効果的な施策はポイントやクーポン。ターゲティング広告には警戒。ダークパターンも要注意(令和4年度 消費者意識基本調査)

インターネットでの商品・サービスの予約や購入が浸透する中、様々なデジタルマーケティングが展開されています。消費者庁の「令和4年度 消費者意識基本調査」によると、消費者に支持されている施策はポイント付与やクーポンで、他方、ターゲティング広告に対しては警戒心を持っていることが分かりました。
また、9割の人がダークパターンを目にし、5割の人が購入に誘引されているというデータが示されました。

消費者の意識や行動、トラブル経験を理解することは、事業者にとってマーケティング活動や顧客体験(CX)向上の指針を得ることにつながります。
「令和4年度消費者意識基本調査」より、インターネットやSNSの利用での意識や経験に関する項目をピックアップしてご紹介します。

「インターネットやSNSの利用」について

  • インターネット上で利用しているもの
  • インターネットでの予約や購入の頻度
  • インターネットでの予約や購入で心配なこと/実際に経験したこと
  • インターネットでの予約や購入で気を付けていること
  • インターネットの広告や仕組みで便利だと感じるもの/不利益が生じるおそれがあると感じるもの
  • インターネットでの予約や購入で実際に目にしたり経験したもの/予約や購入等につながったり、困ったりしたもの

インターネット利用者の75%が、商品・サービスの予約や購入に利用している

パソコンやスマートフォン等でインターネットを利用している(『ほとんど毎日利用している』+『毎日ではないが定期的に利用している』+『時々利用している』)」の割合は78.8%。
インターネット上で利用している割合の高い上位3項目は次の通り。(複数回答)
1. 情報収集(検索、閲覧):92.9%
2. 商品・サービスの予約や購入:74.6%
3. 動画閲覧(サブスクリプションサービス含む。):62.4%

インターネットでの商品・サービスの予約や購入、月に2~3回程度が3割

インターネットでの商品・サービスの予約や購入している程度について、回答が多い上位3項目は次の通り。
1. 月に2~3回程度:32.2%
2. 月に1回程度:24.0%
3. 数か月に1回程度:22.4%

ネット予約や購入で、消費者が心配なことと実際の経験にはギャップあり

インターネットでの商品・サービスの予約や購入している人に対して、予約や購入で心配なことと実際に経験したことを聞いた。(複数回答)
実際に経験したことの回答が多い上位3項目について、心配している人と経験した人の割合は次の通り。
1.商品・サービスが期待やイメージとは異なる:心配(55.0%)、経験(52.1%)
2.望まない広告メールが送られてくる:心配(46.6%)、経験(47.6%)
3.サイズや数量等を間違えて注文してしまう心配(39.0%)、経験(31.8%)

心配なことの回答が多かったが実際の経験は少ない項目は次の通り。(ポイント差が大きい順)
「個人情報が漏えいや悪用されている」:心配(58.7%)、経験(8.9%)
「トラブル時に十分な対応や補償がない」:心配(45.8%)、経験(8.7%)
「苦情や相談の窓口が分かりにくい」:心配(41.6%)、経験(17.2%)
「粗悪品や不良品が届く」:心配(52.5%)、経験(29.5%)
「解約方法が分かりにくい/解約を忘れてしまう」:心配(45.2%)、経験(27.4%)

ネット購入で気を付けていること、口コミ評価、大幅低価格、複数サイト情報

インターネットでの商品・サービスの予約や購入で気を付けている(『とても当てはまる』+『どちらかというと当てはまる』)ことの割合の高い上位3項目は次の通り。
1. 口コミや評価を判断材料にする:84.6%
2.大幅に安く販売されている場合は注意する:82.0%
3.複数のサイトから情報を集め、信頼できるか確認する:79.0%

インターネットでの商品・サービスの予約や購入で気を付けていない(『どちらかというと当てはまらない』+『全く当てはまらない』)ことの割合の高い上位3項目は次の通り。
1. 個人情報や履歴データ等の取扱いについて確認する:46.8%
2. 安全性に関する情報(対象年齢や認証マーク、使用方法、成分、消費期限等)を確認する:42.6%
3. 取引条件や利用規約(解約や返品等)を確認する:41.7%

気にする情報として、ネット購入でのトラブルを避けたい消費者意識が読み取れます。
他方、気を付けていない項目についても、先の質問結果から心配していないのではなく、規約などの細かい文字情報等を確認するのが億劫だと感じているのではないでしょうか。

支持されている施策はポイント付与やクーポン。ターゲティング広告には警戒

インターネットでの商品・サービスの予約や購入している人に対して、ネットの広告や仕組みで便利だと感じるものと不利益が生じるおそれがあると感じるものを聞いた。(複数回答)
便利だと感じる人の割合が多い上位3項目は次の通り。
1. 決済アプリと連携したポイント付与やクーポン(60.9%)
2. ポイントやランクが上がっていくキャンペーン(55.0%)
3. 検索結果の上位におすすめ商品が表示される仕組み(48.5%)

不利益が生じるおそれを感じる人の割合が多い上位3項目は次の通り。
1. 年齢や性別、収入、居住地等に合わせて表示される広告(例:転職サイトやマッチングアプリ等)(57.8%)
2. SNS上のつながりや関心を基に表示される広告(57.6%)
3. 入力を省略して、ワンクリック等で購入できる仕組み(51.6%)

