アフィリエイト広告への処分続く。ヴィワンアークスの育毛剤の発毛・白髪改善効果表示に景表法措置命令(東京都 2024年10月10日)

東京都が、10月10日、育毛剤について不当表示を行っていた通信販売事業者(株)ヴィワンアークス(東京都渋谷区)に対し、景品表示法措置命令を行いました。
SNS上のバナー広告から遷移したアフィリエイト広告に対するもので、不当表示認定されたのは、届出の範囲を著しく逸脱した発毛効果や白髪改善し黒髪が生える効果表示についての不実証広告規制(※)による優良誤認です。

ヴィワンアークス社の臧懐剛社長は、機能性表示食品『メラット』の不当表示おいて、2023年12月7日に消費者庁から措置命令を受けた(株)ハハハラボの代表取締役も務めていました。
『メラット』でも本件同様、アフィリエイトサイトにおける、機能性表示食品としての届出の範囲を著しく逸脱した痩身効果表示について、不実証広告規制による優良誤認認定がなされています。

・続く、機能性表示食品4事例目の景表法措置命令。ハハハラボ「メラット」、逸脱表示とNo.1表示(消費者庁 2023年12月7日)

今回の処分の留意ポイントです。

  • 広告代理店やアフィリエイターに表示内容を丸投げし、広告の内容を把握していない場合も、広告内容の決定を委ねており広告主が景品表示法上の表示責任を負う
  • 発毛効果の承認を受けた医薬部外品においても、根拠の認められた効能効果の範囲を逸脱した広告表現は認められない
  • 強調表示と矛盾する内容や、目立たない表示方法の打消し表示は、打ち消し効果を認められない

処分の概要とアフィリエイト広告規制のポイントについて確認します。

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景品表示法に基づく措置命令
SNS上のバナー広告から遷移したアフィリエイト広告により育毛剤について不当表示を行っていた通信販売事業者 (東京都 2024年10月10日)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/10/10/12.htm
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(※1)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


違反事業者
株式会社ヴィワンアークス

違反概要
【対象商品】
「MIHORE(ミホレ)」と称する医薬部外品
【表示媒体・期間】
アフィリエイトサイト:
2023年11月2日~29日、12月1日~7日、12月11日~22日

【違反内容】
アフィリエイトサイトの表示例
・「医学的に効果立証済みなので、効果が出るのは当たり前」との記載と共に、「初日」、「3日後」、「10日後」と徐々に毛髪が濃くなっていく頭頂部の画像を掲載。

(東京都公表資料より引用)

・「〝根本ケアができる”からこそ、ミホレに乗り換える人が続出しているんですね」、「白毛ケアもばっちり」と記載し「57歳」と題し、白髪の頭頂部の画像に「白髪が多い人」と付記した画像及び黒髪の頭頂部の画像に「白髪ケア実践」と付記した画像を並べて掲載。
「※イメージ※別人の比較」と記載。(赤枠部分)

(東京都公表資料より引用)

・「国が認めら女性用育毛剤が即完売」」と記載すると共に、本件商品画像を掲載。「ノーベル賞候補筆頭!国が認めた「塗る女性ホルモン」がすごい」と記載。

(東京都公表資料より引用)

あたかも、「MIHORE(ミホレ)」を使用することで、商品に含まれる成分の作用により、短期間で、外見上視認できるまでに、薄毛の状態が改善されるほどの発毛効果又は白髪の状態が改善し、黒髪が生える効果を得られるかのように示す表示等を行っていた。

実際:
両社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、両社は、書面を提出しましたが、表示の裏付けとなる合理的な根拠とは認められないものだった。

効果承認を受けた医薬部外品でも、根拠なく効能効果の範囲を逸脱した広告表現はNG

薬機法上、化粧品においては標榜が認められない発毛効果ですが、医薬部外品として承認を得た場合は、その承認の範囲内での効果を標榜することができます。しかし、ヴィワンアークスで表示されたような「短期間で、外見上視認できるまでに、薄毛の状態が改善されるほどの発毛効果又は白髪の状態が改善し、黒髪が生える効果」が実証されたものではなかったことから、不実証広告規制による優良誤認表示とみなされました。
なお、「※イメージ」、「※スタイリング効果」、「※個人の感想であり効果効能を保証するものではありません」等の打消し表示が記載されていましたが、強調表示と矛盾しており、打消し表示の文字と背景との区別がつきにくく視認性に問題があり、打消し効果は認められていません

