EMS機器の通販、製造販売業者4社に景表法措置命令 痩身効果に不実証広告規制(消費者庁 2020年3月31日)

消費者庁は3月31日、EMS機器の販売業者4社((株)オークローンマーケティング(名古屋市)、(株)ディノス・セシール(東京都)、(株) プライムダイレクト(名古屋市)、ヤーマン(株)(東京都))に対し、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。

優良誤認は、EMS機器の使用による痩身効果に関する表示について、不実証広告規制(※)を用いた処分となっています。
動画やウェブサイト上の打消し表示についても認められませんでした。

「個人差があり結果を保証するものではありません。」といった記載が打消し効果を認められなかっただけでなく、プライムダイレクトの「ダイエットの結果は、適切な食事管理とプログラムに基づいた運動、軽い運動や10分程度のウォーキング)の併用によるものです。」といった記載や、オークローンマーケティングの「効果には個人差があります。適度な運動と食事制限を行った結果です。」等の、併用が必要な事項や特定の条件についての記載がなされていても、表示方法が不適切であったことから、打消し効果を認められませんでした。

各社の処分のポイントと、景表法における打ち消し表示の留意点について確認します。

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EMS機器の販売事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2020年3月31日)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_200331_01.pdf
———
(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


違反概要

(1)株式会社オークローンマーケティング
【対象商品・表示媒体・期間】
商品:「スレンダートーン アブベルト」と称する商品
表示媒体・表示期間:
「ショップジャパン」と称するテレビショッピング番組(BS放送)
2018年12月20日
自社ウェブサイトで配信した動画 2019年3月27日

【違反内容】
《優良誤認表示》
例えば、
「102.4センチあったウエストはなんと88センチに。驚きのマイナス14.4センチ」
「なんと、マイナス19.6センチのお腹引き締めに成功。出産前のお腹を取り戻した」
等と記載。
あたかも、本件商品を腹部に使用すれば、電気刺激によって腹部の筋肉が鍛えられることにより、1か月又は6週間で腹部の痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。

打消し表示:
「※スレンダートーンと適切な栄養管理も行った結果です」
「※効果には個人差があります」等と表示。

違反表示例:スレンダートーン アブベルト

(2)株式会社ディノス・セシール
【対象商品・表示媒体・期間】
商品:「クワトロビート」と称する商品
表示媒体・表示期間:
自社Webサイトで配信した動画
2017年5月23日から2019年4月15日までの間

【違反内容】
《優良誤認表示》
例えば、
「ウエスト(へそ周り)■■さん -8.6㎝ 79.3 →70.7 ■■さん -15.4㎝ 93.4→78.0 ■■さん -11㎝ 97.7→86.7 ■■さん -12.5㎝ 80.3→67.8」等と記載。
あたかも、
本件商品を腹部に使用すれば、商品の振動によって腹部の肉が柔らかくなり、かつ、商品の電気刺激によって腹部の筋肉が刺激されることにより、4週間で腹部の痩身効果が得られるかのように示す表示をして いた。

打消し表示:
「※個人差があり 結果を保証するものではありません」と表示。

違反表示例:クワトロビート

【対象商品・表示媒体・期間】
商品:「TBCスレンダーパッドBE」と称する商品
表示媒体・表示期間:
自社Webサイトで配信した動画
2018年8月3日から2019年8月26日までの間

【違反内容】
《優良誤認表示》
例えば、
「ウエスト(へそ周り)■■さん(45歳)-11.4cm(90.4→79.0)」
「■■さん(30歳)-12.8cm(82.3→69.5)」
「■■さん(25歳)-18.8c m(100.1→81.3)」
「■■さん(56歳)-14.5 cm(88.0→73.5)」
「■■さん(34歳)-7.5cm(86.5→79.0)」等と記載。
あたかも、
本件商品を腹部に使用すれば、商品の電気刺激によって腹部の筋肉が鍛えられることにより、特段の食事制限や運動をすることなく、1日20分間の使用を4週間継続することで、腹部の痩身効果が得られるかのように示す表示をして いた。

