二酸化塩素による空間除菌製品、今回も根拠認められず。興和、中京医薬品、ピップ、三和製作所に景表法措置命令(消費者庁 2024年1月31日)

2023年末の共立電器産業とフォレストウェルの空気清浄機に続き、今回は二酸化塩素による空間除菌商品に対する景品表示法措置命令です。

・2023年度では1件目となる空間除菌製品の景表法措置命令。共立電器産業、フォレストウェル
(消費者庁 2023年12月22日)

1月31日、消費者庁は、雑貨の販売事業者興和(株)(名古屋市中区)、日用品雑貨の販売事業者(株)中京医薬品(愛知県半田市)とピップ(株)(大阪市中央区)、医薬品・健康器具・健康食品の販売事業者(株)三和製作所(東京都江戸川区)の4社が提供する二酸化塩素による空間除菌を標ぼうする商品の表示に対して、不実証広告規制(※)による優良誤認の措置命令を公表しました。
措置命令の発令日について消費者庁は、興和が1月30日、中京医薬品とピップが同29日、三和製作所が同26日としています。

空間除菌製品の表示に関する不実証広告規制による措置命令は、過去に多数出されており、いずれの事案も、空間除菌効果表示の合理的根拠について、消費者庁は同じ見解を示しています。
また、ピップにおいては、景表法5条3号指定告示によるステマ規制での処分ではありませんが、インスタグラムにおけるインフルエンサーによる表示も「表示内容を自ら決定している」として、違反対象表示とみなされました。

処分の概要と、空間除菌関連商品の菌・ウイルス除去効果の合理的根拠について確認します。

———-
二酸化塩素による空間除菌を標ぼうする商品の販売事業者4社に対する
景品表示法に基づく措置命令について(消費者庁 2024年1月31日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/036222/
———

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。

⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


【対象商品】
興和:
「ウイルス当番」(置き型)
中京医薬品:
「エアーマスク」(携帯型)
ピップ:
「ウィルリセット」(置き型)
三和製作所:
「二酸化塩素発生剤クロッツ空間除菌」(据え置き又は壁掛け型)

【表示媒体・表示期間】
興和:
商品パッケージ:2021年12月28日~2022年7月24日
「コーワ健康情報サイト」と称する自社ウェブサイト
2021年12月28日~2022年3月28日、2022年7月5日~同月24日
「ウイルス当番ブランドサイト」と称する自社ウェブサイト:2021年12月28日~2022年3月28日
中京医薬品:
商品パッケージ2022年4月22日~2023年9月30日
「イキイキ良品館」と称する自社ウェブサイト:2022年4月22日、2022年7月5日~2023年5月24日
「Air Mask® エアーマスク」と称する自社ウェブサイト:
2022年4月22日、2022年8月23日~2023年1月24日、2023年4月4日~8月1日
ピップ:
商品パッケージ:2022年4月21日~2023年4月30日
「ピップ製品情報」と称する自社ウェブサイト:2022年4月21日、2022年7月5日~2023年4月27日
「ピップウエルネス通販」と称する自社ウェブサイト:
2022年4月21日、2022年7月5日~2023年3月21日
「Instagram」と称するSNS内のアカウントの投稿〈9アカウント〉:
2023年4月10日、2023年7月27日~10月3日、2023年7月27日~9月29日

三和製作所:
商品パッケージ:2022年4月21日以降

【違反内容】
興和
表示内容(商品パッケージ)
例えば、「二酸化塩素の除菌パワー」、「身近にひそむウイルス・菌に」、「ウイルス・菌の除去」等と表示。
・「使用場所 リビング・玄関・寝室・キッチン・洗面所・トイレ・浴室など」
・「リビング」、「寝室」、「玄関」及び「キッチン」との記載と共に、これらの場所に設置された本件商品①から波紋が放出されるイラスト
・「使用の目安」として、「洗面所・トイレ等 1~3畳 約2ヵ月間」及び「リビング等 6~8畳 約1ヵ月間」と記載された表

あたかも、対象商品をリビングや玄関等の室内に設置すれば、商品から発生する二酸化塩素の作用により、記載された期間・場所において、室内空間に浮遊するウイルス又は菌が除去又は除菌される効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例: 商品パッケージ

中京医薬品
表示内容商品パッケージ):
例えば、「使用目安 60日」、「空気に反応しClO2を放出 ClO2の持つ酸化作用により除菌・消臭」等と表示。

あたかも、ネームホルダーを首から掛ける、ネームホルダーが付いた鞄を肩から掛ける、二酸化塩素発生剤が入った専用ケースをポケットに入れる等により身に着けて対象商品を使用すれば、商品から発生する二酸化塩素の作用により、二酸化塩素発生剤1袋につき60日間にわたり、身の回りの空間に浮遊する菌が除菌される効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例: 商品パッケージ

(消費者庁発表資料より抜粋)

ピップ
表示内容(商品パッケージ):
例えば、「ウイルス・菌を除去※1」、「二酸化塩素のチカラ」等と表示。
・「※イメージ図」との記載と共に、「リビング」との記載並びにソファー及びスタンドライトのイラスト、「寝室」との記載及びベッドのイラスト並びに「子ども部屋」との記載及び玩具のイラスト
・「ご使用の目安 6~8畳 約2ヶ月間 ※2」

あたかも、対象商品をリビング、寝室、子供部屋等の室内に設置すれば、商品から発生する二酸化塩素の作用により、約2か月間にわたり、室内空間に浮遊するウイルス又は菌が除去又は除菌される効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例: 商品パッケージ

(消費者庁発表資料より抜粋)

表示例: Instagram投稿

(消費者庁発表資料より抜粋)

