4月25日、消費者庁は、芳香剤・消臭剤・脱臭剤等の製造及び販売事業者エステー(株)(東京都新宿区)が供給する花粉対策効果をうたうシリーズ4商品の表示に対して景品表示法措置命令を行いました。
今回は、トドマツ精油の成分による浮遊する花粉やウィルスの付着をブロックする効果や、アレル物質の働きを低減する効果に対して、不実証広告規制(※)による優良誤認となっています。
本件においても、提出された表示の裏付けとなる根拠資料は、実使用空間と条件の異なる試験空間での試験結果であり、合理的な根拠とは認められませんでした。
処分の概要と、浮遊する花粉にも当てはまる空間除菌関連商品の菌・ウイルス除去効果の合理的根拠について確認します。
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エステー株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2024年4月26日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/037589
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
●違反概要
【対象商品】
「MoriLabo ナイトケア 花粉バリアポット」
「MoriLabo 花粉バリアスティック」
「MoriLabo 花粉バリアシール」
「MoriLabo 花粉バリアスプレー」
【表示媒体・表示期間】
「MoriLabo ナイトケア 花粉バリアポット」
商品パッケージ:2021年12月31日~2023年11月16日
自社ウェブサイト「エステー製品サイト」、「MoriLaboブランドサイト」および、
「寝室に置くだけ香りで花粉をガード」との記載のある映像をクリックすると再生される動画:
2023年3月28日~2023年9月29日
「MoriLabo 花粉バリアスティック」
商品パッケージ:2019年12月12日~2022年2月10日
自社ウェブサイト「エステー製品サイト」、「MoriLaboブランドサイト」および、
「香りで花粉をガードするしくみ」及び「香りのバリア層(香りが広がる範囲)」との記載のある映像をクリックすると再生される動画:2023年3月28日~2023年9月29日
「MoriLabo 花粉バリアシール」
商品パッケージ:2020年12月11日~2023年3月3日
自社ウェブサイト「エステー製品サイト」:2023年3月28日~2023年9月29日
「MoriLabo 花粉バリアスプレー」
商品本体及び台紙:2020年12月25日~2023年4月3日
自社ウェブサイト「エステー製品サイト」:2023年3月28日~2023年6月9日、2023年6月16日~2023年9月29日
【違反内容】
表示内容(例):
「MoriLabo ナイトケア 花粉バリアポット」、「MoriLabo 花粉バリアシール」
(自社ウェブサイト「エステー製品サイト」)
「香りで花粉をガード※ 花粉を直接覆って、アレル物質の働きを引き下げる」、「ナイトケア花粉バリアポット」及び「森のチカラでヘルスケア(モリラボ) MoriLabo®」との記載と共に、人物の横顔の画像、半透明の六角形の集合体のイラスト、黄土色・黄色・緑色の各粒形のイラスト及び商品パッケージの画像等を表示。
あたかも、商品を使用するだけで、トドマツ精油の香りの成分が、浮遊するスギ花粉を含む花粉をガードする効果及びスギ花粉をコーティングすることによりアレル物質の働きを低減する効果等が得られるかのように示す表示をしていた。
表示例:自社ウェブサイト「エステー製品サイト」
「MoriLabo 花粉バリアスプレー」(商品本体及び台紙)
例えば、マスクを着用した人物の画像と共に、「MoriLabo® 花粉に直接アプローチ 次世代の花粉対策」、「花粉をWブロック※1」、「※1 スプレー時には、顔や髪のまわりに浮遊するスギ花粉をコーティングすることにより、アレル物質の働きを低減します。スプレー後には、肌や髪の表面をバリア層が包み込み、空気中のスギ花粉の付着を抑制します。」等と表示。
あたかも、商品を使用するだけで、スギ花粉を含む花粉が付着することをブロックする効果、及び商品に含まれるトドマツ精油の香りの成分が、顔や頭髪の周りにおいて浮遊するスギ花粉をコーティングすることによりアレル物質の働きを低減する効果が得られるほか、顔や頭髪の周辺の空間に浮遊するウイルスが付着することを99%ブロックする効果等が得られるかのように示す表示をしていた。
表示例: 商品パッケージ
実際:
消費者庁は、エステーに対し当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
「空間除菌製品」の効果表示に求められる実使用空間における実証
「空間除菌製品」に関しては、過去に複数の景品表示法の措置命令が出されています。
二酸化塩素を噴霧したり、オゾンやマイナスイオンを発生させる、首下げ型や置き型、空間に噴霧するスプレーなどの商品で、いずれの事案においても不実証広告規制を用いた処分により表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められずに優良誤認と認定されています。