打消し表示:
「※個人差があり 結果を保証するものではありません」と表示。

違反表示例:TBCスレンダーパッドBE

(3)株式会社プライムダイレクト
【対象商品・表示媒体・期間】
商品:「バタフライアブス」と称する商品
表示媒体・表示期間:
「プライムダイレクト」と称するテレビショッピング番組(BS放送) 2018年9月22日

【違反内容】
《優良誤認表示》
例えば、
「ウエスト -18㎝サイズダウン!」及び「体重 -7.2㎏ ウエスト -10.0㎝」等と記載。
あたかも、
本件商品を腹部に使用すれば、商品の電気刺激によって腹部の筋肉が鍛えられることにより、2か月で腹部の痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。

打消し表示:
「※個人の感想です。効果には個人差があります。」及び「※効果には個人差があります。
適度な運動と食事制限を行った結果です。」と表示。

違反表示例:バタフライアブス

【対象商品・表示媒体・期間】
商品:「バタフライアブスディープテック」と称する商品
表示媒体・表示期間:
自社ウェブサイト 2019年4月1日から2019年8月28日までの間

【違反内容】
《優良誤認表示》
例えば、
「バタフライアブスディープテック1ヶ月チャレンジ」、並びに 人物の前後比較画像と共に、「BEFORE」、「AFTER」、「ウエスト-13㎝」及び「■■さん 42歳」等と記載。
あたかも、
本件商品を身体の部位に使用すれば、商品の電気刺激によって当該部位の筋肉が鍛えられることにより、1か月で当該部位の痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。

打消し表示:
「※結果には個人差があり、すべての方が同様の結果になるとは限りません。」、「※ダイエットの結果は、適切な食事管理とプログラムに基づいた運動、軽い運動や10分程度のウォーキング)の併用によるものです。」及び「※効果には個人差があります。適度な運動と食事制限を行った結果です。」と表示。

違反表示例:バタフライアブスディープテック

(4)ヤーマン株式会社
【対象商品・表示媒体・期間】
商品:「クワトロビート」と称する商品
表示媒体・表示期間:
自社Webサイト 2017年11月20日から2019年9月3日までの間

【違反内容】
《優良誤認表示》
例えば、
「MONITOR」、「ながらトレーニングで、憧れ美ボディ」及び「30日間でこの変化!」、並びに本件商品を使用した前後の人物の腹部及び臀部を比較した画像と共に、「Before」、「After」、「おへそ周り -12.3㎝」及び 「Tさん(40代)」等と表示。
あたかも、
本件商品を身体の部位に使用すれば、商品の振動によって当該部位の肉がもまれて柔らかくなり、かつ、商品の電気刺激によって当該部位の筋肉が鍛えられることにより、30日間で当該部位の痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。

打消し表示:
「※結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。」、「※30日間の商品使用と適切な運動・食事管理をあわせて行った結果です。及び「※結果には個人差があります。Oさん-5.7㎝/Oさん-4.2㎝/モニター3名平均-7.4㎝<平均使用時間:1.2時間/日>」等と表示。

違反表示例:クワトロビート

【対象商品・表示媒体・期間】
商品:「トルネードRFローラー」と称する商品
表示媒体・表示期間:
自社Webサイトで配信した動画 2018年5月30日から2019年9月6日までの間

【違反内容】
《優良誤認表示》
例えば、
本件商品を使用する映像に続いて、
人物の腹部の使用前後を比較した映像と共に、「たった1カ月でお腹周り-9.0㎝!!」 との文字の映像、
人物の身体の使用前後を比較した映像と共に、「たった1カ月でウエスト-7. 0㎝!!」との文字の映像、
等を表示。
あたかも、
本件商品を腹部に使用すれば、1か月で腹部の痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。

打消し表示:
「※効果には個人差があります」及び「※運動と食事制限を組み合わせた結果です」と表示。

違反表示例:トルネードRFローラー

実際:
4社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、4社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

