告画面での化粧品の効能(しみ・しわ・たるみ等)表示と、初回限りに見せかけて定期購入契約へ誘導する販売条件の表示、そして申込最終確認画面の表示が違反認定されています。

今回の3社(MIO・Meilie・WELLVY)の広告の構成が極めて酷似しているだけでなく、2025年9月と11月に立て続けに行政処分が下された「ASUNOBI」および「BIZM」の、いわゆる“双子の事案”とも、同様の広告手法での違反認定となっています。

《参考記事》
【特商法処分】美容クリームの通販定期購入でASUNOBI・BIZMに立て続けの業務停止命令(6カ月)。「双子の事案」が示す業界への警告

一見似通った広告手法であっても、行政が下す認定内容の差異を精査することで、最新の法執行における「境界線」が浮かび上がります。

本記事では、行政の通販定期購入に対する特商法違反認定の観点から、今回の3社事案と過去事案(ASUNOBI/BIZM/ピュレアス)の表示内容を検証し、違反認定のポイントと処分への影響を考察します。

 ASUNOBIBIZMピュレアスMIOMeilieWELLVY
処分年月日2025年 9月9日2025年
11月5日
2026年
3月16日
2026年
3月23日
2026年
3月26日
2026年
3月26日
対象商品美容 クリーム等美容 クリーム等サプリ メント美容 クリーム等美容 クリーム等美容 クリーム等
優良誤認
(第12条)
有利誤認
(第12条)
事実相違
(第12条)
③最終確認画面誤認
(第12条の6 第2項)
業務停止期間6か月6か月3か月6か月6か月6か月
消費者相談
件数(期間)
非公表4,536件
(24年11月14日~25年9月末)
7,453件

(21年4月1日~26年2月末)
6,829件
(25年3月11日~26年2月末)
5,616件
(25年6月11日~26年2月末)
6,396件
(24年12月16日~26年2月末)
●:認定あり -:認定なし ※事実相違のMeilie・WELLVYのハイライトは本記事の分析の焦点

まずは、各社に共通する違反認定パターンを整理します。

(1)誇大広告「優良誤認」(法第12条)の違反認定パターン:過剰な即効性訴求表示

ピュレアス(サプリメント)を除く5社はいずれも美容クリームが対象商品となっており、しみ、しわ、たるみ等の効能効果の過剰な即効性訴求表示に対して、不実証広告規制(特定商取引法第12条の2)に基づく優良誤認の認定となっています。
化粧品の効能効果表示については、たとえ効果承認を受けた医薬部外品であっても、根拠なく効能効果の範囲を逸脱した広告表現は、薬機法・景品表示法のみならず特商法による厳格な規制を受けます。
【公表文(ASUNOBI/BIZM)】
あたかも、本件商品を3日間又は7日間塗布するのみで皮膚に生じたしみを完全に消すことができるかのような表示をしていた。

違反の指摘を受けた表示には共通して使用前後の画像が用いられており、静止画だけでなく動画も対象となっています。

(2)最終確認画面における誤認表示(法第12条の6第2項)の違反認定パターン

処分6案件すべてが、同様の表示形式により「最終確認画面の表示違反(12条の6)」に該当すると判断されています。

誤認表示内容:
① 定期購入契約で2回目を受け取らず解約する際の違約金の表示:ピュレアス
② 安価な商品の単品購入と見せかけて定期購入契約となる販売条件の表示:
ASUNOBI/BIZM/MIO/Meilie/WELLVY

広告ページで「2回目以降の購入義務なし・解約違約金なし」と消費者に誤認させる誇大広告(有利誤認・事実相違)を行い、そこから遷移する最終確認画面の以下のような表示形式が違反認定されています。

「特別価格1,980円 最安値で申し込む」等と表示された申込ボタンの直上に、
初回の安価な販売価格等のみを分離して強調し、
定期購入契約であることや解約条件に関する事項が消費者に認識しづらい表示形式。

各社の最終確認画面における具体的な表示を確認します。

ピュレアス:
解約に伴う追加費用等の情報を「定期コースについて」の「+」ボタンをクリックしなければ展開されない領域に配置。かつ、当該情報を確認するには表示画面をスクロールしなければならない状態にあった。

ASUNOBI/BIZM/MIO/Meilie/WELLVY:
最初に引き渡す商品のみの販売価格等の直下にある「利用規約」をスクロールした下部に解約条件の記載はあったものの、最終確認画面では消費者から見えない状態にあった。

最終確認画面上に契約内容に関する記載はあったとしても、消費者に明確に認識できる記載でなければ第12条の6違反となります。

【表示例:最終確認画面 ピュレアス/ASUNOBI】

(消費者庁公表資料より引用)

(3)「誘引から契約まで」を一体とした誤認表示として捉えるセット適用

通販定期購入における消費者を誤認させる表示に対しては、広告ページの誇大広告(12条)と最終確認画面の表示違反(12条の6)をセットで適用した法執行が続いています。
こうした傾向から、行政が契約内容を誤認させる広告ページから最終確認画面までを、消費者の「意思形成を歪める一連のスキーム」として一体的に取り締まろうとしていることが読み取れます。

広告ページ(誇大広告 第12条):
2回目以降の購入義務や解約違約金がないかのような事実と異なる販売条件(有利誤認・事実相違)を提示し、消費者の冷静な判断力を奪って「誘引」する。

最終確認画面(第12条の6第2項):
誘引された状態の消費者が、そのまま「定期購入ではない」「いつでも容易に解約できる」「初回費用のみで追加費用はかからない」等と誤認したまま申し込みに至るよう仕向ける。

