続く「空間除菌製品」の景表法措置命令。大作商事とイトーヨーカ堂で異なる対応(消費者庁 2022年2月3日)

措置命令に対して異なる2社の対応

同一商品でありながら、措置命令に対する2社の対応は異なるものです。

命令を受けてイトーヨーカ堂は同社ホームページに、「お詫びとお知らせ」を掲載し、「景品表示法を始めとする法令遵守に関する社内研修やモニタリング体制の一層の強化・充実を進め、再発防止に努めてまいります」としています。
違反認定された表示行為も8月20日以降取りやめており、取りやめの命令は下りていません。

お詫びとお知らせ(イトーヨーカ堂2022年2月3日)
https://www.itoyokado.co.jp/__resources__/605934fb-612d-445d-ab7b-f225162d5335.pdf

一方、大作商事は、今回の措置命令を不服として、命令が発出された2月3日付で会社HPに文書を公表し、次のように本件の経緯と今後の対応を説明しています。

2007年に同品の旧型品について、当時の景品表示法の所管機関である公正取引委員会事務総局取引部景品表示監視室より、広告表示に関する調査を受けた。
提出した試験方法及び取得された試験データは根拠資料として妥当性が認められ、措置命令は出されなかった。
公正取引委員会から指導を受けた表示方法に従い、現在まで広告表示を行ってきた。

07年当時から現在までに関連法規制とガイドラインの変更は無く、限定された空間の空気清浄を目的とした小型、携帯型の製品についての「確立された試験方法」は2007年当時も現在も存在していない。
しかしながら、2007年に提出した根拠資料は妥当性が認められ、今回も同種の根拠資料を提出したにも関わらず本措置命令が出された。
消費者庁に対して説明を求めたが、「2007年当時とは組織が違うので分からない」との回答。

2021年1月に本製品に類似した他社製品について、消費者庁から措置命令が出された際、本製品の広告表示において景品表示法違反がなされていないかを消費者庁へ自主的に相談したが、個別の表示内容に対する調査、検証は受け付けられず、関連法規、ガイドラインを確認して注意するようにと指示を受けるにとどまった。

今後の対応については法的措置を取ることも念頭に慎重に検討する。

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「ピュアサプライ(PS3WT)に関するお知らせ」
(大作商事(株)2022年2月3日)
https://www.daisaku-shoji.co.jp/20220203.html
———————

また、措置命令の発出された時点においても違反認定された表示を継続しており、同社への命令文では違反表示行為の取りやめを求めていましたが、その後、違反対象表示部分は削除されています。

表示例: 自社ウェブサイト(2022年2月8日時のキャプチャ画面)

公取から消費者庁移管後で違反認定基準は変わったのか

大作商事が07年に公取に提出した根拠資料は妥当性が認められたにもかかわらず、今回、消費者庁は妥当性を認めず、措置命令を下しました。
前回と今回で違反認定基準にどのような変化があったのでしょうか。

次回の記事では、景表法の違反認定基準の変化について解説します。
・大木製薬とCLO2 Lab「空間除菌製品」の景表法措置命令にみる、除菌効果表示根拠の合理性とは

新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った「空間除菌剤」に関しては、首下げ型の製品や室内用の据置型の製品に対して複数の措置命令や行政指導が出されています。

・「クレベリン」の大幸薬品に景表法措置命令。「空間除菌製品」の除菌効果表示の合理的根拠に波紋(消費者庁 2022年1月20日)

・大木製薬とCLO2 Lab「空間除菌製品」の除菌効果表示に景表法措置命令。打消し表示に効果なし(消費者庁 2021年12月17日)

・「消費者庁公認」を謳った首下げ型の空間除菌製品。ドラッグストアチェーンのププレひまわりの店頭POP広告に景表法措置命令(消費者庁 2021年6月11日)

・今年度5社目。レッドスパイスの首下げ空間除菌製品に景表法措置命令。除菌効果への打消し表示認められず(消費者庁 2021年3月18日)

・Nature Link、萬祥、首下げ空間除菌製品2社の表示に景表法措置命令。分かれる両社の対応(消費者庁 2021年1月15日)

・Salute.Lab、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。実証データは、訴求内容に適切に対応を(消費者庁 2020年12月22日)

通販事業者 東亜産業、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)

・携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導について(消費者庁 2020年5月15日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/019867/

今後も、新型コロナウィルス関連広告に対する法執行は続くことが予想されます。
商品の効能効果を謳う表示に対する合理的根拠や打消し表示の考え方について、しっかりと理解し準備しましょう。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。