りらいあ事件から9カ月。東電EP電話勧誘販売に特商法違反業務停止命令(6カ月)(消費者庁 2021年6月25日)

消費者庁は、東京電力の電気及びガスの小売り部門の電話勧誘販売事業者、東京電力エナジーパートナー(株)に対して、特定商取引法に基づく業務停止命令(6か月)と指示を行いました。

違反の内容は、「勧誘目的不明示」、「不実告知」及び「事実不告知」となっています。
同社は、委託業者を通じて電話勧誘する際、電気だけの契約者に対してガス会社の契約変更の勧誘が目的であることを明確に告げなかったり、他社に乗り換えた顧客に対して同社と電気とガスをまとめて契約すれば、特定の事業者の料金より必ず安くなるかのようなウソの説明を行っていました。

同社は2020年9月にも、電話営業の委託先である「りらいあコミュニケーションズ(株)」による不適切な営業行為により、電力・ガス取引監視等委員会からの業務改善勧告を受け、再発防止に向けた取り組みを行っていたところでした。

違反の概要と東電EPの取組について、また、通販事業者がアウトバウンド電話で顧客にセットで商品をお勧めする際の留意点について2回に分けてお伝えします。


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電話勧誘販売業者【東京電力エナジーパートナー株式会社】に対する行政処分について
(消費者庁 2021年6月25日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/024736/
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【対象事業者】
東京電力エナジーパートナー (東京都中央区)

【業務内容】
電気及びガスの小売供給(電話勧誘販売)

【違反内容と処分の原因となる事実】
(1) 勧誘目的等の明示義務に違反する行為(勧誘目的不明示)(特定商取引法第16条)
東電EPは、遅くとも平成30年6月以降、東電EPと電気小売供給の契約中の相手方に対し、「ご契約いただいております料金プランについてご連絡をいたしました。」などと、あたかも契約中の電気小売供給契約についての連絡事項の伝達のために電話したかのように告げるのみで、その電話が本件ガス小売供給契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げていない。

(2) 役務の対価についての不実告知(特定商取引法第21条第1項第2号)
東電EPは、令和元年11月以降、「従来プランと比べて、毎年1,200円お安くすることができます。」などと、あたかも、電気とガスの小売供給を東電EPとまとめて契約すれば、その電気料金は、消費者が契約中の当該特定の事業者の電気料金と比較して、一律に年間1,200円程度安くなるかのように告げているが実際にはその事実はなかった。

(3) 役務の対価についての事実不告知(特定商取引法第21条第1項第2号、同上第2項)
実際には、電気の月間使用量が300kWhを超えると、東電EPの料金プランの電気及びガスの当該月の料金の総額の方が、消費者が契約中のある特定の事業者の料金プランの総額料金よりも高くなることが一般的に起こるにもかかわらず、
東電EPは、遅くとも平成31年4月以降、「弊社では電気とガスの両方ともお安くご利用いただけるようになったので」、などと、電気とガスの小売供給を東電EPとまとめて契約すれば、電気及びガスの料金の総額が、消費者が契約中の当該特定の事業者の料金よりも安くなる旨を強調して告げるのみで、故意に当該事実を告げていない。

※上記(2)(3)の違反事実は、少なくとも、従前東電EP(東電EP設立前の東京電力株式会社も含む。)と電気小売供給契約をしていたことのある相手方で、勧誘時には他の事業者と電気及びガスの小売供給契約をしている者に対して認められるもの。
※上記(3)の違反事実は、少なくともある特定の事業者の電気及びガスの料金プランとの比較において認められるもの。

【処分の内容】
(1) 業務停止命令
内容:
電話勧誘販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
1)同社の行う電話勧誘販売に関する役務提供契約の締結について勧誘すること。
2)同社の行う電話勧誘販売に関する役務提供契約の申込みを受けること。
3)同社の行う電話勧誘販売に関する役務提供契約を締結すること。
期間:
2021年6月26日から2021年12月25日まで(6か月間)

(2)指示
前記違反行為の発生原因について検証し、違反行為の再発防止策及び社内のコンプライアンス体制を構築する。
これを同社の役員、従業員に、業務停止命令に関する業務を再開するまでに周知徹底すること。
本件役務提供契約の相手方に、業務停止命令及び本指示の内容を消費者庁のウェブサイトに掲載し、文書により通知すること。

●小売全面自由化以降、増加する電力・ガス契約の消費者相談と消費者庁の対応
2016年に電力の小売全面自由化、2017年にはガスの小売全面自由化となった以降、「勝手に電気の契約先を変更されていた」、「大手ガス会社を名乗り割引プランを勧誘されたが契約先が不明だ」等の電力・ガスの小売に関する消費者相談が増加し続けています。


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電力・ガスの契約内容をよく確認しましょう
(国民生活センター 2020年12月22日:公表)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20201222_1.html
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過去には、東京電力以外にも電力・ガスの小売事業者の電話勧誘販売に対する特商法違反の処分が出され、消費者に対しての注意喚起として「電力自由化により 電気料金が安くなる などの勧誘に要注意!!」のチラシが公表されています。

・コールセンターのアウトバウンド営業に注意!ガス契約先変更の電話勧誘販売事業者に特商法違反で業務改善指示(東京都 2018年2月1日)

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電話勧誘販売業者【あくびコミュニケーションズ(株)】に対する行政処分
(消費者庁:2019年4月26日)
特定商取引法違反の電話勧誘販売業者に対する業務停止命令(6か月)及び指示並びに当該業者の代表取締役等に対する業務禁止命令(6か月)について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/release/2019/pdf/release_190426_0001.pdf

「電力自由化により 電気料金が安くなる などの勧誘に要注意!!」チラシの公表について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/release/2019/pdf/release_190426_0002.pdf
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このような状況を踏まえて、消費者庁は昨年6月にすべての電力小売り事業者に対して、業務委託先や関係会社も含めて法令順守の徹底を要請していました。

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小売電気事業者に対する特定商取引に関する法律及び関係法令に係る重点的な点検について(要請)
(消費者庁 2020年06月17日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/020279/
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次回は、東京電力EPの過去の法令違反とコンプライアンス対応状況と、通販事業者がアウトバウンド電話で営業する際の留意点についてお伝えします。

・東電EPの不適切電話勧誘販売にみる委託先コールセンター管理の難しさと、通販アウトバウンドの留意ポイント

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。