「〇〇放題」に注意!(株)TSUTAYA動画配信サービス、光回線インターネット接続サービスに対し景表法措置命令(消費者庁:平成30年5月30日)

「〇〇放題」と銘打ったサービスは、消費者には魅力的に感じられますが、サービス提供者側では何らかの条件を設定しているケースが多いことと思います。
そんな条件設定についての表示で注意したいのが、「打消し表示」。

消費者庁は5月30日に、(株)TSUTAYAが提供する動画配信サービス及び光回線インターネット接続サービスの表示に対し、景品表示法の措置命令を行いました。
「動画見放題プラン」に関する表示について優良誤認、期間限定キャンペーンについて有利誤認表示とみなされました。
優良誤認表示については、「打ち消し表示」についても指摘されています。

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株式会社TSUTAYAに対する景品表示法に基づく措置命令について
(平成30年5月30日 消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180530_0001.pdf
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(株)TSUTAYAは、措置命令の公表と同日に「「動画見放題プラン」、「TSUTAYA光」に関する 措置命令についてのお詫びとお知らせ」にて、指摘事項に対す当社の表示改善対応を示しています。
内容を確認していきます。


●違反概要
1 動画配信サービス
【対象役務】
「TSUTAYA TV」:
動画見放題プラン
「動画見放題&定額レンタル8」:
動画見放題プランとDVD及びブルーレイディスク並びにCDをインターネットで予約し宅配によりレンタルできるサービスを一体的に供給するサービス
「TSUTAYA光」:
動画見放題プランと光回線インターネット接続サービスを一体的に供給するサービス
「TSUTAYAプレミアム」:
動画見放題プランのうち「動画ポイント」と称するポイントの提供を除いたサービスと、店舗においてDVD等をレンタルできるサービスを一体的に供給するサービス

【表示媒体・期間】
「TSUTAYA TV」
自社ウェブサイト:遅くとも平成28年4月1日から平成30年1月10日までの間
「動画見放題&定額レンタル8」
自社ウェブサイト:遅くとも平成28年4月1日から平成30年1月14日までの間
「TSUTAYA光」
自社ウェブサイト:遅くとも平成28年4月1日から平成30年1月15日までの間
「TSUTAYAプレミアム」
(a)自社ウェブサイト:遅くとも平成29年10月2日から平成30年1月11日までの間
(b)YouTubeの自社公式チャンネル:
平成29年10月2日から平成30年4月15日までの間
平成30年4月16日から同年5月14日までの間
(c)テレビコマーシャル
平成29年10月4日から平成30年3月28日までの間
平成29年12月8日から同月24日までの間

【違反表示内容】
あたかも、対象役務(動画配信サービス)を契約すれば、TSUTAYA TVにおいて配信する動画が、条件なく見放題となるかのように示す表示をしていたが、実際は、条件なく見放題ではなかった。

表示例:
「TSUTAYA TV」
「動画見放題 月額933円(税抜) 30日間無料お試し」と記載し、その背景に30本の動画の画像を掲載し、「人気ランキング」及び「近日リリース」として、それぞれ10本の動画の画像を掲載。
《打消し表示》
同一のウェブページの下部に記載した「よくある質問」に、
「▼動画見放題は新作も観られますか?」と記載し、クリックすると、
「実質0円で話題の最新作を観れるのはTSUTAYA TVだけです。
※実質0円とは月額933円に毎月1080円分 のポイントがついて540円の「新作」でも2本ご覧いただけます。」と表示。
「▼TSUTAYA TVの動画配信とは?」と記載し、クリックすると、
「TSUTAYA TVの動画配信は、インターネットに接続したテレビ、パソコン、タブレット、スマートフォンから、好きな映画やアニメなど広いジャンルの映像をどこででもお楽しみいただける動画配信サービスです。 オススメの『動画見放題』プランなら、月額わずか933円(税抜き) で、動画見放題(*) さらに、毎月1080円分の動画ポイントつき! まずは、いますぐ30日間の無料お試しをお楽しみください。
(*)動画見放題プランは『動画見放題』対象の作品から、どれだけ観ても毎月定額でお楽しみいただけます。 毎月、動画見放題プランの更新日に1080円分のポイントがつき、『新作』も含めお好きな作品をご覧いただけます。」と記載あり。

