大幸薬品&デンソー共同開発「車両用クレベリン」に景表法措置命令。子会社、ディーラー含む10社一斉処分(消費者庁 2024年3月19日)

空間除菌関連表示に関する景品表示法措置命令が多数出されてきましたが、今回は商品ではなく、役務(サービス)に対する処分です。
3月19日、消費者庁は、自動車部品の製造・販売事業者(株)デンソーとその子会社、及びトヨタ系列やマツダ系列のカーディーラー8社の合計10社が提供する「車両用クレベリン」と称する役務(サービス)の空間除菌効果表示について、不実証広告規制(※)による優良誤認の措置命令を公表しました。
10社の命令発出日は、(株)デンソー、(株)デンソーソリューション、トヨタカローラ札幌(株)、埼玉トヨタ自動車(株)、トヨタモビリティ中京(株)、ネッツトヨタ高松(株)が3月13日、東海マツダ販売(株)、(株)神戸マツダが3月14日、(株)広島マツダ、(株)西四国マツダが3月18日となっています。

「車両用クレベリン」とは、車内空間の除菌・消臭施工サービスで、二酸化塩素を発生させる専用機器に専用カートリッジを差し込み、車室内に二酸化塩素を噴霧するものです。
室内空間同様、車内空間においても閉鎖空間での試験方法による継続的な空間除菌効果は認められませんでした。
サービスに用いられていた二酸化塩素発生器は、「クレベリン」シリーズの製造販売元である大幸薬品とデンソーが共同で開発したもの。
大幸薬品は2022年1月と4月にクレベリンシリーズ商品6商品に対して措置命令を受けていました。

処分の概要と、空間除菌関連商品の菌・ウイルス除去効果の合理的根拠について確認します。

———-
「車両用クレベリン」と称する役務の提供事業者10社に対する
景品表示法に基づく措置命令について(消費者庁 2024年3月19日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/036663
———
(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


【違反事業者】
(株)デンソー(愛知県刈谷市)
(株)デンソーソリューション(愛知県刈谷市)
トヨタカローラ札幌(株)(札幌市豊平区)
埼玉トヨタ自動車(株)(さいたま市中央区)
トヨタモビリティ中京(株)(名古屋市千種区)
ネッツトヨタ高松(株)(高松市)
東海マツダ販売(株)(名古屋市瑞穂区)
(株)神戸マツダ(神戸市兵庫区)
(株)広島マツダ(広島市中区)
(株)西四国マツダ(松山市土居町)

【対象役務】
車両用クレベリンと称する役務

【表示媒体・表示期間・表示内容】
デンソー
自社ウェブサイトに掲載していたリーフレット:
2022年8月18日、26日、2023年10月18日~2024年1月31日
自社ウェブサイト
2022年8月12日、18日、26日、2023年10月18日~2024年1月31日

デンソーソリューション:
自社ウェブサイトに掲載していたリーフレット:2022年8月12日、18日、26日
自社ウェブサイト:
2022年8月12日、18日、26日、2023年10月18日~2024年1月31日

トヨタカローラ札幌:
自社ウェブサイト:2022年10月31日、2023年1月30日、4月19日~5月23日

埼玉トヨタ自動車:
自社ウェブサイト:2022年11月9日、2023年1月30日

トヨタモビリティ中京:
「太平通店スタッフブログ」と称する自社ウェブサイト:
2023年4月18日~25日、4月29日~5月16日、5月24日~7月5日
「藤が丘北店スタッフブログ」と称する自社ウェブサイト:2023年6月6日~7月5日
「小牧堀の内店スタッフブログ」と称する自社ウェブサイト:2023年6月6日~7月5日

