新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った「空間除菌製品」について、今回は「マイナスイオン発生器」に対する景品表示法の措置命令です。
3月31日、消費者庁は電気機械器具等の製造販売業(株)GSD(山形県新庄市)に対し、同社が販売していたマイナスイオン発生器のパンフレットや自社ウェブサイト、ブログの表示に、景品表示法違反の措置命令を行いました。
消費者庁及び公正取引委員会事務総局東北事務所の調査による事案です。
今回の違反も優良誤認で、不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められませんでした。また、「感染予防を保証するものではない」旨の打消し表示も、打消し効果が認められませんでした。
内容を確認します。
———-
株式会社GSDに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2021年3月31日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/020408/
———
(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
【対象商品】
「ION MEDICO-RELA(イオン メディック オーリラ)」と称する商品の
「GSD-208」と称する型式(オーリラ208)、「GSD-209N」と称する型式(オーリラ209N)
【表示媒体・表示期間】
パンフレット:2019年4月1日~2020年2月29日
「ION MEDICO-RELA」と称する自社ウェブサイト:2020年2月14日
「Ameba」における「PockyBear」と称する自社ブログ:2020年2月14日
【違反内容】
表示内容:
パンフレット:
あたかも、対象2商品を使用すれば、商品によって発生するマイナスイオンの作用により、オーリラ208は50畳の空間、オーリラ209Nは20畳から30畳の空間において、空気中に浮遊するウイルス、菌、ダニの死骸やフンなどのアレルギー物質を分解し不活性化する効果、浮遊するインフルエンザウイルスを99.9%除去する効果、浮遊するカビ菌の分解、除去及び付着したカビ菌の成長の抑制をする効果、並びに衣類等の付着臭を分解、除去する効果が得られるかのように示す表示をしていた。
表示例:パンフレット
自社ウェブサイト:
あたかも、オーリラ208のマイナスイオンの発生量は2000万個/㎝³以上、オーリラ209Nのマイナスイオンの発生量は1000万個/㎝³以上であって、対象2商品を使用すれば、商品によって発生するマイナスイオンの作用により、オーリラ208は50畳の空間、オーリラ209Nは20畳から30畳の空間において、PM2.5、花粉、黄砂等を分解する効果、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ菌、サルモネラ菌及びレジオネラ菌を不活性化する効果、ウイルス感染を予防する効果、浮遊するインフルエンザウイルスを99.9%除去する効果、脱臭効果、並びに新型コロナウイルス感染を予防する効果が得られるかのように示す表示をしていた。
表示例:自社ウェブサイト
自社ブログ:
あたかも、対象2商品を使用すれば、商品によって発生するマイナスイオンの作用により、新型コロナウイルスを不活性化する効果、空気中に浮遊するウイルス、菌、ダニの死骸やフンなどのアレルギー物質を分解し不活性化する効果、浮遊するインフルエンザウイルスを99.9%除去する効果が得られるかのように示す表示をしていた。
表示例:自社ブログ
実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
報道では、
同社は実在する分析機関でインフルエンザウイルスの空中浮遊菌を99.9%除去することが証明されたとする書類などを公取委に提出。
消費者庁と公取委はインフルエンザウイルスを付着させたフィルターを1辺60センチの箱に入れ、その中で製品を稼働させた試験で、広い部屋で使われる実際の使用状況とかけ離れており、合理的根拠にならないと判断した。
マイナスイオンを発生させていたかや、その効果については判断していない。
と報じています。
●打消し表示について
・「注)全ての有害物質ウィルスを分解・除去できる訳ではありません。」
・「実際のイオン個数と生息時間や除菌効果は、お部屋の状況や使い方によって異なります。常時発生しているニオイ成分(建材臭・ペット臭等)はすべて除去できるわけでは有りません。」
・「浮遊ウィルス等を分解・除去する機能はありますが、これによって無菌状態が作られるものではありません。また、感染予防を保証するものでもありません。」
等と表示していたが、当該表示は、小さな文字で記載されているものであること等から、一般消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされています。
(「表示例:パンフレット」の赤枠部分)
——
●措置命令に対するGSDの対応
GSDは4月1日、今回の措置命令に対して、「直ちに受け入れられるものはない。今後の法的措置も視野に入れ、対応を検討する」とする声明を発表。「あくまで当社の一定期間において用いていた広告の表示を問題とされたものにすぎず、また当社製品の性能について問題とされたものではない」と自社ウェブサイト上で公表しています。
(株)GSD (2021年4月1日)
「消費者庁からの措置命令に関しまして」
https://www.gsd-jp.com/wp/wp-content/uploads/2021/04/210401%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9final.pdf
新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った「空間除菌剤」に関しては、首下げ型の製品について2020年度中に5社に対して措置命令が出されていますが、室内用のマイナスイオン発生器については、今回が初めての処分となっています。
・今年度5社目。レッドスパイスの首下げ空間除菌製品に景表法措置命令。除菌効果への打消し表示認められず(消費者庁 2021年3月18日)
・Nature Link、萬祥、首下げ空間除菌製品2社の表示に景表法措置命令。分かれる両社の対応(消費者庁 2021年1月15日)
・Salute.Lab、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。実証データは、訴求内容に適切に対応を(消費者庁 2020年12月22日)
・通販事業者 東亜産業、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)
マイナスイオン発生器に対する措置命令は、2016年1月に(株)ユーコーに対し、出されています。
・「PM2.5対応プラズマ空気清浄機」、通販のユーコーに景表法措置命令 (消費者庁 平成28年1月26日)
いずれのケースにおいても、不実証広告規制を用いた処分であり、「効果を保証するものではない」旨の打消し表示が記載されていましたが、打消し効果を認められていません。
GSDの措置命令に対する公表文を見る限り、表示に対する合理的根拠や打消し表示の考え方を理解しているのか疑問が残ります。
新型コロナウィルス関連に限らず、その他の広告においても、商品の効能効果を謳う表示に対する不実証広告規制による処分は、引き続き厳しく執行されることが予測されます。
しっかりと、合理的根拠や打消し表示の考え方について理解し準備しましょう。
フィデスがサポートいたします。
・景品表示法上の表示の裏付けとなる「合理的な根拠」。効能効果の適切な実証方法
・消費者庁が本気で調査!打消し表示は明瞭に
《参考記事》
・携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導について
(消費者庁 2020年5月15日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/019867/
・気になる消費者庁のネット広告監視動向と処分。新型コロナウイルス予防関連商品は注意!
・「空間除菌剤」17社、景表法措置命令。大幸薬品の新たな広告も問題視(消費者庁 平成26年 3月27日)
======================================
◆広告法務コンサルティング・社員教育◆
販促・広報戦略、商品表示・広告チェック社内体制構築等、
社外専門家としてのノウハウとサポート
詳細はこちら
======================================
————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの1週間分の情報を、ダイジェストでお届けしています。
登録はこちら
————————————————————-