メーカー希望小売価格の廃止に気付かず、サンドラッグ、二重価格表示に景表法措置命令(消費者庁:2020年6月24日)

消費者庁は6月24日に、ドラッグストア(株)サンドラッグが供給する医薬品、食品等の価格表示に対し、景品表示法(有利誤認)の措置命令を行いました。

表示媒体は、日刊新聞の折込みチラシで、既に存在しない「メーカー希望小売価格」の二重価格表示が問題となりました。
サンドラッグによると、過去存在したメーカー希望小売価格(定価)が廃止されたことに気付かずそのまま掲載するなど、商品情報管理のメンテナンス不備が原因としています。

同社は2014年1月にも冷凍食品の「希望小売価格」による二重価格表示で、東京都から改善指示を受けています。

・ドンキ、サンドラックに改善指示。冷凍食品の二重価格表示 (東京都)
http://blog.fides-cd.co.jp/article/385913602.html

本事案から「希望小売価格」などを比較対照価格とする二重価格表示について、景表法の考え方をチェックしておきましょう。

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株式会社サンドラッグに対する景品表示法に基づく措置命令について
(2020年6月24日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_200623_01.pdf
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【違反内容】
対象商品:
「アース渦巻香ジャンボ50巻缶入」
「アテント消臭効果付きテープ式 M30枚背モレ・横モレも防ぐ」
「エアーマスク ネームホルダー」
「Mパック新潟仕込み 24枚」又は「Mパック新潟仕込み塩味24枚」
「お徳用ウインナー800g」
「三幸の堅焼柿の種醤油味」又は「三幸の堅焼柿の種 黒胡椒味」
「新ポリグリップS(75g)」又は「新ポリグリップ 無添加(75g)」
「スマイル40EXゴールド」
「HAPPYサイズポテトチップス うすしお味」又は「HAPPYサイズ ポテトチップス のり塩」
「ピザガーデン マルゲリータ」又は「ピザガーデン ベーコンピザ」
「ボリュームパックロースハム」又は「ボリュームパック ベーコン」
「ラカントS顆粒800g」
「アースレッド シリーズ 各種」

販売店舗:
36都府県の直営店117店

表示媒体・表示期間:
新聞折込チラシ
2019年7月~2020年1月

違反内容:
a) 例えば、「アース渦巻香ジャンボ50巻缶入」と称する商品について、「★1190円の品」、「498円 (税込)537円」及び「★印はメーカー希望小売価格(税抜)の略です。」と表示するなど、実際の販売価格を上回る「★」との記号を付した「メーカー希望小売価格」を併記することにより、あたかも、対象商品にはメーカー希望小売価格が設定されており、実際の販売価格が当該メーカー希望小売価格に比して安いかのように表示していた。

【表示例】

b) 例えば、「ピザガーデン マルゲリータ」又は「ピザガーデン ベーコンピザ」と称する商品について、「★298円の品」、「198円 (税込)213円」、「メーカー希望小売価格より33%OFF」及び「★印はメーカー希望小売価格(税抜)の略です。」と表示するなど、実際の販売価格を上回る「★」との記号を付した「メーカー希望小売価格」を併記することにより、あたかも、対象商品にはメーカー希望小売価格が設定されており、当該メーカー希望小売価格から表示された率を割り引いて当該商品を販売するかのように表示していた。

【表示例】

c) 例えば、「アースレッド シリーズ 各種」及び「メーカー希望小売価格より 45%OFF」と表示するなど、あたかも、対象商品にはメーカー希望小売価格が設定されており、当該メーカー希望小売価格から表示された率を割り引いて当該商品を販売するかのように表示していた。

【表示例】

実際には、対象商品にはメーカー希望小売価格は設定されていなかった。

本件に対する同社の「消費者庁による措置命令に関するお知らせ」において、違反表示の原因と再発防止策について次のように説明しています。

●本件発覚の経緯と対応
・新聞折込チラシにおいて、2019年7月から2020年1月に掲載した品目のうち13品目
に表記したメーカー希望小売価格が、掲載時点で既に存在しない事が2020年2月に判明した。
折込チラシへのメーカー希望小売価格掲載を既に取りやめている。

