通販広告折込チラシ、商品内容不適正広告1割。その約6割が「化粧品」と「健康食品」(JADMA「2019年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)

公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)「広告適正化委員会」では、2019年に実施された通信販売広告実態調査の結果を発表しました。(※)
この調査は、通信販売取引改善を目的に2012年度から実施されています。これまでは、新聞折込チラシとテレビ通販CMを対象に実施されていましたが、2019年度はテレビ通販CMに代わって新たにインターネット広告に関する調査を行っています。

今回は、新聞折込チラシ調査の内容を紹介します。

≪調査結果のポイント≫
●主要6都市、折込件数1位は大阪。東京は大幅減
●折込件数の多い曜日は水曜日。月曜日は大きく減少
●「ホーム・家電」のチラシが減少するもトップ。「健康食品」「食品」が増加
●「小売」の事業者が全体の85.5%
●取引内容に関する不適正な広告表示は38.7%。「支払時期」が36.3%
●商品内容不適正広告「化粧品」が32.7%で最多、次いで「健康食品」が30.8%


【折込チラシの折込状況】
●主要6都市、折込件数1位は大阪。東京は大幅減
主要6都市エリア毎の折込件数は、1. 大阪(30.0%)、2. 札幌(20.1%)、3.名古屋(15.1%)4. 仙台(14.5%)、5.福岡(12.3%)、6.東京(8.1%)の順。全体で折込チラシの件数は前回2018年調査から119件減少し、中でも東京が93件減少し6都市中最下位になった。他方、増加したのは大阪27件、札幌は24件増加した。

●折込件数の多い曜日は水曜日。月曜日は大きく減少
曜日毎の折込件数は、水曜日が全体の29.3%と一番多く3割を占める。
次いで、火曜日の17.1%、土曜日15.6%、月曜日12.6%、木曜日9.8%と続く。一方、金曜日、日曜日は少ない。
全体の折込枚数が減少する中、水曜日の件数が前回18年度より16件増加。一方、月曜日は前回調査よりマイナス75件と大きく減少した。

●「ホーム・家電」のチラシが減少するもトップ。「健康食品」「食品」が増加
商品分類では、「ホーム・家電」29.1%、「健康食品」23.9%、「化粧品」20.1%、「食品類」18.3%となっている。
前回18年度との比較では、「ホーム・家電」が大幅に減少した(-79件、5ポイント減)。一方、増加したのは「健康食品」(+18件、5.2ポイント増)、「食品類」(+1件、2.6ポイント増)。

●「小売」の事業者が全体の85.5%
広告主の業態では、「小売」の事業者が全体の85.5%を占め、次に「メーカー」の展開する通販の折込チラシが13.2%。
前回18年度との比較では、それぞれの割合が1.2~1.3ポイント増加した。

【取引内容に関する不適正広告状況】
●取引内容に関する不適正な広告表示は38.7%。「支払時期」が36.3%
今回の取引内容の表示の調査では、主に「特定商取引法の記載事項」、「通常価格と限定価格」、「機能性表示食品・栄養機能食品」、「定期購入」の表示について検証・精査された。
600件中232件、38.7%が不適正表示となったが、一部箇所改善に留まる内容だった。
前回と比べると不適正件数割合が1.8ポイント増加した。
記載に不備があった事項では、「支払時期」が36.3%、「社名」27.7%、「送料」18.2%、「返品特約」13.3%と続く。全体的に前回調査から改善傾向にあるが、「送料」については不適正件数割合が15.8ポイント増加した。

【商品内容に関する不適正広告状況】
●商品内容に関する不適正な広告表示は約10%
今回の商品内容に関する広告表示については、主に「化粧品の効能効果」、「健康食品の効能効果」、「数値・データ」「個人体験談」の表示が検証・精査された。
600件中548件、91.3%が適正表示されていた。前回と比べると2.3ポイント増加し、改善されている。しかし依然約1割が不適正な表示となっている。
「表示に関する各種法令やガイドライン等」に抵触する恐れがあるもの、または消費者に不信感を与えかねない表示となっている。

●商品内容不適正広告「化粧品」が32.7%で最多、次いで「健康食品」が30.8%
商品内容に関する広告表示ついて、商品分野別に見ると不適正表示の割合は、「化粧品」32.7%が最も多く、次いで「健康食品」が30.8%、「食品類」が13.5%となっている。前回と比べると「化粧品」はマイナス20.3ポイントで改善しているが、「服飾雑貨」が5.5ポイント、「健康食品」は5.0ポイント増加している。

——-
本調査委員会では、不適正な表示を行っている通販各社に対する指導や、折込掲載新聞社への協力要請を行っています。特に「通販の関連法令に抵触する怖れのある広告」を行った通販会社に対しては、「改善の具体策」について書面による回答を依頼し、それに対する協力姿勢がなく、違法性・悪質性があり、消費者にとって多大な不利益やトラブルの発生が予測できる広告表示を再度行う場合には、JADMAから関係省庁などへ通報するとしています。

調査報告書では、「一部不適正な表示が見られ、改善が必要な広告」「関連法令に抵触するおそれのある広告」について具体的な審査広告事例が公表されています。
次回は、個別広告事例を解説します。


通信販売取引改善のための通販広告実態調査 (2019年度調査)
(公社)日本通信販売協会 広告適正化委員会 2020年6月
https://www.jadma.or.jp/pdf/2020/koukokujittai2019.pdf

<調査概要>
第1回調査:2019年9月1日から10月29日に折り込まれたチラシ(300件)
第2回調査:2019年10月30日から12月14日に折り込まれたチラシ(300件)
※同一表現チラシは1件とし、広告表現が異なる個別折込チラシが各300件となるまで収集。
実施エリア:主要都市である札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の6都市を選択
対象チラシ:各都市の発行部数トップ紙の朝刊に月曜日から日曜日まで折り込まれたものを収集。新聞に折り込まれる地域タブロイド紙の通販広告も対象。

《関連記事》
・通販広告折込チラシ、商品内容不適正広告1割。その約6割が「化粧品」(JADMA「平成29年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)

・通販広告折込チラシ、商品内容不適正広告「化粧品」が約5割、「健康食品」が約3割(JADMA「平成27年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)

・通販広告折込チラシ、不適正広告の多いエリアは福岡、業態ではメーカー系通販 (JADMA「平成26年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)

・求められる折込チラシの通信販売広告改善、商品不適切表示は約3割 (JADMA「平成25年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。