三和製作所

表示内容(商品パッケージ):
例えば、「二酸化塩素発生剤」、「CLO2」、「クロッツ空間除菌」、「使用開始日より60日間有効」、「空間の細菌・ウイルス・悪臭を除去!」等と表示。

あたかも、対象商品を据え置き又は壁掛けにて設置して使用すれば、商品から発生する二酸化塩素の作用により、60日間にわたり、室内空間において、室内空間に浮遊するウイルス又は菌が除去又は除菌される効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例: 商品パッケージ

(消費者庁発表資料より抜粋)

実際:
消費者庁は、4社に対し当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、4社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

「空間除菌製品」の効果表示に求められる実使用空間における実証

「空間除菌製品」に関しては、過去に複数の景品表示法の措置命令が出されています。
二酸化塩素を噴霧したり、オゾンやマイナスイオンを発生させる、首下げ型や置き型などの商品で、いずれの事案においても不実証広告規制を用いた処分により表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められずに優良誤認と認定されています。
具体的には、空間除菌効果において、主に、「密閉された無人の試験室空間での試験となっており、表示された実使用空間と条件の異なる試験空間で行われた除菌やウイルス不活化などの試験結果」を根拠としているケースが多くみられます。
本件においても、4社が提出したデータは特殊な密閉空間における二酸化塩素の濃度を示したもので、これら密閉空間での試験結果が、商品が訴求している室内空間、換気などで空気が流れているリビングなどの実際の使用空間における効果の根拠とは認められませんでした。

消費者庁は、一貫して同じ見解を示しています。

実生活における空間は人が動くことで埃も立つし、換気や湿度・温度、気候条件などがあり、密閉空間とは異なり、薬剤の濃度を一定に保つのは困難であり、身の回りに浮遊するウィルスを相当程度減らすことを実証するのは難しい。
二酸化塩素のような薬剤を空間に噴霧してウイルスや菌を消毒、ないし除菌するという評価方法は日本でも海外でも、基本的に確立されていないと理解している。

消費者庁も「二酸化塩素が有するウイルスや菌の除去効果」について、異議を唱えているわけではありません。表示に対する合理的な根拠として、試験方法の妥当性を問題視しています。
合理的根拠と認められるためには、密閉空間での実証試験ではなく、実使用環境で、商品がどのくらいの濃度を放流するものか、どのくらいの濃度があれば菌やウィルスが死ぬのか、を示す必要があるとしています。

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また、空間除菌製品の効果について「表示の裏付けとなる合理的な根拠」として認めない消費者庁の判断に対して、事業者による措置命令の取消しや差し止め請求訴訟も行われましたが、いずれも国(消費者庁)の勝訴となっています。
申立てを行ったレック(株)に対しては、2021年8月18日、申立てを却下する決定がなされ、2023年2月2日、東京地方裁判所において原告の請求を棄却する判決が確定しています。

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大幸薬品の「クレベリン」事案においても、差し止め訴訟は敗訴となっており、消費者庁の見解が司法においても支持されていることとなります。
・クレベリン「置き型」にも景表法措置命令。空間除菌効果表示の合理的根拠、消費者庁に軍配
(消費者庁 2022年4月15日)

空間除菌商品広告に対する消費者への注意喚起

消費者庁は措置命令公表と同日、「空間除菌商品の広告表示に注意!!」とする啓発チラシの中で、次のように消費者への注意喚起も行っています。

二酸化塩素を利用した空間除菌商品について、「密閉空間(換気のない実験室等)」での試験結果に関する資料を根拠として、置くだけで空間除菌等の効果が得られるかのような表示を行っているものが見受けられます。
二酸化塩素を利用した空間除菌商品は換気、湿度等の影響を受けると考えられるため、仮に密閉空間で効果が認められたとしても、実際に使用される場所(家屋内の部屋、外出先等)では、表示どおりの効果が得られない可能性がありますのでご注意ください。

二酸化塩素による空間除菌を標ぼうする商品に関する注意喚起について
(消費者庁 2024年1月31日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/036242/

以下の記事では、本件4社および過去の空間除菌製品の表示に対する措置命令事案から、実使用環境での空間除菌効果を評価する試験が不可能である場合の、空間除菌製品広告表示で留意すべきポイントについて考察します。

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《参考記事》
・「クレベリン」の大幸薬品に景表法措置命令。「空間除菌製品」の除菌効果表示の合理的根拠に波紋(消費者庁 2022年1月20日)

・コロナ予防効果広告、GSDのマイナスイオン発生器に景表法措置命令(消費者庁 2021年3月31日)

・「滝風イオンメディック」のアップドラフトに景表法措置命令。ウイルス除去、空間除菌、疾病予防効果に優良誤認(消費者庁:2021年6月17日)

・「消費者庁公認」を謳った首下げ型の空間除菌製品。ドラッグストアチェーンのププレひまわりの店頭POP広告に景表法措置命令(消費者庁 2021年6月11日)

・今年度5社目。レッドスパイスの首下げ空間除菌製品に景表法措置命令。除菌効果への打消し表示認められず(消費者庁 2021年3月18日)

・Nature Link、萬祥、首下げ空間除菌製品2社の表示に景表法措置命令。分かれる両社の対応(消費者庁 2021年1月15日)

・Salute.Lab、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。実証データは、訴求内容に適切に対応を(消費者庁 2020年12月22日)

通販事業者 東亜産業、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)

大幸製薬は、2014年3月の空間除菌製品17社に対しする一斉処分において、クレベリンシリーズの「携帯型」「据え置き型」商品の表示に対する措置命令を受けています。

・「空間除菌剤」17社、景表法措置命令。大幸薬品の新たな広告も問題視(消費者庁 平成26年 3月27日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。