●原因
1)過去存在したメーカー希望小売価格(定価)が廃止されたことに気付かずそのまま掲載したこと
2)商品参考売価を『定価』と誤った認識で管理していたこと
等商品情報管理に付随したメンテナンス不備によるもの。

●再発防止策
・2020年4月より、データメンテナンスの定期的実施及びその管理の徹底強化を図る。
・景品表示法等、社内研修内容を改善のうえ更なる指導強化を図り、再発防止に努める。

消費者庁は、不当な価格表示についての景品表示法上の考え方を、以下のように示しています。

◆不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
(平成12年6月30日公正取引委員会 改定 平成28年4月1日消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf

希望小売価格に対する一般消費者の認識とは?
製造業者等により小売業者の価格設定の参考となるものとして設定され、あらかじめ、新聞広告、カタログ、商品本体への印字等により公表されているものであり、このことから、小売業者の販売価格が安いかどうかを判断する際の参考情報の一つとなり得るもの。

比較対照価格とする希望小売価格の要件:
「製造業者、卸売業者、輸入総代理店等、小売業者以外の者により設定され、あらかじめ公表されている価格」となります。
希望小売価格(参考小売価格)は製造業者等が設定する価格ですので、小売業者が勝手に設定をしてはいけません。

【希望小売価格を比較対照価格に用いる際、不当表示に該当するおそれのある価格表示(抜粋)】
1) 希望小売価格よりも高い価格
2) 希望小売価格(参考小売価格)が設定されていない場合(撤廃されている場合を含む)に、小売業者が設定した任意の価格
3) プライベートブランド商品について小売業者が自ら設定した価格
4) 製造業者等が専ら自ら小売販売している商品について自ら設定した価格
5) 特定の小売業者が専ら販売している商品について、製造業者等が当該小売業者の意向 を受けて設定した価格
6) 製造業者等が当該商品を取り扱う小売業者の一部に対してのみ呈示した価格
7) 販売する商品と同一ではない商品(中古品等を販売する場合において、新品など当該商品の中古品等ではない商品を含む。)の希望小売価格

今回の事案では、2)の点が問題となったと考えられます。

製造業者等が小売業者に対してのみ呈示している「参考小売価格」や「参考上代」等の名称の価格は、小売業者が比較対照価格に用いて二重価格表示を行うことは可能か?
小売業者の小売価格設定の参考となるものとして、製造業者等が設定したものをカタログやパンフレットに記載するなどして当該商品を取り扱う小売業者に広く呈示されている場合には可能。
(製造業者等が商談の際に当該商品を取り扱う小売店の一部の問い合わせに対して個別に呈示するような場合は含まない。)
ただし、希望小売価格以外の名称を用いるなど、一般消費者が誤認しないように表示する必要がある。

二重価格表示を行う際は、その比較対象価格がどのような価格であるのか、消費者が誤認しないよう注意が必要です。

更に詳しい解説は以下の記事をご確認ください。

【景表法】二重価格表示の注意点~希望小売価格~

また、 期間限定で行われるセールの際に用いる比較対照価格について、以下の記事もご参考ください。
【景表法】二重価格表示の注意点~セール時の価格表示~

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≪参考記事≫
・アマゾンに不当な二重価格表示で景表法措置命令!表示責任のポイントは?
(平成29年12月27日 消費者庁)

・「メーカー希望小売価格」「通常価格」による二重価格表示に注意!スーパーマーケット サンプラザの割引表示に景表法措置命令(消費者庁:2019年7月8日)

・セール時の二重価格表示に注意!イオン子会社「SPORTS AUTHORITY」のチラシに景表法措置命令

・寝具の店頭表示価格 販売実績のない二重価格に景表法措置命令!

・消費者が有利誤認したという結果は問わない。(有)ミート伊藤の特売日表示に景表法措置命令

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。