プレスリリースのコンテンツ審査、2.4%に指摘。最多指摘理由は「最上級表現の根拠不足」((株)PR TIMES 2023年12月5日)

年々強まる傾向にある広告関連法規制とともに、広告媒体審査も厳しさを増しています。
プレスリリースにおいても、掲載するコンテンツに対し基準を設けて審査が行われています。

プレスリリース配信大手のPR会社「PR TIMES」では、企業の利用登録とプレスリリース内容に審査基準を設けており、2023年の審査結果のレポートを12月に発表しました。
2022年に続き2回目となる2023年(2023年1月1日~10月31日発信分)の審査では、全プレスリリース30万1976件のうち2.4%にあたる7153件が審査指摘を受けています。昨年の指摘件数5157件(全体の1.9%)から2000件ほど増加しました。
ただし、指摘対象となった7153件のうち、75.4%(5391件)は、発信元企業による追記や表現の変更により掲載継続となっています。
審査レポートより、審査傾向と審査基準の最新動向について確認します。

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7153件のプレスリリースに審査指摘(調査対象:30万1976件)「最上級表現」と「新規性」が理由の約半数に PR TIMESプレスリリース審査レポート2023を発表
(株式会社PR TIMES 2023年12月5日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001354.000000112.html
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PR TIMESの審査フロー

利用登録審査:
「PR TIMES」の新規利用登録時に、申請された企業・団体・個人事業主の企業情報や事業内容に基づき審査を行う。
コンテンツ審査:
発表後速やかに行う。(企業の広報発表タイミングを優先)
発信されたプレスリリースは、システムによる判定とコンテンツ基準に照らし合わせて全件目視で審査を行う。
不適切な内容を発見した場合には、発信元企業による追記や表現の変更により掲載継続か、再審査により取り下げとなる。
法令抵触リスクがある内容や、成年向け商品に関する内容など、生活者に重大な影響を与えかねないプレスリリースは、指摘のフローを挟まず、運営者判断で即時取り下げを決行。
さらに内容や結果の重さ、再違反の可能性などを勘案してサービス利用停止などの措置をとることがある。
《PR TIMESコンテンツ基準》
https://tayori.com/q/prtimes-contents-guideline

全体の2.4%のプレスリリースに対し指摘

2023年審査結果
調査期間:2023年1月1日~2023年10月31日
利用登録見送り:202社
全プレスリリース:30万1976件
審査指摘対象:7153件(全プレスリリースの2.4%)
掲載継続:5391件(審査指摘対象の75.4%)※発信元企業による追記や表現の変更による
取り下げ:1762件(審査指摘対象の24.6%)※即時取り下げ:76件(1.1%)含む

「最上級表現」が4件に1件で、指摘理由の最多

最も多かった指摘内容は「最上級表現の根拠不足」1882件(26.3%)、次いで「新規性の不足」1688件(23.6%)となり、この2点が全体の約半数を占めた。
法令抵触リスク(薬機法等の関係法令に抵触している可能性がある場合)は、10.7%。

PR TIMESでは、昨年より2000件程度の指摘件数の増加は、「最上級表現」の指摘が増えたことによる影響としている。また、指摘対象のうち、掲載継続となったプレスリリースの増加(昨年(65.8%)→75.4%)も、「最上級表現」の指摘において根拠の追記や該当箇所を削除することで掲載継続となったケースが多いためとしている。

最上級表現の審査基準

PR TIMESでは、2022年6月に調査リリース基準改定と最上級表現の基準を新設しています。
調査リリース基準:
・顧客満足度等のNo.1表示に関する調査リリースでは、内容について客観性と中立性を示す根拠を記載することとし、調査概要として以下の記載を必須とする。
「調査期間」「調査機関」「調査対象」「有効回答数(サンプル数)」「調査方法」
・順位付けを行う場合には、設問(評価項目)と回答選択肢を商品名・会社名など個別で示すこと。
・情報の鮮度を確保するため、調査終了日からリリース配信までの期間は、一部を除き「6か月以内」とする。
最上級表現の基準:
日本初や最安値等の最上級表現では、客観的根拠の併記を必須とする。
有効な客観的根拠例:
試験・調査による客観的結果
専門家、専門家団体・専門機関の見解または学術文献
※自社のアンケート調査結果を客観的根拠とする場合は、「自社調べ」と表記のうえ、上記調査概要の掲載を必須とする。
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PR TIMESコンテンツ基準
2022/6/16施行 調査リリース基準改定と最上級表現の基準新設について
https://tayori.com/q/prtimes-contents-guideline/detail/309988/
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上記のPR TIMESの調査リリース基準改定と最上級表現の基準新設は、非公正な「No.1 調査」を請け負う事業者による恣意的な手法が業界内で問題視されていたことを受けたものです。
・増加する不公正な「No.1調査」を請け負う事業者に注意。「No.1表示」の注意点とは

プレスリリース配信のプラットフォームとして、コンテンツ審査は信頼性を担保する取り組みとして一定の効果は期待できますが、不適切表示を完全に排除するのは難しいといえます。
審査基準では、調査概要や客観的根拠の記載を求めるものですが、発信元企業が調査会社の行った調査結果の恣意的な加工を知らない場合は、虚偽の記載が行われる可能性も否めません。
また、記載された内容がリリース内容の客観的根拠となりうるかの評価まで、PR TIMES側が突っ込んで行うことはないと考えられます。
プレスリリースのケースではありませんが、以下のエステ会社の不適正な「満足度1位」表示に対する景表法措置命令事案のケースでは、広告主は調査会社が行った調査結果の恣意的な加工を知りませんでした。
・エステのPMKメディカルラボ、不適正な「満足度1位」表示に景表法措置命令。(消費者庁 2022年6月15日)

プレスリリースの読者属性の変化への対応

また、PR TIMESのコンテンツ基準の改定の背景には、プレスリリースの読者属性の変化も大きいとしています。元々はメディア関係者向けにリリースを配信していましたが、現在では生活者からの直接のアクセスも多くなってきたことから、誤認表示をより問題視するようになったということです。
実際、2022年9月の山田養蜂場のサプリメントの新型コロナウイルス感染予防効果表示に対する景表法措置命令事案では、プレスリリースが違反対象表示となっており、プレスリリースも顧客誘引目的の表示となりうる判断が示されました。
・山田養蜂場、ビタミンDと亜鉛サプリのコロナ予防効果表示に景表法措置命令。プレスリリースの「表示」該当性 (消費者庁 2022年9月9日)

ただし、本事案においてプレスリリースの掲載された日時は2021年11月で、当時はPR TIMESのコンテンツ基準がコロナウイルス予防効果に関して対応していなかったことが考えられます。
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PR TIMESコンテンツ基準
コロナウイルス予防効果に関する表現について 最終更新日 : 2023/08/07
https://tayori.com/q/prtimes-contents-guideline/detail/139155/
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不当表示を未然に防ぐという観点からも、プラットフォームによる自主規制は重要な役割があると思います。

「No.1表示」を行う際の景品表示法上の注意点について、以下の記事で解説しています。
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。