→実際:
動画見放題プランの対象動画は、TSUTAYA TVにおいて配信する動画の12%~26%程度。特に、「新作」及び「準新作」のリリースカテゴリの動画については、1%~9%程度。
「動画見放題」との記載の背景に掲載した動画の過半および、「人気ランキング」として掲載した全ての動画、「近日リリース」として掲載した動画の大部分が対象外。
提供される動画ポイントによって追加で視聴できるのは、例えば「新作」リリースカテゴリの動画であれば2本程度であった。

「TSUTAYA TV」の打消し表示は、「見放題」との記載とは離れた箇所に小さな文字で記載されている。回答についての記載は質問の記載をそれぞれクリックしなければ表示されない。
よって、一般消費者が表示から受ける当該サービスの内容に関する認識を打ち消すものではない。

(株)TSUTAYAの表示改善対応


「動画見放題&定額レンタル8」
「人気の動画が見放題! CDやDVDが借り放題!」と記載し、
「サービスプランについて TSUTAYAの全作品をご自宅で自由に楽しめる、3つのプランをご用意しました。」
「動画見放題 見放題! オンライン動画配信 月額933円(税抜)」
「定額レンタル借り放題! CD/DVDの宅配レンタル 月額1,865円(税抜) ※9枚目以降は旧作のみ対象となります。」
「動画見放題&定額レンタル見放題&借り放題! 2つでお得! 月額2,417円(税抜き)」と記載するとともに、
「オンライン動画配信サービス 月額933円。TSUTAYAのほぼ全ての動画をオンラインで見ることができるサービスです。」
「取扱いタイトル数業界最大級85,000本以上」
「TSUTAYAのほぼ全作品を自宅で楽しめる!」
「洋画 4,000本以上」、「アジア 12,000本以上」、「国内TV 8,000本以上」、等と記載。
《打消し表示》
同一のウェブページに、
「※新作なども毎月付与される配信ポイント(1080pt)を利用して見ることが可能です。」と記載。

→実際:
動画見放題プランの対象動画は、TSUTAYA TVにおいて配信する動画の12%~26%程度。特に、「新作」及び「準新作」のリリースカテゴリの動画については、1%~9%程度。
提供される動画ポイントによって追加で視聴できるのは、例えば「新作」リリースカテゴリの動画であれば2本程度であった。

「動画見放題&定額レンタル8」の打消し表示は、記載内容から動画見放題プランの対象動画に「新作」リリースカテゴリの動画などが含まれないと認識するのは困難。
よって、一般消費者が表示から受ける当該サービスの内容に関する認識を打ち消すものではない。

(株)TSUTAYAの表示改善対応

「TSUTAYA光」
「毎月タダで映画が観られる光。TSUTAYA 光」と記載し、「毎月無料で映画やドラマが見放題!」
「特長1 映画が毎月無料!」、「動画配信プランが毎月見放題」
「海外TVドラマ 国内TVドラマ 邦画洋画 など、毎月無料で楽しめる!」と記載。
《打消し表示》
同一のウェブページに、
「対象作品を見る」との記載にリンクを設定し、「期間限定キャンペーン ハリウッド最新作などが観られる 毎月1,080円相当の配信ポイントプレゼント」及び「話題の作品を見る」と記載。「話題の作品を見る」との記載にリンクを設定していた。

→実際:
動画見放題プランの対象動画は、TSUTAYA TVにおいて配信する動画の12%~27%程度。特に、「新作」及び「準新作」のリリースカテゴリの動画については、1%~9%程度。
「映画」ドラマ」の動画についても、12%~25%程度。
提供される動画ポイントによって追加で視聴できるのは、例えば「新作」リリースカテゴリの動画であれば2本程度であった。

