二重価格表示の適法の工夫とは。パソコン通販サードウェーブ、二重価格表示に景表法措置命令(東京都 2021年3月30日)

東京都は3月30日に、パソコン販売業の(株)サードウェーブ(東京都千代田区)がインターネットで販売するパソコンの二重価格表示に対し、景品表示法(有利誤認)の措置命令を行いました。
比較対照価格での販売時期や比較対照価格の商品同一性が、二重価格表示の適法要件を満たしていませんでした。

本事案から二重価格表示を行う際の比較対照価格について、景表法の考え方をチェックしながら、適法表示の工夫について考えます。

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インターネット通販で不当な価格表示を行っていたパソコンの販売事業者に景品表示法に基づく措置命令
(東京都 2021年3月30日)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/torihiki/hyoji/keihyo/20210330.html
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【違反内容】
対象商品:
「Altair F-13KR」と称する商品などパソコン55商品

表示媒体・表示期間:
自社ウェブサイト「ドスパラ」
2018年12月20日から2020年2月20日までの間

違反内容:
実際の販売価格に、それを上回る価格(比較対照価格)を取消し線付きで併記することにより、販売価格が通常販売している価格と比べて安いかのように表示していた。
実際には、比較対照価格は、最近相当期間にわたって販売された実績のないものだった。

a) 比較対照価格で販売された最後の日から2週間以上経過していた。
例えば、「Altair F-13KR」と称する商品について、比較対照価格「84,980円(+税)」販売価格「74,980円(+税)」と表示。
表示期間:2020年10月3日~2020年1月23日
比較対照価格で販売された最後の日:2020年9月5日

【表示例】

(東京都の公表資料より引用)


b) 比較対照価格は同じ商品の過去の販売価格ではなく、別モデルの過去の販売価格を使用していた。
例えば、「GALLERIA GCF1070NF セーフティサービスモデル」と称する商品について、比較対照価格「235,980円(+税)」販売価格「199,980円(+税)」と表示。
表示期間:2018年12月20日~2019年10月10日
比較対照価格で販売された最後の日:なし

【表示例】

(東京都の公表資料より引用)

サードウェーブによる違反内容の説明では、b)「比較対照価格は同じ商品の過去の販売価格ではなく、別モデルの過去の販売価格を使用していた」に関して、以下の理由で同一製品での価格比較とは認められず、比較対照価格での販売実績が認められなかったとしています。

・比較対象価格に設定した製品が旧モデルであるのに対して、販売価格の製品はCPUやストレージのスペックが異なっていた。
・比較対象価格が製品単体価格であるのに対して、販売価格はサービス加入がプラスされていた。
・販売価格の製品は、既存製品にマイクロソフトオフィスをプリインストールしたモデルであった。

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東京都からの措置命令についてのご説明
(株)サードウェーブ 2021年3月31日
https://www.dospara.co.jp/5press/share_info.php?id=2011
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今回の事案の二重価格表示で問題となったポイントは、比較対象価格の販売時期と商品同一性でした。

公正取引委員会が発表している「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(※)から二重価格表示の適法要件を確認します。

二重価格表示の適法要件として、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
・比較対照に用いる価格(「通常価格」)で販売されていた期間が、通算して2週間以上であること。
・「通常価格」で販売された最後の日から、キャンペーン開始時までに2週間以上経過していないこと。
・最近相当期間にわたって、「通常価格」での販売実績があること。

《「最近相当期間にわたって販売されていた価格」か否かの判断基準》
一般的な目安として、
・二重価格表示を行う最近時(キャンペーンの各時点において、その時点からさかのぼる8週間が目安)において、「通常価格」で販売されていた期間が当該商品の販売期間の過半を占めていること。
キャンペーンが4週間を超える場合は注意が必要です。

最近相当期間販売していない場合:
販売実績のある商品の価格については、販売時期や期間を正確に明示します。
※但し、セール実施決定後に販売を開始した商品の価格を比較対象価格とする場合には、当該価格での相当期間販売実績が必要です。
短期間の販売ではセール前価格の実績作りのための価格とみられるため、販売時期や期間を正確に表示しても、不当表示となるおそれがあります。

「販売されていた」とは:
事業者が通常の販売活動において当該商品を販売していたことをいい,実際に消費者に購入された実績のあることまでは必要ではない。
他方、形式的に一定の期間にわたって販売されていたとしても、単に比較対照価格とするための実績作りとして一時的に当該価格で販売していたとみられるような場合には,「販売されていた」とはみられない。

次に、適切な比較対照価格表示に求められる「商品の同一性」についてのポイントです。

●比較対照価格として表示できるのは同一商品の価格
(同一の商品とみなされるもの)
・銘柄,品質,規格等からみて同一とみられるもの
・衣料品等のように色やサイズの違いがあっても同一の価格で販売されるような商品

(同一の商品とみなされないもの)
・ある一つの商品の新品と中古品(汚れ物、キズ物、旧型又は旧式の物を含む)
・野菜、鮮魚などの生鮮食品(一般的に商品の同一性判断が困難なため)

●セット販売割引の比較対照価格には、単品販売時の価格を明記
商品の増量割引や異なる2つの商品のセット販売は、同一商品での比較ではありませんが、比較対象価格表示が認められています。表示の際は、比較対象価格に実際の現在販売価格の内訳も入れましょう。

(表示例)
商品A(2,000円)と商品B(1,000円)をセット販売する場合
「A、Bセット販売で2,500円
通常単品販売価格<商品A(当店通常価格2,000円)商品B(当店通常価格1,000円)>」と表示します。

本事案においても、比較対象価格がどのような価格であるか、商品内容、販売時期や期間を正確に記載することで、不当表示となることを避けることができたと考えられます。

(※)
◆不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
(平成12年6月30日公正取引委員会 改定 平成28年4月1日消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf

以下に、価格表示に関する景品表示法の解説記事をまとめました。
どうぞご参考ください。
・二重価格表示の注意点~セール時の価格表示~

・二重価格表示の注意点 ~比較対照価格の商品同一性~

≪参考記事≫
・メーカー希望小売価格の廃止に気付かず、サンドラッグ、二重価格表示に景表法措置命令 (2020年6月24日 消費者庁)

●行政処分取消訴訟
アマゾンジャパン合同会社に対する景品表示法の規定に基づく措置命令(平成29年12月27日)を行ったことに対し、平成30年1月26日、同社らが同命令の取消し及び同命令の執行停止を求めて提訴した(訴訟係属中)。
・アマゾンに不当な二重価格表示で景表法措置命令!表示責任のポイントは?(消費者庁:平成29年12月27日)

・「メーカー希望小売価格」「通常価格」による二重価格表示に注意!スーパーマーケット サンプラザの割引表示に景表法措置命令(消費者庁:2019年7月8日)

・セール時の二重価格表示に注意!イオン子会社「SPORTS AUTHORITY」のチラシに景表法措置命令

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。