大阪府は8月27日、大阪市で温浴施設を運営する大和ハウス工業(株)と、(株)オンテックスの2者に対し、景品表示法の措置命令を行いました。
2者は、温泉法に基づく温泉の利用の許可を受けておらず、また、浴槽の温水について「温泉」としての効能を表示できる成分は含まれておらず、優良誤認表示とみなされました。
大和ハウス工業は、温浴施設の運営を他社に委託していましたが、今回の処分対象事業者となっています。
内容を確認します。
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不当な表示を行っていた事業者2者に対する措置命令について
(2019年8月27日 大阪府)
http://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=35629
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《大和ハウス工業株式会社》
【対象役務】
「岩塩温泉りんくうの湯」及び「岩塩温泉和らかの湯」と称する公衆浴場における浴場利用役務
【表示媒体】
店舗ウェブサイト
店舗掲示物
浴場内掲示物
【表示期間】
2013年4月17日~2019年8月 27 日
【違反内容】
表示:
例えば、りんくうの湯のウェブサイトにおいて、「ピンク岩塩」及び「ブラック岩塩」と称する物質について、「分析試験成績(100g 中)」を表により掲載した上で、「温泉名」を「岩塩温泉りんくうの湯」とし、その説明として、「ピンク岩塩とブラック岩塩を溶解させたお湯を岩風呂と展望風呂でご用意しています。」と記載。
「温泉の特色」として、「良質の硫黄分を豊富に含み、「含硫黄・ナトリウム・塩化物泉」に類似しております。」とし、さらに「含硫黄・ナトリウム・塩化物泉の効能」として、「切り傷、火傷、慢性皮膚炎、慢性婦人病・糖尿病・高血圧・関節痛・打ち身、動脈硬化神経痛、慢性消火器炎、胃弱、冷え性など」と記載。
あたかも本件浴槽の温水について、温泉を使用したものであるかのように表示していた。
実際:
本件公衆浴場は、温泉法に基づく温泉の利用の許可を受けておらず(※)、浴槽の温水は、工業用水や井戸水を加温した上で、岩塩を粉末状にした浴用化粧品とソーダ灰(炭酸ナトリウム)を用いたものであって、効能を表示できる医薬品や医薬部外品ではなかった。
また、浴槽に用いられていた浴用化粧品は、「ブラック岩塩」のみであり、「ピンク岩塩」と称するものは使用されておらず、「ピンク岩塩」の分析試験成績には何らの根拠もないものであった。
表示例:りんくうの湯 店舗ウェブサイト
《株式会社オンテックス》
【対象役務】
「和泉橋本温泉 美笹のゆ」と称する公衆浴場における浴場利用役務
【表示媒体】
浴場内掲示物
店舗ウェブサイト
【表示期間】
遅くとも2012年5月頃17日~2019年8月 19日
【違反内容】
表示:
「岩風呂」については、「人工温泉」の「アルカリ性単純温泉」であるとして、「アルカリ性単純温泉の主な効能」として、「疲労回復、神経痛、不眠症、動脈硬化など」と表示。
「二股温泉風呂」については、「二股炭酸カルシウム温泉」として、「効能表」に「あせも 荒れ性 しもやけ しっしん 冷え性 うちみ くじき 肩こり リュウマチ 腰痛 神経痛 疲労回復 痔」と表示するほか、使用しているとする医薬部外品の「成分表」を表示。
あたかも本件岩風呂及び本件温泉風呂の温水について、温泉を使用したものであるかのように表示していた。
実際:
本件公衆浴場は、温泉法に基づく温泉の利用の許可を受けておらず(※)、岩風呂は、井戸水を加温した上で、医薬部外品には該当しないソーダ灰(炭酸ナトリウム)を用いたものであった。
温泉風呂は、井戸水を加温した上で、医薬部外品を用いたものであって、なおかつ、2008年4月の施設開設以来、一度も本件医薬部外品の補充を行っていなかった。
いずれの風呂も効能を表示できるものではなかった。
表示例:二股温泉風呂 浴場内掲示物
(※)
温泉については、温泉法第2条第1項において「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸
気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。」と規定されており、同法第 15 条第1項において、温泉の利用の許可について「温泉を公共の浴用又は飲用に供しようとする者は、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならない。」と規定されている。
大和ハウス工業は本件公衆浴場の施設を所有し、運営を(株)ビーバーレコードに委託していました。
また、大和ハウス工業は、本件表示について、ビーバーレコードから表示内容の提案等を受けた上で、最終的に判断し決定している、とされています。
景表法の規制対象となる事業者は、商品を自ら供給し、「表示内容の決定に関与した者」として以下の要件となっています。
1)自ら又は他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者
2)他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者
→他の事業者が決定したあるいは決定する表示内容についてその事業者から説明を受けてこれを了承し、その表示を自己の表示とすることを了承した事業者
3)他の者にその決定をゆだねた事業者
→自己が表示内容を決定することができるにもかかわらず、他の事業者に表示内容の決定を任せた事業者
今回は、2)の要件が該当すると考えられます。
本件に対する同社の「お詫びとお知らせ」は、大和ハウス工業とビーバーレコードが連名で出されています。
大阪府による過去の景表法措置命令には以下の5件の処分があり、表示事件では食品や外食によるものが多くなっています。
・大阪府、かなたに「佐賀牛」弁当の表示に景表法措置命令。不実証広告規制とDNA分析による(大阪府:2019年6月12日)
・全国初!大阪府が産経新聞社の高額景品に景表法措置命令。都道府県による処分続く(大阪府:平成31年3月19日)
・大阪府がヤムヤムクリエイツのシュークリームに景表法措置命令。都道府県による処分続く(大阪府:平成31年3月13日)
・求められる仕入れ先の商品管理体制。恒づねの和牛表示に景表法措置命令 (大阪府 2018年9月11日)
・イオンの新聞折り込みチラシのタイムセールの価格に有利誤認の景表法措置命令(大阪府:平成30年4月19日)
また、過去の温泉の表示に関する措置命令には、以下の事案があります。
・11種類が2種類。岡山・湯迫温泉の浴槽数に景表法措置命令(消費者庁 2015年2月24日)
・課徴金制度閣議決定前日。愛知県の旅館(株)豆千待月に景表法措置命令(消費者庁 2014年10年24日)
・老舗温泉宿でも!温泉の不当表示に対する景表法措置命令(消費者庁 公正取引委員会 2013年6月4日)
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