プラチナチタン触媒による空間除菌効果の表示根拠認められず。ゼンワールドに景表法措置命令(消費者庁 2023年4月27日)

2023年4月11日に、景品表示法に基づく課徴金としては過去最高金額となる6億744万円の納付命令が、新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った空間除菌製品「クレベリン」の表示について大幸薬品(株)に出され、耳目を集めました。

・「クレベリン」の大幸薬品に景表法措置命令。「空間除菌製品」の除菌効果表示の合理的根拠に波紋(消費者庁 2022年1月20日)

・クレベリン「置き型」にも景表法措置命令。空間除菌効果表示の合理的根拠、消費者庁に軍配(消費者庁 2022年4月15日)

大幸薬品株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について
(消費者庁 2023年4月11日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/032797/

また、5月17日には大木製薬に対し、首下げ型などの空間除菌製品表示に対する課徴金4655万円の納付命令が出ています。
そんな中、新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った「空間除菌製品」について、4月27日、(株)ゼンワールド(静岡市)に対し、消費者庁による景品表示法の措置命令が出されています。
違反となった表示は、「プラチナチタン触媒」による除菌スプレーとそれを使ったガラスコーティングサービスについて、居室などの窓ガラスに塗布すれば、花粉、アトピー性皮膚炎、喘息の原因物質、新型コロナウイルスを含むウイルスを分解除去し、室内の空気を浄化する効果が得られるかのように示すものです。
今回も不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められませんでした。

なお、措置命令では、居室等の窓ガラスに塗布するサービスの自社ウェブサイト・サイト上の動画・ランディングページの表示および、商品のYahoo!ショッピング自社サイトの表示が継続されていることから、表示の取りやめを命じています。

内容を確認します。

———-
株式会社ゼンワールドに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2023年4月27日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/033092/
———

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。

⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


【対象サービス・商品】
サービス:
「エアープロット」と称するプラチナ触媒及び二酸化チタン触媒の組成物を含有する塗布剤を居室等の窓ガラスに塗布するサービス

商品:
「エアープロット家庭用セット/2LDK用」
「エアープロット家庭用セット/3LDK~一軒家用」
「エアープロット空気浄化セット(一部屋分)」

商品画像
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「エアープロット」掲載

(消費者庁発表資料より抜粋)

【表示媒体・表示期間】
居室等の窓ガラスに塗布するサービス
「AIRPLOT® エアープロット」と称する自社ウェブサイト:2022年6月20日~
自社ウェブサイト上の動画:2022年6月20日~
「一瞬で空気中の ウイルス・細菌・花粉を分解!」と記載のあるウェブページ(ランディングページ):2022年7月21日~

3商品
「Yahoo!ショッピング」に開設した自社ウェブサイト「ゼンワールドYahoo!店」:2022年6月20日~
「BASE」に開設した自社ウェブサイト「ゼンワールドショップ」:2022年6月20日~2023年3月27日
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「エアープロット」:2022年5月20日~2023年3月27日

【違反内容】
居室等の窓ガラスに塗布するサービス(表示内容例)
自社ウェブサイト・サイト上の動画・ランディングページ
本件サービスを利用するだけで、プラチナチタン触媒の作用により、新型コロナウイルスを含むウイルス、花粉、ダニの死骸や糞、PM2.5、臭いの原因物質、ハウスダスト、あらゆる有機化合物、カビ、菌、細菌、アトピー性皮膚炎の原因物質、排気ガスに含まれる窒素酸化物及び二酸化硫黄を分解除去し、室内の空気を浄化する効果果が得られるかのように示す表示をしている又は表示をしていた。

表示例:自社ウェブサイト

(消費者庁発表資料より抜粋)

商品(表示内容例)
「Yahoo!ショッピング」に開設した自社ウェブサイト「ゼンワールドYahoo!店」:
あたかも本件商品を居室等の窓ガラスに塗布すれば、プラチナチタン触媒の作用により、臭いの原因物質、花粉、アトピー性皮膚炎若しくは喘息の原因物質、室内の空気中にある有害物質及びウイルスを分解除去し、室内の空気を浄化する効果