次に、販売条件の誇大広告について判断の分かれる違反認定パターンを分析します。

(4)誇大広告「有利誤認」(法第12条)の違反認定パターン:有利誤認と事実相違の認定の分かれ目

【認定した違反条文・内容比較】

ピュレアスMeilie ・WELLVYASUNOBI・BIZM・MIO
認定条文誇大広告
(有利誤認: 特商法第12条)
誇大広告
(有利誤認: 特商法第12条)
誇大広告
(有利誤認・事実相違:特商法第12条)
内容格安の初回費用を支払うだけで、追加費用なしに契約解除できると消費者を誤認させる表示初回単発購入で、2回目以降の購入義務付けや、解約には違約金の支払いが義務付けられるなどの契約上の制約なしと誤認させる表示
設立・「便利でオトクな定期コース(次回以降、自動でお届け)通常価格 9,980円(税込)→初回価格 800円(税込)」

・「定期縛りなし!! 1回で解約OK!」
・「定期回数縛りなし 電話1本で解約変更OK」
・「1回限り! 定期回数のお約束なし」
・「詐欺広告にありがちな『最低○回は購入しないといけません』という購入回数のお約束はありません!」
・「1回限り解約不要 追加料金一切なし 本日限定 80%OFFでプレゼント」
・「1人1個まで解約不要 購入回数のお約束なし!」
・「詐欺広告にありがちな『最低○回は購入してください』という『購入回数のお約束なし』」

ピュレアスの認定
ピュレアスは広告上で「便利でオトクな定期コース(次回以降、自動でお届け)」「1回で解約OK」等と表示しており、定期購入であること自体は記載されていたため、不利益な解約条件の誤認表示のみが有利誤認として認定されています。

【公表文(ピュレアス)】
あたかも、本件商品の販売条件が、500円のみを支払うことによって商品1本を購入することができ、商品を1回のみ受け取った後、追加の金銭的負担なく契約を解除することができるかのような表示。

ASUNOBI・BIZM・MIO・Meilie・WELLVYの認定と差異
ピュレアス以外の5社については、公表文の誇大広告認定内容が全く同一であるにもかかわらず、違反認定の類型に差が生じています。

ASUNOBI・BIZM・MIO:「有利誤認」+「事実相違」の両方を認定
Meilie・WELLVY:「有利誤認」のみ認定(「事実相違」は認定されず)

【公表文(5社共通の認定内容)】
あたかも、本件商品の販売条件が、1,980円(税込2,178円)のみを支払うことによって商品1本を購入することができ、2本目以降の購入を義務付けられるなどの契約上の制約がないかのような表示。

事実相違認定の分かれ目
5社はいずれも「1回限り! 定期回数のお約束なし」等の表示があり、初回単発購入で2回目以降の購入義務や解約違約金などの契約上の制約がないと誤認させる「有利誤認」が認められます。
「事実相違」認定の分かれ目は、表示の断定性にあると推察されます。

【事実相違が認定された表示例(ASUNOBI・BIZM・MIO)】
・「1回限り 解約不要 追加料金一切なし」
・「1人1個まで 解約不要」
→「解約不要」という明確に事実と異なる断定的表現が「事実相違」の認定につながったと考えられる。

【事実相違が認定されなかった表示例(Meilie・WELLVY)】
・「定期回数縛りなし 電話1本で解約変更OK」(Meilie)
・「1回限り! 定期回数のお約束なし」(WELLVY)
→解約の存在自体は否定しておらず、断定性が相対的に低いため「事実相違」の認定には至らなかったと推察される。
表示の断定性の違いが認定類型の差を生んでいますが、「解約不要」という明断定表現を避け「定期回数縛りなし」に留めたとしても、有利誤認の認定は免れません。認定類型の差は処分の重さに直結しないことは、次節で確認するとおりです。

【まとめ】消費者被害の規模と処分への影響

今回のMIO、Meilie・WELLVY、3社に対するPIO-NETの消費者相談件数は、同様の手口を用いたBIZMの件数4,536件を短期間で1000件以上、上回るものとなりました。
違反認定内容に多少の差異(有利誤認のみか、事実相違を含むか)があったとしても、処分の重さに影響するものではなく、3社いずれも6か月間の業務停止命令が下されています。
消費者被害の規模が処分の重さを左右することが、改めて確認できます。

沈静化する兆しの見えない通販定期購入による消費者被害を背景に、特商法第12条と第12条の6をセットで適用する法執行は、新たな手法に対しても今後も厳格に続くと予想されます。
通販事業者は、自社の広告および購入フローが消費者の誤認を招くことのないよう、慎重な対応が求められます。

【今後の動向】デジタル取引・特商法等の法改正

消費者庁では現在、取引のデジタル化による取引環境の変化を踏まえ、消費者契約法およびデジタル取引・特定商取引法の両制度について検討会を設置し、議論が進んでいます。
ダークパターンへの対応やSNS・チャットを通じた勧誘への規制のあり方など、デジタル取引における広告・勧誘、契約、解約の各場面に必要な措置が検討・整備される見通しです。

・デジタル取引・特定商取引法:2026年夏頃に中間取りまとめを目指す
・消費者契約法:2026年度中に中間取りまとめを目指す

今後の通販事業に大きな影響が予想されますので、動向を注視する必要があります。

デジタル取引・特定商取引法等検討会
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/meeting_materials/review_meeting_005

現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/review_meeting_006/

以下の記事では、これまでの法執行事例を横断的に検証し、執行トレンドから導き出す、特商法対策を詳しく解説しています。

≪関連記事≫
・通販定期購入事業者必見 特商法最新執行トレンド分析と実務上の重要留意点

・改正特商法施行から3年、2025年も続く「通販定期購入」への厳しい法執行 ―行政が問題視する「違反パターン」とは

・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)

・加速する通販分野の特商法執行。最新規制動向をまとめてチェック

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。