ネッツトヨタ高松:
自社ウェブサイト:
2022年10月31日、2023年1月30日、4月19日~5月17日、5月19日~25日、5月27日~28日

東海マツダ販売:
自社ウェブサイト:2022年12月20日、2023年1月30日

神戸マツダ:
自社ウェブサイト:2022年12月20日、2023年1月30日、4月12日、19日~5月11日

広島マツダ:
自社ウェブサイト:2022年10月31日、12月20日、2023年1月30日、5月16日~29日

西四国マツダ:
自社ウェブサイト: 2022年12月20日、2023年1月30日、4月12日、19日~7月20日

【違反内容】
表示内容(例):
「DENSO 車両用クレベリン 車内空間の除菌・消臭サービス 大幸薬品×DENSO 大幸薬品とデンソーの共同開発によるクレベリン(二酸化塩素ガス)を活用した車内除菌・消臭サービスです。」、「定期的な施工でクリーンな車内空間をキープ」、「施工目安 約3ケ月」、「点検整備・車検のタイミングで」、「季節の変わり目に」、「レジャーのあとに」、「受験シーズンの送迎に」等と表示。
(デンソー自社ウェブサイト表示)

「車内除菌消臭」、「悪臭物質や菌・ウイルスを破壊して快適な空間に」、「クレベリンは、㈱デンソーと㈱大幸薬品が共同開発した、二酸化塩素の働きによりウィルスの作用抑制・除菌・消臭ができる“衛生管理製品”です。施工後、効果は約3か月持続します。(目安です、使用環境により異なります)」、「〇洗えない車室内、シートを除菌」、「〇染みついたタバコ臭・ペット臭を消臭」との記載と共に、クレベリン発生機の画像を表示。
(神戸マツダ自社ウェブサイト表示)

あたかも、本件施工サービスを利用することで、車室内において約3か月有効な除菌効果等が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例: (デンソー自社ウェブサイト

(消費者庁発表資料より抜粋)

表示例: (東海マツダ販売自社ウェブサイト)

(消費者庁発表資料より抜粋)

実際:
消費者庁は、10社に対し当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、10社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

空間除菌製品の表示に関する不実証広告規制による措置命令は、過去に多数出されており、いずれの事案も、空間除菌効果表示の合理的根拠について、消費者庁は同じ見解を示しています。
以下の記事では、今回問題となった車室内での「空間除菌」効果表示の合理的根拠の考え方、処分対象が自動車販売会社8社にまで及んだ背景、違反リスク回避の可能性を分析しました。

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《参考記事》
・二酸化塩素による空間除菌製品、今回も根拠認められず。興和、中京医薬品、ピップ、三和製作所に景表法措置命令(消費者庁 2024年1月31日)

・2023年度では1件目となる空間除菌製品の景表法措置命令。共立電器産業、フォレストウェル(消費者庁 2023年12月22日)

・空間除菌用品の除菌効果表示に対する景表法措置命令 マクセルとレックにみる合理的根拠の争点と取消訴訟判断

・コロナ予防効果広告、GSDのマイナスイオン発生器に景表法措置命令(消費者庁 2021年3月31日)

・「滝風イオンメディック」のアップドラフトに景表法措置命令。ウイルス除去、空間除菌、疾病予防効果に優良誤認(消費者庁:2021年6月17日)

・「消費者庁公認」を謳った首下げ型の空間除菌製品。ドラッグストアチェーンのププレひまわりの店頭POP広告に景表法措置命令(消費者庁 2021年6月11日)

・今年度5社目。レッドスパイスの首下げ空間除菌製品に景表法措置命令。除菌効果への打消し表示認められず(消費者庁 2021年3月18日)

・Nature Link、萬祥、首下げ空間除菌製品2社の表示に景表法措置命令。分かれる両社の対応(消費者庁 2021年1月15日)

・Salute.Lab、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。実証データは、訴求内容に適切に対応を(消費者庁 2020年12月22日)

通販事業者 東亜産業、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)

大幸製薬は、2014年3月の空間除菌製品17社に対しする一斉処分において、クレベリンシリーズの「携帯型」「据え置き型」商品の表示に対する措置命令を受けています。

・「空間除菌剤」17社、景表法措置命令。大幸薬品の新たな広告も問題視(消費者庁 平成26年 3月27日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。