ファミリア薬品「芦屋美蓉館」に景表法措置命令 石けんのシミ消し効果に不実証広告規制 (消費者庁 2020年6月26日)

消費者庁は6月26日、化粧品等の通信販売業者(有)ファミリア薬品(兵庫県尼崎市)に対し、シミ消し効果を標ぼうする石けんに関する表示に景品表示法違反(優良誤認) の措置命令を行いました。
同社が運営する「芦屋美蓉館(びようかん)」のウェブサイトで販売していた「朱の実」という商品名の石けんで、シミ消し効果に対する優良誤認は不実証広告規制(※)を用いた処分となっています。
「※個人の感想です。」「※ジミとは加齢による肌の汚れやくすみを言います。」といった打消し表示も、打消し効果が認められませんでした。

消費者庁及び公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所の調査による事案です。
処分のポイントについて確認します。

———-
有限会社ファミリア薬品に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2020年6月26日)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representaition_200626_1.pdf
———
(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。

違反概要

【対象商品】
「朱の実」と称する石けん

【表示媒体・期間】
自社ウェブサイト「芦屋美蓉館」
2018年8月28日、2019年1月16日、7月1日

情報誌「いただきます!」
2017年6月24日、2018年2月24日、6月23日、8月25日、12月22日
情報誌「チャオ!産経」
2018年4月17日、7月24日、2019年4月16日、8月27日
情報誌「読売ファミリー」
2019年3月20日、7月3日

【違反内容】
《優良誤認表示》
自社ウェブサイト:
例えば、
「年齢のせいにしていた、そのシミ・・・老斑ろうはんが消えた!?」、「今すぐライチ洗顔で 過去の紫外線をなかったことに!」「そして・・・今すでに出来ているシミを薄くする。」
等と表示。
あたかも、本商品を使用することで、シミを消す又は薄くすることができるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:

(消費者庁資料より引用)

情報誌:「いただきます!」
例えば、
顔にシミのある人物の画像と共に、「目尻や頬のおばぁちゃんジミが消えた・・・!?」、「エッ?洗顔で老斑やシミが薄くなる?」及び「濃く、落ちにくい60代以上のシミ(老斑)に劇的実感力!」
等と表示。
あたかも、本商品を使用することで、シミを消す又は薄くすることができるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:

(消費者庁資料より引用)

実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

●打消し表示について
(1)情報誌掲載の体験談広告において、「※個人の感想です。」と表示
(2)情報誌に掲載した広告において、「目尻や頬のおばぁちゃんジミ ※がいつの間にか・・・!?」との表示について、「※ジミとは加齢による肌の汚れやくすみを言います。」
と表示
していたが、当該記載は、一般消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされています。

本事案は、シミ消し効果の表現に対して景表法による不実証広告規制を用いた処分となっていますが、裏付けとなる合理的な根拠の有無にかかわらず、薬機法において認められない表現となっています。

一般化粧品において、メーキャップ効果に関すること以外の「シミ」「くすみ」に関する表現は、化粧品の効能効果の範囲を逸脱するかのような誤認を与えるため表現できません。
例えば、できてしまったしみをなくす(治療的)表現、老人性斑点のような色素沈着に関する表現、肌本来の色そのものが変化する(白くなる)旨の表現等は認められません。

また、「一番濃いシミも徐々に薄くなっています!」といった商品の効能効果に関する使用体験談の表現も認められません。

ただし、「くすみ」表現に関しては、くすんで見える要因を以下のように明確にし、化粧品の効能効果の範囲を逸脱しない場合は可能とされています。
(日本化粧品工業連合会 化粧品等の適正広告ガイドラインによる)

① 汚れの蓄積によるもの
② 乾燥によるもの
③ 古い角質層によるもの

《認められる表現の例》
a)乾燥などにより、肌の明度が一時的に低下し暗く見える状態
・乾燥によってくすんでみえる肌にうるおいを与え明るい印象へ導く
・くすみのもとになる古い角質層による汚れを洗い流す。
b)メーキャップ効果によるもの
・くすんだ肌を明るい肌へ仕上げるファンデーション
・気になるくすみをメークでカバー

《認められない表現の例》
・くすみを予防できるかのような表現
・内的要因や肌色変化によるくすみ表現
・シミ・ソバカスを防ぐことによるくすみ表現

本事案では、「目尻や頬のおばぁちゃんジミ」という表記に対して、「※ジミとは加齢による肌の汚れやくすみを言います。」という打消し表示を記載していますが、そもそも「シミ」に関して「肌の明度が一時的に低下し暗く見える状態」とは認められない可能性が高いと考えられます。

シミや美白に関する薬機法理解度をクイズ形式で解説している以下の記事もご参考ください。

薬事法NG広告クイズ「シミ・老廃物が垢になってポロポロ剥がれ落ちる」
http://blog.fides-cd.co.jp/article/238778777.html

薬事法NG広告クイズ「お肌が白くなるホワイトニング効果」
http://blog.fides-cd.co.jp/article/160039566.html

薬事法NG広告クイズ「美白効果で白く輝くお肌に!」
http://blog.fides-cd.co.jp/article/159944104.html

薬事法NG広告クイズ「天然由来成分で安心。○○○(成分)の紫外線による皮膚細胞の炎症も抑制する働き」(オーガニック美白美容液 化粧品)
http://blog.fides-cd.co.jp/article/404855577.html

《参考記事》

・シミ消し、痩身効果、二重価格、Growasの健食、化粧品、下着5商品に景表法措置命令(消費者庁 2019年3月28日)

・「シミ解消・軽減」「「今だけ!半額!」Xenaの「VCソープ」に景表法措置命令(消費者庁 2017年2月2日)

・景品表示法(優良誤認)の不実証広告規制。表示の裏付けとなる「合理的な根拠」の判断基準とは

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。