ポイント付与やクーポンなどの経済的便益の提供や、能動的な検索行動に紐づいた商品提案などは、消費者に喜ばれているマーケティング手法となっています。
他方、意図しない個人情報を利用したターゲティング広告や、よく吟味せずに購入につながってしまう仕組みには警戒心を持っていると言えます。

9割の人がダークパターンを目にし、5割の人が購入に誘引されている

インターネットでの商品・サービスの予約や購入で次の11項目について「これまでに実際に目にしたり、経験したりしたもの」と、そのうち「実際に商品・サービスの予約や購入、会員登録等につながったり、困ったりしたもの」を聞いた。(複数回答)
《選択項目》
(ア) 割引等の特典の有効期限をカウントダウンで表示するタイマー
(イ) 「●人が閲覧中」や「●人が購入済み」等、他人の動向の表示
(ウ) 「残りわずか」等、売り切れ間近のような表示
(エ) 虚偽やステルスマーケティングと思われる口コミや評価
(オ) 勝手に不要な商品やオプションがセットになっていた
(カ) メールマガジンやセール情報の初期設定が「購読」や「通知」になっていた
(キ) セール価格だと思ったら、定期購入の価格だった
(ク) サイト閲覧中に何度も購入を促すポップが出てきた
(ケ) お試し利用なのに、本来必要のない情報まで入力が必要だった (28.9) ( 9.5)
(コ) 解約までの手続やページが分かりにくい
(サ) 解約方法が電話限りなのに、電話がつながらない

目にしたり、経験した人の割合が多い上位3項目は次の通り。
1. 『残りわずか』等、売り切れ間近のような表示(78.7%)
2. 「『●人が閲覧中』や『●人が購入済み』等、他人の動向の表示(72.0%)
3. 割引等の特典の有効期限をカウントダウンで表示するタイマー(61.7%)
これらの項目のうち1個以上実際に目にしたり、経験したりした人の割合は、約9割(89.2%)。

実際に商品・サービスの予約や購入、会員登録などにつながったり、困ったりした人の割合が多い上位3項目は次の通り。
1. 解約までの手続やページが分かりにくい(25.7%)
2. メールマガジンやセール情報の初期設定が『購読』や『通知』になっていた(20.7%)
3. 『残りわずか』等、売り切れ間近のような表示(17.0%)
これらの項目のうち1個以上で予約や購入につながったり、困ったりしたことがある人の割合は、約半数(50.5%)。

これらの項目はいわゆる「ダークパターン」と呼ばれる手法です。
ダークパターンとは、一般的に、消費者が気付かない間に不利な判断・意思決定をしてしまうよう誘導する仕組みのウェブデザインなどを指す、とされています。
これらの表示を多くの消費者が目にしており、購入などのアクションに誘引されていることが示されました。

「消費者意識基本調査」は、消費者問題の現状や求められる政策ニーズを把握し、消費者政策の企画立案にいかすことを目的に、平成24年度より毎年継続的に実施されています。
令和4年度調査では、インターネットやSNS利用における消費者意識に関する設問が多く盛り込まれました。
ダークパターン対策を含め、今後の「消費者法制」見直しの基礎データとなることが予測されます。
ダークパターンの類型と利用者がどのような不利益をこうむるのか、ダークパターンに対する行政の取り組みについて、以下の記事にまとめました。
・「ダークパターン」に打つ手なし?デジタル社会での「消費者法制」の抜本的見直しに向けて

消費者の商品購入における意識やSNS利用状況の記事も併せてご確認ください。
・見たことのあるSNS広告、「大幅値下げをうたうセール広告」が最多。違法広告に注意(令和3年度 消費者意識基本調査)

(※)
消費者意識基本調査(消費者庁 令和4年度実施)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/research_report/survey_002/
調 査 項 目
(1)「生活全般や消費生活における意識や行動」について
(2)「インターネットやSNS の利用」について
(3)「消費者事故・トラブル」について
調査対象
 母集団:全国の満 15 歳以上の日本国籍を有する者
 標本数:10,000 人
 地点数:400 地点(375市区町村)
 抽出法:層化2段無作為抽出法
調査時期  令和4年11月1日~11月16日
調査方法  郵送配布、郵送回収(WEB 回答併用)
有効回収数(率):5,634人(56.3%)

≪関連記事≫
・6割強の人が購入・契約に不安。被害を受けたサイレントカスタマーは46%(令和3年度 消費者意識基本調査)

・消費者被害を受けた販売形態の5割がネット通販。「相談・申出」先、36%が「販売店、代理店等」(令和2年度 消費者意識基本調査)

・消費者意識、4人に3人が表示確認を心掛け、現物を見て購入する人は68%(令和元年度 消費者意識基本調査)

・8割の消費者が表示確認を心掛け、約6割が「偽装・誇大表示」に高い関心(平成30年度 消費者意識基本調査)

・「クーリング・オフ制度」の認知度9割。「特定適格消費者団体」の認知度は13%(平成28年度 消費者意識基本調査)

・消費生活の心がけ「表示や説明の確認」74%、「個人情報管理」57%。約9割が個人情報漏えい不安 (平成25年度 消費者意識基本調査)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。