2023年度では1件目となる空間除菌製品の景表法措置命令。共立電器産業、フォレストウェル(消費者庁 2023年12月22日)

2023年度では初めてとなる空間除菌関連商品に対する景品表示法措置命令が出されました。
12月22日、消費者庁は、空気清浄機の製造、販売事業者共立電器産業(株)(東京都大田区)と(株)フォレストウェル(神奈川県横浜市)の2社が提供する空気清浄効果等の表示に対して、不実証広告規制(※)による優良誤認の措置命令を公表しました。
措置命令の発令日について消費者庁は、フォレストウェルが12月21日、共立電器産業が同22日としています。
2022年には差し止め訴訟にまで発展し最終的に敗訴となった、大幸薬品(株)の空間除菌関連商品「クレベリン」の処分事案がありましたが、しばらく処分は出されていませんでした。
・クレベリン「置き型」にも景表法措置命令。空間除菌効果表示の合理的根拠、消費者庁に軍配(消費者庁 2022年4月15日)

なお、今回の措置命令の対象は本件商品を製造販売している2社となっていますが、本件商品の販売代理店等は対象となっていません。そのため、販売代理店等のウェブサイト等においては、不当表示となった広告内容が現時点(2024年1月13日)でも削除されていない状況です。
処分の概要と、空間除菌関連商品の菌・ウイルス除去効果の合理的根拠について確認します。

———-
空気清浄効果等を標ぼうする商品の製造販売業者2社に対する
景品表示法に基づく措置命令について(消費者庁 2023年12月22日
https://www.caa.go.jp/notice/entry/035721/
———

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


【対象商品・表示期間】
共立電器産業:
「空気活性清浄機サリール」
フォレストウェル:
「j.air(ジェイエアー)」

【表示媒体】
共立電器産業:
自社ウェブサイト:2023年2月8日~4月10日、2023年4月11日~11月23日
フォレストウェル:
自社ウェブサイト:2023年2月8日~4月19日、2023年4月20日~7月4日
自社ウェブサイトに掲載された「世界を活きた空気にする」と題する動画:
2023年2月8日~4月19日、2023年4月20日~7月4日

【違反内容】
表示内容(自社ウェブサイト):
共立電器産業
例えば、「森林浴効果 サリールから出る活性化エアーに含まれる高濃度マイナスイオンは、交感神経に対して鎮静的に作用し、安眠・鎮静・血圧降下等の効果があるといわれています。また、血液を弱アルカリ性にし、毛細血管を拡張して新陳代謝を促進することも知られています。」
「除菌・脱臭効果 微量オゾンと大量のマイナスイオンの組み合わせは除菌効果が非常に高く、浮遊菌や各種雑菌を短時間で除菌することができます。 また、各種臭い成分はオゾンによる化学分解で強力な脱臭効果を発揮します。」等と表示。

あたかも、対象商品を室内に設置すれば、商品から発生するマイナスイオン及びオゾンの作用により、安眠、鎮静、血圧降下の効果、毛細血管を拡張して新陳代謝を促進する効果、浮遊菌や各種雑菌を短時間で除菌する効果、各種臭い成分を強力脱臭する効果、浮遊する花粉やダニの死骸、ウィルスその他の有害微粉を除去し、風邪や喘息を予防する効果、浮遊する塵やタバコの煙、アレルギー物質を集塵、消煙する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例: 自社ウェブサイト

(消費者庁発表資料より抜粋)

フォレストウェル
表示内容(自社ウェブサイト):
例えば、「まるで森の中にいるような、思わず深呼吸したくなる空気。j.airはそんな新鮮な空気をめざしました。j.airにはフィルターやファンがありません。独自のイオン電極により大量の高濃度マイナスイオンと微量のオゾンを発生させ、空気中の塵や菌、ニオイ物質を積極的に捕らえる活動的な空気を生成。空気の汚れを吸い込んでキレイにする空気清浄機とは一線を画し、除菌・除塵・脱臭性能を高次元で発揮する「空間清浄器」として、j.airが世の中の空気を変えていきます。」等と表示。

あたかも、対象商品を室内に設置すれば、商品から発生するマイナスイオン及びオゾンの作用により、25畳までの室内空間において、浮遊するや菌やアレルギー物質を強力に集塵・除塵する効果、ウィルスを抑制し、菌を除去する効果及び悪臭の素を分解し、招集する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例: 自社ウェブサイト