具体的には、空間除菌効果において、主に、「密閉された無人の試験室空間での試験となっており、表示された実使用空間と条件の異なる試験空間で行われた除菌やウイルス不活化などの試験結果」を根拠としているケースが多くみられます。
本件の商品は、置き型、成分配合の薬剤をマスクの外側に塗るスティック、襟元に貼る成分入りのシール、成分配合の薬剤を顔に噴霧するスプレーの4タイプです。
いずれも浮遊する花粉に対する効果をうたっていましたが、本件においても、実使用空間と条件の異なる試験空間での試験結果であり、表示の根拠とは認められませんでした。
提出された資料は、およそ500ミリリットル容量の非常に小さな空間でのテスト結果などだった。同庁は、商品を使う空間とは条件がかけ離れており、合理的な根拠とはみなせないと判断した。
「花粉を香りでガード」に根拠なし 優良誤認でエステーに措置命令
(朝日新聞デジタル 2024年4月26日)
https://www.asahi.com/articles/ASS4V2RCGS4VUTFL012M.html
認められなかった打消し表示
エステーは、206年6月に以下の通り、脱臭炭シリーズの冷蔵庫用2商品の表示に対して公正取引委員会から「警告」を受けています。
このたび、弊社が販売している「脱臭炭 冷蔵庫用」及び「脱臭炭 冷蔵庫用大型」の使用期間表示に関して、公正取引委員会から以下の通りの警告を受けました。
これは、当該商品に「『使用期間 通常約5~6ヶ月(環境によって異なります)』と表示されているが、使用する冷蔵庫の機種によっては、約2か月程度で蒸散が完了し脱臭効力がなくなる場合もあった」というものです。冷蔵庫の性能向上や機能の多様化により、冷蔵庫のタイプによっては商品の使用期間表示と実際の使用期間とに差が出たケースが発生したためです。
(中略)
なお、弊社では、お客様へのより良い商品の提供を目指し、生活環境の変化に対応する適正でわかりやすい表示記載に努めてまいります。記
● 使用期間表示の変更
現行品: 使用期間 通常約5~6ヶ月(環境により異なります。)
変更後: 使用期間 通常約5~6ヶ月(冷蔵庫のタイプにより異なります。)
急冷タイプ:約2~3ヶ月 うるおいタイプ:約6~8ヶ月以下の環境では冷蔵庫のタイプによらず使用期間が短くなることがあります。
●風が多くあたる場所●庫内が乾燥している場合●庫内温度が高い場合
●なお、当該商品以外の脱臭炭シリーズについては、通常通りお使いいただけます。以上
公正取引委員会の警告についてのお詫びとお知らせ
(エステー(株) 2006年06月09日)
https://www.st-c.co.jp/news/newsrelease/2006/20060609_002662.html
「脱臭炭」のケースでは、そもそもの商品の脱臭効果が否定されたものではなく、使用する冷蔵庫の機種によって効果に差が出ることが問題となっていました。
本件においても、同社は例えば「置き型」商品の表示において、「効果は約1~2カ月持続します※季節や使用状況により異なります。(直射日光などで高温になる場所やエアコン等の風が直接当たる場合、極端に使用期間が短くなる場合があります。)」という記載をしています。
しかし、本件では浮遊する花粉に対する効果そのものの根拠が認められなかったことから、意味をなさない打消し表示となっています。
フィデスでは、商品の効能効果訴求を支える根拠データの妥当性評価や試験設計について、コンサルティングしています。
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《参考記事》
・二酸化塩素による空間除菌製品、今回も根拠認められず。興和、中京医薬品、ピップ、三和製作所に景表法措置命令(消費者庁 2024年1月31日)
・2023年度では1件目となる空間除菌製品の景表法措置命令。共立電器産業、フォレストウェル(消費者庁 2023年12月22日)
・プラチナチタン触媒による空間除菌効果の表示根拠認められず。ゼンワールドに景表法措置命令(消費者庁 2023年4月27日)
・クレベリン「置き型」にも景表法措置命令。空間除菌効果表示の合理的根拠、消費者庁に軍配(消費者庁 2022年4月15日)
・「クレベリン」の大幸薬品に景表法措置命令。「空間除菌製品」の除菌効果表示の合理的根拠に波紋(消費者庁 2022年1月20日)
・続く「空間除菌製品」の景表法措置命令。大作商事とイトーヨーカ堂で異なる対応(消費者庁 2022年2月3日)
・今年度5社目。レッドスパイスの首下げ空間除菌製品に景表法措置命令。除菌効果への打消し表示認められず(消費者庁 2021年3月18日)
・Nature Link、萬祥、首下げ空間除菌製品2社の表示に景表法措置命令。分かれる両社の対応(消費者庁 2021年1月15日)
・Salute.Lab、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。実証データは、訴求内容に適切に対応を(消費者庁 2020年12月22日)
・通販事業者 東亜産業、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)
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