キッセイ薬品の特別用途食品に景表法措置命令 消費者庁の法執行動向(消費者庁:平成29年10月19日)

10月19日、消費者庁は医療用医薬品、治療用特殊食品の開発・販売業者キッセイ薬品工業(株)に対し、「げんたそうめん」「「げんたうどん」と称する特別用途食品に関する表示について、景品表示法違反(優良誤認) の措置命令を行いました。

同商品は、消費者庁が昨年10月に事業者に依頼した保健機能食品の品質管理調査の結果、特別用途食品としての表示許可基準を満たさない場合があることが判明していました。
同社は昨年11月に販売中止しています。

調査の発端となった、トクホ制度初の表示許可取消しとなった日本サプリメント(株)については、昨年9月「許可取り消し」、今年2月「措置命令」、6月「課徴金命令」が段階的に行われています。

消費者庁では、特定保健用食品について平成28年度、29年度の買上調査の結果を含め、景品表示法違反事案に接した場合には厳正に対処するとしています。
保健機能食品の品質管理が問題となった事案について、消費者庁の法執行判断について整理してみます。

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キッセイ薬品工業株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
 (消費者庁 平成29年10月19日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171019_0001.pdf
———

【対象商品】
「げんたそうめん」と称する食品及び「げんたうどん」と称する食品

【対象表示・期間】
容器包装
「げんたそうめん」:平成12年2月頃から平成28年11月1日までの間
「げんたうどん」:平成12年2月頃から平成28年11月2日までの間

【違反内容】
表示内容:
次のとおり記載することにより、あたかも、対象商品が特別用途食品として消費者庁長官の許可の要件を満たしたものであるかのように示す表示をしていた。
「げんたそうめん」(表示1):
・栄養成分表示のたんぱく質量として、100グラム当たり「2.8g」と記載
・健康増進法に規定する許可証票を記載
・「消費者庁許可特別用途食品 病者用 低たんぱく質食品 腎不全患者用」
・「げんたそうめんは、たんぱく質や電解質の制限を必要とする腎不全患者などに適しています」
「げんたうどん」(表示2):
・栄養成分表示のたんぱく質量として、100グラム当たり「1.9g」と記載
・健康増進法に規定する許可証票を記載
・「消費者庁許可特別用途食品 病者用 低たんぱく質食品 腎不全患者用」
・「げんたうどんは、たんぱく質や電解質の制限を必要とする腎不全患者などに適しています」

実際:
各商品は、以下の各期間において、包装後の製品における栄養成分であるたんぱく質量の規格値の基準を満たすための品質検査の管理が行われておらず、特別用途食品として消費者庁長官の許可の要件を満たしていないものであった。
「げんたそうめん」:
平成26年7月頃から平成28年11月1日までの間に製造した37ロット中25ロットの商品において、100グラム当たり2.2グラムないし2.8グラムとする製品規格値を0.1グラムないし0.4グラム上回っていた。
「げんたうどん」:
平成27年7月頃から平成28年11月2日までの間に製造した30ロット中12ロットの商品において、100グラム当たり1.5グラムないし2.3グラムとする製品規格値を0.1グラムないし0.2グラム上回っていた。

表示(1):げんたそうめん

表示(2):げんたうどん

キッセイ薬品工業(株)は、措置命令の公表に先立って、平成29年10月11日、本件2商品について、特別用途食品として消費者庁長官の許可の要件を満たしていないものを販売していた事実を日刊新聞紙2紙に掲載しています。

お知らせとお詫び
キッセイ薬品工業(株)HP (2017年10月11日)
https://healthcareinfo.kissei.co.jp/news/2017/1011.html

保健機能食品について、許可の要件を充足しているかどうかを確認することは、健康増進法上、許可事業者の責務です。日本サプリメントのケースでは、特定保健用食品として許可申請した関与成分が含有されておらず、許可要件を満たしていなかったことを2年にわたって報告しなかったことが悪質として、許可取り消しとされました。一方、キッセイ薬品については、調査に対する会社の報告状況や結果公表と同日に当該会社のホームページでアナウンスされていることから見て、悪質な信頼関係違反とはみなされず、許可取り消しは行われませんでした。

同時に、消費者庁では景表法違反行為に対しても厳正な対処を行うとしています。
許可要件の確認を怠ることは「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置」(景品表示法第26条第1項)の規定に違反するものであり、許可要件を満たさない商品の販売は、優良誤認表示に該当します。

このことから、日本サプリメントだけでなくキッセイ薬品のケースにおいても「措置命令」が発出されたと考えられます。

平成28年度のトクホの買上調査では、今年5月に粉末緑茶2製品で関与成分量不足が報告されています。当該製品についても許可の取り消し処分は行われていませんが、今後の措置命令の動きが気になります。

《参考記事》
・日本サプリメント トクホ初の許可取り消しと、規制強化の動向
・トクホ、特別用途食品品質調査結果公表 許可取り消しの判断根拠(平成28年11月 消費者庁)
消費者委員会の意見案まとまる トクホ制度・運用見直し、広告監視の健増法改正も視野に(第241回 消費者委員会本会議 2017年1月17日)
・トクホ取消の日本サプリメントに景表法措置命令 強まる景表法の取組(消費者庁:平成29年2月14日)
・返金計画示されず トクホ取消の日本サプリメントに景表法課徴金納付命令
・平成28年度トクホ買上調査結果公表 7製品中2製品が含有量不足で自主回収 (消費者庁 2017年5月17日)


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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。