例外規定が表示されず。有料老人ホーム運営のHITOWAケアサービスに景表法措置命令(消費者庁:平成30年7月6日)

7月3日、消費者庁は有料老人ホームを運営する事業者HITOWAケアサービス(株)に対し、「イリーゼ」と称する有料老人ホームで提供するサービスの表示について、景品表示法違反の措置命令を行いました。
同法第5条3号(有料老人ホームに関する不当な表示第6項)によるものです。

パンフレットに「終(つい)の棲家(すみか)として暮らせる重介護度の方へのケア」などと記載していましたが、実際には、入居者の行動が他の入居者又は自社の従業員に危害を及ぼすおそれがある場合など、イリーゼにおける通常の介護方法などでは対応が困難な場合は契約を解除するといった例外規定を設けていました。

———-
HITOWAケアサービス株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 平成30年7月3日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180703_0001.pdf
———



●違反概要
【対象役務】

「イリーゼ」と称する有料老人ホームで提供するサービス

【表示媒体・期間】
パンフレット(全国106か所)
平成28年9月11日~平成30年6月30日までの間

【違反内容】
表示内容:

「終の棲家として暮らせる重介護度の方へのケア」「寝たきりなど要介護度が重い方もお過ごしいただくことができます。ご希望の方には、医療機関と連携しご家族様のお気持ちに寄り添いながら看取り介護にも対応しております。」と記載していた。

実際:
入居者の行動が他の入居者又は自社の従業員の生命若しくは身体に危害を及ぼし又はその切迫したおそれがある場合であって、イリーゼにおける通常の介護方法又は接遇方法ではこれを防止することができないときは、当該入居者との入居契約を解除することがあり、入居者の状態によってはイリーゼに終身にわたって居住し、又は介護サービスの提供を受けられない場合があるにもかかわらず、そのことが明りょうに記載されていなかった。

【表示例】

報道によると、以下のように報じています。

契約時の重要事項説明書には、例外規定が記載されており、同社によると、過去にこうしたケースでの解約はないという。
例外示さず「終身居住」=老人ホーム運営会社が不当表示-消費者庁
(時事通信ニュース 2018/7/3)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018070300961&g=soc

サービス内容において重要な例外規定は、その強調表示と一体になったものとして広告物に表示される必要があります。

景品表示法第5条第3号の規定に基づく告示である「有料老人ホームに関する不当な表示」(平成16年公正取引委員会告示第3号)は、一般消費者が有料老人ホームを選択する時点において重要な判断要素となると考えられる以下の事項について、制約事項があるのにそれが明りょうに記載されていない場合や、表示の内容が明らかにされていないものについて、不当表示として規定しています。

(1)土地又は建物についての表示
(2)施設又は設備についての表示
(3)居室の利用についての表示
(4)医療機関との協力関係についての表示
(5)介護サービスについての表示
(6)介護職員等の数についての表示
(7)管理費等についての表示

本件については、(3)居室の利用についての表示の第6項に抵触するものです。

6 有料老人ホームにおいて、終身にわたって入居者が居住し、又は介護サービスの提供を受けられるかのような表示であって、入居者の状態によっては、当該入居者が当該有料老人ホームにおいて終身にわたって居住し、又は介護サービスの提供を受けられない場合があるにもかかわらず、そのことが明りょうに記載されていないもの

「有料老人ホームに関する不当な表示」(平成16年公正取引委員会告示第3号)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_19.pdf

以下のガイドラインにて、さらに具体的に記載されていますので、ご参照ください。
「有料老人ホームの広告等に関する表示ガイドライン」
http://www.yurokyo.or.jp/system/pdf/20150708_01.pdf

≪参考記事≫

・イオンライフ、葬儀サービスの「追加料金不要」表示に景表法措置命令。「追加料金」請求4割(消費者庁:平成29年12月22日)

・ガリバー運営会社のIDOM、自動車保証の表示に景表法措置命令。打消し表示に注意!

・FREETELのSIMサービス、「業界No.1」「通信料0円」表示に優良・有利誤認の景表法措置命令。打消し表示に注意を(消費者庁:平成29年4月21日)

・打ち消し表示無効。モデル写真と実質料金に乖離。着物レンタル事業者のDM用カタログに景表法措置命令

===================================
◆フィデスの広告法務コンサルティング◆
消費生活アドバイザーが、貴社の広告コンプライアンス
体制構築をサポートします。
詳細はこちら
===================================

————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの更新情報を、ダイジェストでお届けしています。
登録はこちら
————————————————————

関連記事

  1. 「いわゆる健康食品」の暗示的広告表現に対する消費者庁の判断。「アスタキ…

  2. 続く除菌剤の景表法措置命令。サプリメント・ワールド、新型ウイルス除去、…

  3. 返金計画示されず トクホ取消の日本サプリメントに景表法課徴金納付命(消…

  4. 糖質カット炊飯器の販売事業者4社に景表法措置命令。みせかけの糖質低減率…

  5. ファクトリージャパン、整体の「期間限定」割引キャンペーン表示に景表法措…

  6. クレベリン「置き型」にも景表法措置命令。空間除菌効果表示の合理的根拠、…

最近の記事

2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。