●打消し表示について
一般消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされています。

景表法における打ち消し表示の留意点を確認しておきましょう。

●「個人の感想です。」と打ち消し表示を併記するだけでは不十分
体験談を用いる際、「個人の感想です。効果には個人差があります」、「個人の感想です。効果を保証するものではありません」といった打消し表示を記載していたとしても、体験談等を含めた表示全体から「大体の人に効果がある」と消費者が認識を抱くことに留意する必要があります。
体験談により消費者の誤認を招かないようにするためには、体験談の内容と実際の商品・サービスの効果、性能等に適切に対応させることが必要です。
商品の効果、性能等に関して事業者が行った調査について、
(ⅰ)被験者の数及びその属性
(ⅱ)そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者が占める割合
(ⅲ)体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合
等を明瞭に表示しましょう。
(景品表示法(第4条)、特定商取引法(第12条))

●全ての媒体に共通して問題となる表示方法
・一般消費者が打消し表示を見落としてしまうほど文字が小さい場合。
・(打消し表示が強調表示の近くに表示されていても)強調表示が大きな文字に対して、打消し表示が小さな文字で表示されている。
・打消し表示の背景が無地の単色ではなく、複数の色彩が入り組んでおり、 打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいような場合。
・(一般消費者が見落としてしまうほど小さくない場合であっても)打消し表示が強調表示から離れた場所に表示されており、一般消費者が打消し表示に気付かない場合。
・(打消し表示に気付いたとしても)当該打消し表示が、離れた場所に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合。

●動画広告において問題となる表示方法
・打消し表示が含まれる画面の表示されている時間が短く、強調表示を読んでいるだけで画面が切り替わってしまうような場合。
・強調表示と打消し表示の文字量が多く、打消し表示を読んでいる途中で画面が切り替わってしまうような場合。
・強調表示が表示された後、画面が切り替わって、直後の画面に打消し表示が表示され、その打消し表示が、別の画面に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合。
・文字と音声の両方で表示された強調表示が一般消費者に強い印象を残すのに対し、文字のみで表示された打消し表示に一般消費者の注意が向かないような場合。
・打消し表示と同一画面内に表示された人物等の部分に一般消費者の注意が向けられ、打消し表示に注意が向かないような場合。
・複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場するときは、動画中の情報量が多いために1回見るだけでは全ての打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できない場合。

上記のような表示方法により、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できず、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがあります。

上記以外にも、打消し表示を行う際の留意事項がありますので内容を確認しておきましょう。

—————
打消し表示に関する実態調査報告書
(消費者庁 平成29年7月)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180921_0001.pdf

スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書
(消費者庁 平成30年5月)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0002.pdf
—————–

《参考記事》

・健康被害の「ケトジェンヌ」、景表法で措置命令。ダイエット方法による体質改善訴求も優良誤認認定
(消費者庁 2020年3月19日)

・ダイエットパッチの販売業者3社に景表法措置命令 痩身効果に不実証広告規制
(消費者庁 2019年11月29日)

・埼玉県 接骨院MJGの「お客様評価」「やせプログラム」表示に景表法措置命令
(埼玉県 2019年11月18日)

・着圧痩身下着通販トラスト(旧MRZ)に景表法措置命令。措置命令後も違反表示を継続(消費者庁:2019年9月20日)

・ダイエット酵素食品5社に対する景表法措置命令。薬機法だけでなく、景表法の考え方を理解する(消費者庁:平成31年3月29日)

・成分の作用による痩身効果を謳った酵素食品5社に景表法措置命令。景表法における打ち消し表示の留意点とは(消費者庁:平成31年3月29日)

シミ消し、痩身効果、二重価格、Growasの健食、化粧品、下着5商品に景表法措置命令(消費者庁 2019年3月28日)

・痩身効果及び筋肉増強効果を謳った加圧シャツの表示に景表法措置命。消費者庁による9社一斉処分(消費者庁 2019年3月22日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。