「TSUTAYA光」の打消し表示は、「毎月無料で映画やドラマが見放題!」との記載とは離れた箇所に記載されている。
また、「対象作品を見る」及び「話題の作品を見る」とのリンクをクリックして表示されるのは多数の動画の画像等が掲載されたウェブページである。
よって、一般消費者が表示から受ける当該サービスの内容に関する認識を打ち消すものではない。

(株)TSUTAYAの表示改善対応

「TSUTAYAプレミアム」
自社ウェブサイト:
「お店で旧作DVD借り放題!+ネットで動画配信見放題! 月額1,000円(税抜)~」と記載。
《打消し表示》
同一のウェブページに、
「『貸出中』がない」及び「ネット配信だから『貸出中だった・・・』がありません。対象作品一覧はこちら」と記載し、「対象作品一覧はこちら」との記載に「動画見放題」との文字で絞り込み検索が行われた多数の動画の画像等が掲載されたウェブページへのリンクを設定していた。

動画広告:
「TSUTAYA プレミアム」、「旧作DVD借りたい放題」、「動画配信も」及び「見たい放題」との文字及び音声を配信又は放送。
《打消し表示》
同一画面の下部に、
「※TSUTAYA TVの『動画見放題』作品が対象となります。」等との文字を配信又は放送していた。

→実際:
動画見放題プランの対象動画は、TSUTAYA TVにおいて配信する動画の23%~27%程度。特に、「新作」及び「準新作」のリリースカテゴリの動画については、3%~9%程度。
「映画」ドラマ」の動画についても、12%~25%程度であった。

「TSUTAYAプレミアム」の打消し表示は、
自社ウェブサイトでは、「見放題」との記載とは離れた箇所に、「見放題」の文字と比較して小さな文字で記載されている。
また、「対象作品一覧はこちら」とのリンクをクリックして表示されるのは多数の動画の画像等が掲載されたウェブページである。
動画広告では、小さな文字でのみ配信又は放送しているものであり、表示時間も短いものである。
よって、一般消費者が表示から受ける当該サービスの内容に関する認識を打ち消すものではない。

(株)TSUTAYAの表示改善対応


2 光回線インターネット接続サービス
【対象役務】
光回線インターネット接続サービス「TSUTAYA 光」のうち「さんねん割」と称する3年間を契約期間とすることにより3年間にわたり毎月月額料金を割引するプラン

【表示媒体・期間】
自社ウェブサイト:平成27年2月12日頃から平成29年11月11日までの間

【表示内容】
あたかも、キャンペーン受付期限までに対象役務を申し込んだ場合に限り、3年間にわたり、毎月、「戸建てタイプ」にあっては月額700円、「マンションタイプ」にあっては月額300円の割引が適用されるかのように表示をしていたが、実際は、キャンペーン受付期限後に申し込んだ場合にも、同様の割引が適用されるものであった。

表示例:
「今なら『さんねん割』でずーっとお得!」と記載。
「価格」として、「■戸建て」、「プラン ギガ」、「定価 5,200円」、「さんねん割 -700円」、「販売価格 4,500円」等と記載するとともに、
「『さんねん割』キャンペーン」として、「3年契約で料金がずーっとお得!」、「割引価格 戸建てタイプ:700円/月 マンションタイプ:300円/月」、「キャンぺーン受付期間 2015年2月12日~2017年3月31日」と記載。

本件では、打消し表示についても指摘されています。
次回の記事では、今回問題となった「打消し表示」の景品表示法上の留意点を解説します。
消費者庁では、昨年7月に公表した「打消し表示に関する実態調査報告書」(※1)に続き、今年の5月16日に「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」(※2)を公表しており、規制が強まっています。

《参考記事》
・マカフィー 期間限定キャンペーンの「標準価格」「特別価格」に景表法措置命令!打消し表示にも注意(消費者庁:平成30年3月22日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。