「BASE」に開設した自社ウェブサイト「ゼンワールドショップ」:
あたかも本件商品を居室等の窓ガラスに塗布すれば、プラチナチタン触媒の作用により、花粉、アトピー性皮膚炎及び喘息の原因物質、ハウスダスト、コロナウイルスを含むウイルス、細菌、PM2.5を分解除去し、室内の空気を浄化する効果

表示例:「BASE」に開設した自社ウェブサイト「ゼンワールドショップ」

(消費者庁発表資料より抜粋)

実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

求められる実使用環境における根拠データ

報道では、以下のように報じています。

同社から提出された表示の裏付けデータについては、「いろいろな資料が出されたが、(代表的なものとして)窓ガラスの表面上でウイルスが死滅したという資料などがある。あくまでガラスの表面上の除去・分解効果にすぎず、室内空間における効果ではない」(表示対策課)と説明している。

窓ガラスに塗るだけで室内空間を除菌?ゼンワールドに措置命令
(通販通信ECMO 2023.04.27)

これまでの空間除菌製品に関する措置命令では、すべて不実証広告規制による処分となっており、新型コロナウィルスに対する効果に限らず、花粉・菌・カビ・ニオイ等の除去効果について、商品が使用される実生活空間での「表示の裏付けとなる合理的な根拠」が認められていません。
効能効果表示の根拠データは、広告で訴求する内容に適切に対応した、室内空間における商品使用による空間除菌効果を測る試験設計となっているかがポイントとなります。

また、本商品について「エアープロットは、プラチナ触媒と二酸化チタン触媒によって構成されています。窓ガラスに塗布すると太陽光のエネルギーを利用しながら、空気中の化学物質(ホルムアルデヒド等)や花粉、ダニの残骸及びフン等のハウスダスト、ウイルス、細菌、新築の臭い、新車や中古車の臭い、カビ臭、ペット臭など、あらゆる有害な有機化合物を水(H2O)と二酸化炭素(CO2)に分解して空気中に返す特許技術です。」との表示がなされていました。

過去に、類似の効果をうたった光触媒マスクについての不実証広告規制による措置命令事案があります。
本事案では、太陽光及び室内光下において商品に含まれる光触媒の効果によって、商品表面に付着した花粉、ウイルス、細菌、ハウスダスト及び悪臭の原因となる物質を化学的に二酸化炭素と水に分解する効果の表示について、「表示の裏付けとなる合理的な根拠」は認められませんでした。

・光触媒マスク4社に景表法措置命令。問題となる機能性の検証と表示の整合性:前編
(消費者庁:2019年7月4日)

・光触媒マスク4社に景表法措置命令。問題となる機能性の検証と表示の整合性:後編
(消費者庁:2019年7月4日)

処分を受けた大正製薬は、措置命令を不服として、消費者庁に審査請求を行いましたが、総務省の第三者委員会への諮問において消費者庁の主張が妥当として審査請求は棄却され、大正製薬の実質敗北となりました。
消費者庁が、大正製薬が提出した根拠資料を合理的根拠と認めないとした主張は、以下の二点でした。

  • 大正製薬が表示の裏付けとなる根拠として行った試験方法について、実環境下(主に「室内光下」)において、商品に含まれる光触媒によって表示された効果、性能を発揮することを合理的に裏付けられたものとはいえない。
  • 試験方法が、学術界又は産業界において一般的に認められたものとはいえない。

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令和3年度答申第74号
不当景品類及び不当表示防止法7条1項に基づく措置命令に関する件
https://www.soumu.go.jp/main_content/000797460.pdf
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「表示の裏付けとなる合理的な根拠」と認められるためには、試験デザインや測定方法など、その科学的合理性を判断する必要があり、同時に、広告表現と試験データが適切に対応しているか、どこまでの表現が認められるのかの検討が必要です。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。