東京都では、2023年3月にもシワ改善効果を標榜する医薬部外品について、「極めて短い時間で、目や口の周辺等について、いわゆる美容医療と同様のシワ改善効果を得られるかのように示す表示」に対して不実証広告規制による措置命令を行っています。
・アフィリエイト、広告代理店に決定を委ねた場合の表示責任。ツインガーデンの痩身サプリとエムアンドエムのシワ改善医薬部外品に景表法措置命令(東京都 2023年3月28日)

広告代理店やアフィリエイターに広告内容の決定を委ねていた場合も広告主に表示責任

東京都の公表によると、「同社は、広告代理店やアフィリエイターに作成させた広告表示の内容を十分に把握しておらず、自らの表示責任を否定していたが、広告代理店等に広告内容の決定を委ねていた場合であっても、基本的に景品表示法上の責任は広告主にある」としています。
アフィリエイト広告は、広告主がアフィリエイト広告の表示内容の決定に関与している場合だけでなく、広告主がアフィリエイト広告の作成を依頼する場合に、アフィリエイターに広告主からの具体的な指示がなかったとしても、「表示内容の決定を委ねている」として、広告主が行った表示とされます。

2022年6月29日に一部改訂となった、景品表示法26条「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」では、広告主がASPやアフィリエイターに対して作成する表示等に不当表示が行われないよう、管理上の措置を講じることの具体的な指針が新たに追加されました。

アフィリエイト広告で広告主の表示とみなされないケースは?

一方、アフィリエイト広告で広告主の表示とみなされないケースとしては、例えば、広告主とアフィリエイターとの間で表示に関する情報のやり取りが一切行われていないなどとされていますが、本件についてはそのような実態は認められていません。
広告主が「アフィリエイターやアフィリエイトプロバイダに表示内容を丸投げ」した場合について、「アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるもの」には当たらないとしています。

なお、アフィリエイターはアフィリエイトプログラムの対象となる商品・サービスを自ら供給する者ではないので、景品表示法で定義される「表示」を行う者には該当せず、規制対象にはなりません。(広告主と共同して商品・サービスを供給している場合を除く)
ただし、令和5年法改正により直罰規定(48条)(令和6年10月1日施行)が導入され、広告代理店やアフィリエイター等も共犯関係が認められれば、刑事罰による罰則(100万円以下の罰金)の対象となる可能性はあります。

SNS等に表示される不当なネット広告への監視対応力を強化

東京都では、アフィリエイト広告による不当表示に対する措置命令が続いています。
・アフィリエイト、広告代理店に決定を委ねた場合の表示責任。ツインガーデンの痩身サプリとエムアンドエムのシワ改善医薬部外品に景表法措置命令 (東京都 2023年3月28日)

・東京都も痩身系機能性表示食品ヘルスアップとニコリオに景表法措置命令。SNS経由のアフィリ広告に注意 (東京都 2024年3月27日)

令和5年7月には、「東京デジタルCATS (Clean Advertising Team of Specialists)」と命名した弁護士やWEB広告専門家等による外部の専門家から助言を得る制度を導入し、SNS広告への調査方法等について専門的な見地からの助言を受ける取り組みを行っています。
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不当なインターネット広告への対応力を強化します!
– 「東京デジタルCATS」始動! –
(東京都 2023年8月25日)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/torihiki/hyoji/cats
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今回の措置命令は「東京デジタルCATS」からSNS広告への調査方法について助言を受けての執行となったとしています。
今後も厳しい法執行が予想されます。

アフィリエイト広告に対しては、景品表示法の適用などに関する考え方として「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」と、景品表示法26条「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の一部改訂が公表されています。
アフィリエイト広告等に限らず、広告主は、不当表示の未然防止等のため、広告の出稿前後の表示内容の確認、表示内容の根拠となる資料の保管など、必要な管理上の措置をしっかりと講じることが重要です。

・広告主に課されるアフィリエイト広告の適正管理。ステマ規制も示される(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)

《関連記事》
・埼玉県、ダイエットサプリ通販のニコリオに景表法措置命令と特商法業務停止命令。アフィリエイトも注意! (埼玉県 2020年3月31日・4月1日)
・T.Sコーポレーション男性用育毛剤のアフィリエイト広告に、消費者庁による初の景表法措置命令 (消費者庁 2021年3月3日)
・アフィリエイトに加えてインスタ投稿が違反対象表示に。アクガレージとアシストの豊胸サプリに景表法措置命令(消費者庁 2021年11月9日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。