消費者庁は3月24日に、(株)イオン銀行が提供するクレジットカード又はデビットカードの新規入会のキャッシュバックキャンペーンに関する表示に対し、景品表示法の有利誤認による措置命令を行いました。
キャンペーンの「例外条件」の表示では、ウェブサイトと併せて、デジタルサイネージや動画広告についても対象とされ、「打ち消し表示」が問題となりました。
「例外条件」の不適切な「打ち消し表示」については、2019年に三越伊勢丹ホールディングス子会社のエムアイカードと、LINEモバイルの申込時の登録事務手数料表示に対する措置命令が出ています。
処分の内容と、問題となった「打消し表示」のポイントを確認していきます。
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株式会社イオン銀行に対する景品表示法に基づく措置命令について
(2020年3月24日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_200324_02.pdf
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●違反概要
【対象役務】
クレジットカード又はデビットカードに関する役務
【表示媒体・期間】
a 自社ウェブサイト 2019年7月1日~同年9月30日
b 「デジタルサイネージ」と称する店頭表示物 2019年7月1日~同年9月30日
c YouTubeにおける動画広告 2019年7月6日~同月31日、同年8月7日~9月29日
【違反表示内容】
有利誤認表示:
自社ウェブサイトでは、
「新規ご入会者限定」
「■要エントリー」
「■イオン銀行口座設定された方」
「カードご利用代金最大20%キャッシュバック」
「利用期間 7/25[木]~31[水] 8/25[火]~31[土] 9/2 4[火]~30[月]」
「本キャンペーンのキャッシュバック上限金額は、おひとりさまにつき合計10万円まで!」
・「入会期間:2019年7月1日(月)~9月30日(月)」
等と表示することにより、
あたかも、「入会期間」に「新規入会者」が本キャンペーンに応募した上で、「利用期間」に商品購入やサービス提供の代金決済に本役務を利用した場合、特段の例外条件なく、応募者1人当たりのキャッシュバックの上限金額を合計10万円として、代金の最大20%相当額のキャッシュバックを受けられるかのように表示していた。
デジタルサイネージでは、本件表示をすることにより、上記条件で本役務を利用した場合、特段の例外条件なく、代金の最大20%相当額のキャッシュバックを受けられるかのように表示していた。(応募者1人当たりのキャッシュバックの上限金額の表示なし)
動画広告では、デジタルサイネージと同様の文字の映像及び、
文字の映像「イオンカードは今なら20%キャッシュバック」「イオンウォレットから応募」
音声の表示「イオンカードは今なら20パーセントキャッシュバック」「今すぐイオンウォレットから応募」
をすることにより、上記条件で本役務を利用した場合、特段の例外条件なく、代金の最大20%相当額のキャッシュバックを受けられるかのように表示していた。(応募者1人当たりのキャッシュバックの上限金額の表示なし)
実際:
以下のとおり、キャッシュバックを受けることができない例外条件があった。
自社ウェブサイト:1)2)3)
デジタルサイネージ・動画広告:2)3)4)
1)本キャンペーンに応募した場合であっても、本カードが登録された「イオンスクエアメンバーID」でイオンウォレットにログインしていない場合、キャッシュバックが適用されない。
2)イオン銀行が指定した対象外項目の商品購入やサービス提供の代金決済に本役務を利用した場合、キャッシュバックが適用されない。
3)キャッシュバックの上限金額は、1回の支払当たり1万円であり、1万円を超過した分のキャッシュバックは適用されない。
4)キャッシュバックの上限金額は、1人当たり10万円であり、10万円超過した分のキャッシュバックは適用されない
表示例(デジタルサイネージ):
打消し表示:
以下の表示は、一般消費者が本件表示から受ける本役務の取引条件に関する認識を打ち消すものではない。
自社ウェブサイト
a,bの表示から、キャッシュバックを受けることができない例外条件があることを認識することは困難である。
a キャッシュバックを受けることができない例外条件について
・本件表示と同一のウェブページだが、同一視野に入る箇所ではなく、表示から離れた最下部に表示されていた
・表示から離れた箇所に小さく表示された「『ご入会特典に関するご注意』」とのハイパーリンクをクリックしなければ表示されなかった
・「お申込みはこちら」と記載された、カードの申込みのための44箇所のバナーよりも下部に表示されていた
・本キャンペーンに関して記載された多数の取引条件の一部として、小さい文字で表示されていた
b キャッシュバックを受けることができない例外条件の対象外項目について
本件表示とは別のウェブページに表示しており、aの例外条件の表示のうち、「こちら」とのハイパーリンクをクリックしなければ表示されなかった
デジタルサイネージ・動画広告
本件表示と同一の画面において、以下の表示をしていたが、当該表示から、キャッシュバックを受けることができない対象外項目があること、キャッシュバックの上限金額があることを認識することは困難である。
デジタルサイネージ表示:
「※1適用には条件があります。条件に満たない場合、10%キャッシュバックとなる場合がございます。詳しくは専用サイトをご確認ください。」
「イオンカード キャッシュバック(検索マーク)」
「適用条件 キャッシュバック金額判定日(2019年10月15日)時点で、 以下の条件を満たす方が本キャンペーンの対象となります。 ①入会対象期間中にお申込みいただき発行されたカード(以下、対象カード)で、利用対象期間中にカードショッピングのご利用があること ②イオンカード公式アプリ『イオン ウォレット』をダウンロードいただき、対象カードが登録されたイオンスクエア メンバーIDでログインのうえ、本キャンペーンにご応募いただいていること」
動画広告表示:
「※1適用には条件があります。条件に満たない場合、10%キャッシュバックとなる場合がございます。詳しくは専用サイトをご確認ください。」
「●一部キャッシュバック対象外のご利用分がございます。」
「イオンカード キャッシュバック(検索マーク)」
●一般消費者が強調表示から受ける認識の打ち消し効果がないとされたポイント
ウェブサイト:
・打消し表示が「利用代金最大20%キャッシュバック」という強調表示の同一視野に入る箇所ではなく、離れた箇所に小さく表示されている
・打消し表示への誘導が、強調表示から離れたリンクをクリックしなければ表示されない
・カードの申込みのバナーよりも下部に表示されている
・本キャンペーンに関する多数の取引条件の記載の中に、小さい文字で表示され、埋もれている
デジタルサイネージ・動画広告:
表示媒体に表示しきれない例外条件をウェブサイトに誘導させる手法が認められなかった。
誘導先のウェブサイトの表示も明瞭でなかった。
消費者庁が公表した「打消し表示に関する実態調査報告書」から、打消し表示の留意点について、確認しておきましょう。
・TSUTAYAの措置命令で考える、「打消し表示」の景品表示法上の留意点
《参考記事》
・三越伊勢丹ホールディングス子会社のエムアイカードに景表法措置命令。ポイント還元率の例外表示に注意!(消費者庁:2019年7月8日)
・LINEモバイル、申込時の手数料表示に景表法措置命令。「よくある質問」に注意!(消費者庁:2019年7月2日)
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