(消費者庁発表資料より抜粋)
(消費者庁発表資料より抜粋)

実際:
消費者庁は、2社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。


「空間除菌製品」の効果表示に求められる実使用空間における実証と対照試験

「空間除菌製品」に関しては、過去に複数の景品表示法の措置命令が出されています。
二酸化塩素を噴霧したり、オゾンやマイナスイオンを発生させる、首下げ型や置き型などの商品で、いずれの事案においても不実証広告規制を用いた処分となっており、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められずに優良誤認と認定されています。
具体的には、空間除菌効果において、主に、「実使用空間と条件の異なる試験空間で行われた除菌やウイルス不活化などの試験結果」を根拠としているケースが多くみられます。

本件においても、2社が提出したデータは密閉空間における試験結果に過ぎず、室内などの実際に生活している実用空間におけるものではなく(0.2立方メートルという極小の狭い空間における試験結果など)、表示している効果とその根拠が対応していないとみなされました。

また、対照試験が行われておらず、試験の手法についても客観的な手法による実証ではないと判断されました。
消費者庁は、「例えば、こういう商品の効果を試験する際は、商品を使った場合にどういう効果を得られるかということと同時に、商品を使わなかった場合にどういう効果があるかという、いわゆる『対照試験』を行うことが必要」と説明しています。

なお、j.airの効果を示すグラフには、「※データは実使用空間での実証効果ではありません。また、すべての菌やウイルス、臭いに効果があるわけではありません。」といった打消し表示が記載されていましたが、一般消費者が表示から受ける当該商品の効果に関する認識を打ち消すものとは認められていません。

過去には、2021年12月の大木製薬とCLO2 Labの二酸化塩素による「空間除菌製品」に対する措置命令事案において、消費者庁は、「空間に浮遊するウィルスを実生活空間において除菌、不活化することを実証することは困難。99.%除菌するといった消費者が期待するような効果を発揮することを評価する公的な方法はなく、消費者庁が調査する中では適切な方法も見当たらず、現段階では確立されていない。」と、見解を示しています。

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空間除菌用品の効果について「表示の裏付けとなる合理的な根拠」として認めない消費者庁の判断に対して、異を唱えつつも取消訴訟の事業判断を行わなかった企業と、執行停止の申立てを行った企業の事例があります。
・空間除菌用品の除菌効果表示に対する景表法措置命令 マクセルとレックにみる合理的根拠の争点と取消訴訟判断
申立てを行ったレック(株)に対しては、2021年8月18日、申立てを却下する決定がなされ、2023年2月2日、東京地方裁判所において原告の請求を棄却する判決が確定しています。

大幸薬品の「クレベリン」事案においても、差し止め訴訟は敗訴となっており、消費者庁の見解が司法においても支持されていることとなります。

《参考記事》
・コロナ予防効果広告、GSDのマイナスイオン発生器に景表法措置命令(消費者庁 2021年3月31日)

・「滝風イオンメディック」のアップドラフトに景表法措置命令。ウイルス除去、空間除菌、疾病予防効果に優良誤認(消費者庁:2021年6月17日)

・「消費者庁公認」を謳った首下げ型の空間除菌製品。ドラッグストアチェーンのププレひまわりの店頭POP広告に景表法措置命令(消費者庁 2021年6月11日)

・今年度5社目。レッドスパイスの首下げ空間除菌製品に景表法措置命令。除菌効果への打消し表示認められず(消費者庁 2021年3月18日)

・Nature Link、萬祥、首下げ空間除菌製品2社の表示に景表法措置命令。分かれる両社の対応(消費者庁 2021年1月15日)

・Salute.Lab、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。実証データは、訴求内容に適切に対応を(消費者庁 2020年12月22日)

通販事業者 東亜産業、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)

大幸製薬は、2014年3月の空間除菌製品17社に対しする一斉処分において、クレベリンシリーズの「携帯型」「据え置き型」商品の表示に対する措置命令を受けています。

・「空間除菌剤」17社、景表法措置命令。大幸薬品の新たな広告も問題視(消費者庁 平成26年 3月27日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。