埼玉県が、県内の大学、高校と連携して、違反表示・広告等に対する監視に取り組んでいます。
2022年度(令和4年度)に実施された不当表示広告調査では、県内の高校生1,588名(9校)、大学生233名(2大学)の計1,821名から調査報告書が提出され、本調査開始後、最大規模の調査となりました。
報告された1,821件の広告表示のうち、不当表示のおそれがあると思われる表示は1,212件で、約67%を占める結果となっています。
また、大学生・高校生はスマホやネットでのダイエット・美容関連広告における不当表示に接触する機会が多いことがうかがえる結果となりました。
県では、報告があった1,821件を精査し、15事業者に対して文書による行政指導を行っています。
令和元年度の本調査では、調査報告を端緒として令和2年3月31日に、(株)ニコリオのダイエットサプリメントの表示に対して埼玉県が景表法に基づく措置命令を行っています。
・埼玉県、ダイエットサプリ通販のニコリオに景表法措置命令と特商法業務停止命令。アフィリエイトも注意! (埼玉県 2020年3月31日)
令和4年度調査の内容を確認します。
調査実施期間
2022年6月から2023年1月
広告媒体別件数
調査媒体は以下の通り。
- インターネットの広告(各種検索エンジンの広告枠に表示される広告)
- スマートフォンの広告(SNS、動画配信サイトに表示される広告)
- 新聞紙上の掲載広告
- 雑誌(週刊誌、ファッション誌、情報紙等)の掲載広告
- 新聞等の折り込みチラシ
- フリーペーパーやミニコミ誌の掲載広告
- 店頭の広告
- その他
大学生・高校生にとって身近なデジタル広告に不当表示のおそれ
報告件数と不当表示のおそれありの件数の媒体別内訳は、スマートフォン994件中662件、インターネット711件中501件、新聞68件中32件、折込チラシ13件中5件、店頭10件中1件、雑誌6件中3件、フリーペーパー2件中2件、その他17件中6件。
調査媒体の93.6%が、SNS や動画サイトなどのスマホ利用時に表示される広告や、インターネット利用時に表示される検索エンジンの広告枠などの広告で、大学生・高校生にとってデジタル広告が最も身近な広告であることを示している。
不当表示のおそれがあると思われる表示は1,212 件で、そのうち、スマートフォンの占める割合は54.6%、インターネットの占める割合は41.3%となっており、合わせて約96%を占めている。
なお、媒体別報告件数のうち不当表示のおそれがある広告の割合は、スマホ広告は66.6%、ネット広告は70.5%となっている。
ダイエットや美容に関心の高い大学生・高校生に表示されるデジタル広告の不当表示
調査対象について、特定の商品類は指定していない。
報告件数と不当表示のおそれありの件数の商品・サービス別内訳は、報告件数の多い上位3分類について、ダイエット関係が701件中571件、美容関係534件中402件、健康関係151件中98件となっている。
報告のあった商品・サービスの割合では、ダイエット関係が38.5%、美容関連が29.3%、健康関係が8.3%で、ダイエットと美容関係で約7割を占めている。ダイエットや美容などに関心の高い大学生・高校生に対して、その関心に応じて表示されるデジタル広告に多く接していることがうかがえる。
不当表示のおそれがある広告では、ダイエット関係によるものが47.1%、美容関連が33.2%で約8割を占めている。
なお、商品・サービス別報告件数のうち不当表示のおそれがある広告の割合は、ダイエット関係が81.5%、美容関係が75.3%、健康関係が64.9%でとなっている。
違反被疑表示事例と指摘事項
報告のあった表示事例のうち、主な違反のおそれのある事例と学生・生徒の指摘事項については、次のとおり。
特に、ランキング表示、定期購入の契約条件に関する表示は、報告が多かった。
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令和4年度大学・高校との連携による不当表示広告調査結果について
(埼玉県 2023年4月25日)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0310/jigyousyasido/04gakkourenkei.html
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このような取り組みは埼玉県だけでなく、国や他の自治体においても、一般消費者に不適切な広告表示の調査モニターを委託して、事業者指導に活用しています。
東京都では「東京都消費生活調査員制度」事業を、平成14年度から実施しています。
本事業では、年度ごとに消費生活調査員として20歳以上の都民を対象に公募し、食品表示調査(調査員:100人、調査回数:3回)、表示・広告調査(調査員:100人、調査回数:3回)、計量調査(調査員:100人調査回数:3回、)を委託しています。
・消費生活調査員による調査(東京都)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/chousa/t_chosain/
今回取り上げた埼玉県の取組は、成人ではなく学生・生徒を調査員の対象にしています。
これは、調査を通じて次代を担う大学生、高校生が不当表示等に関する正しい知識を得ることにより、消費者被害の未然防止を図るという、若年者への消費者教育も意図された取組となっています。
また、本調査結果をもとに県が違反事業者に対する是正指導を行っており、大学生、高校生が悪質事業者の是正に貢献し、社会参画していることを実感する機会ともなっています。
2022年4月より成年年齢が引下げに伴い、若年者の消費者トラブルも増えています。このような形での消費者教育が広がることを期待したいと思います。
《関連記事》
・埼玉県、大学・高校と連携して違反広告監視。20事業者に行政指導(埼玉県 2022年4月20日)
・埼玉県、大学・高校と連携して違反広告監視。19事業者に行政指導(埼玉県 2021年4月13日)
・埼玉県、大学・高校と連携して違反広告監視。1事業者に行政処分、25事業者に行政指導(埼玉県 2020年7月13日)
・消費者の東京都への悪質事業者通報、通販が5割超、誇大広告は健康食品関係が約2割(東京都 悪質事業者通報サイトの通報概要(令和元年度))
・消費者からの広告表示に対する厳しい目 東京都「悪質事業者通報サイト」に大幅通報件数増加(東京都 2019年6月27日)
・JAROへの苦情、通販定期購入契約の苦情は減少せず。ネット広告への苦情二桁増続く (日本広告審査機構 2018年度の審査概況)
・ネット通販トラブル疑似体験や通報窓口設置 「消費者力」向上を目指す自治体の取り組み
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