トクホ広告101件の広告中10件に違反の恐れ。義務表示、個人の感想、機能性表示食品との切り分けに注意 (日健栄協 第12回 特定保健用食品広告審査会)

1991 年(平成 3 年)に発足した特定保健用食品制度。
2021年5月10日現在で1,074品目が許可・承認され、市場規模は6493億円(2019年度)と、品目数、金額ともにほぼ横ばいが続いています。

2019年度トクホ市場規模6432億円、前年度比微増。食物繊維関連大幅増加

公益財団法人 日本健康・栄養食品協会では、2013年度より〈トクホ〉の広告表現の適正化と向上を図ることを目的として「特定保健用食品広告審査会」を過去11回開催しています。
今回、2021年1月に実施された第12回審査会の審査結果概要を紹介します。

審査した19社32商品101件の広告中10件で、法令や同協会の適正広告自主基準などへの適合性に疑問があると判定しました。
第11回審査会(2020年1月実施)では、審査広告13社27商品46件の広告中「問題あり」は3件だったのに対し、今回は審査件数が倍とはいえ、不適合件数割合も増加しています。
(第12回9.9%、第11回6.5%)

審査結果を確認します。


【審査結果】
TV、新聞、雑誌の広告101件について審査を行った。
(ネットの広告については特定保健用食品広告部会で意見交換会を開催し、ネット広告の特性に応じた留意点の普及啓発活動が進められている。)
TV:67件中「A」判定(0件)、「B」判定(0件)、「C」判定(0件)
新聞:24件中「A」判定(0件)、「B」判定(4件)、「C」判定(3件)
雑誌:10件中「A」判定(0件)、「B」判定(3件)、「C」判定(0件)
(第11回:「A」判定 0件、「B」判定 1件、「C」判定 2件)

「A」判定:0 件
健康増進法に抵触する恐れや、消費者庁の「特定保健用食品に関する質疑応答集」および虚偽、特定保健用食品の許可範囲を超える表現など「「特定保健用食品」適正広告自主基準」に著しく抵触するもので、今回は 0 件。(前回は0件)

「B」判定:7件
「特定保健用食品に関する質疑応答集」および「「特定保健用食品」適正広告自主基準」に抵触するもので、「新聞」で4件、「雑誌」で3件。(前回は「テレビ」で1件)
広告に表示が必要な3項目(特定保健用食品である旨、食生活のバランス文言、許可表示文言)の記載がない広告や、個人の感想等の消費者誤認のおそれ、トクホと機能性表示食品の切り分けが不十分である広告が自主基準に抵触していると判定された。

「C」判定:3件
「特定保健用食品に関する質疑応答集」および「「特定保健用食品」適正広告自主基準」に抵触するおそれのあるもの、および消費者に誤認を与えるおそれのあるもので、「新聞」で3件。(前回は「新聞」で2件)

広告審査は、企業が出稿した広告について、健康増進法等の関連法規、消費者庁「特定保健用食品に関する質疑応答集」 (※1)および「『特定保健用食品』適正広告自主基準」(※2)等への適合性の観点から審査されています。

2020年3月に発表された自主基準改訂版では、「広告に許可表示を記載する場合は、許可表示である旨を明記し、表示許可書または表示承認書に記載された文言どおり正確に表示すること」と規定。アンケート・モニター結果については、嗜好・食感などに限り、広告への使用を可能とするが、「製品の効果に関する結果は使用しないこと」を明確化しました。

(※1)
「特定保健用食品に関する質疑応答集」(消費者庁 平成23年6月)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling/foods_for_specified_health_uses/notice/assets/food_labeling_cms206_20201117_25.pdf

(※2)
「『特定保健用食品』適正広告自主基準」((財)日本健康・栄養食品協会)
http://www.jhnfa.org/topic80a.pdf

同協会では2020年6月に特定保健用食品の公正取引規約が認定され、8月には特定保健用食品公正取引協議会が発足しました。

公的な公正競争規約が設定されたことで、表示の一層の適正化と、特定保健用食品に対する消費者の信頼感を一層高めると同時に、事業者にとっても広告活動を行いやすくなることを期待します。

—————
特定保健用食品公正取引協議会
https://www.jhnfa.org/tokuho-kyougikai/
特定保健用食品公正競争規約・施行規則
https://www.jhnfa.org/tokuho-kyougikai/nyukai.html#3
—————

——————————————–
特定保健用食品広告審査会
https://jhnfa.org/tokuho-market.html
第12回 特定保健用食品広告審査会 審査結果 (2021年3月23日 公益財団法人 日本健康・栄養食品協会)
https://jhnfa.org/news-0289.html

日時:2021年1月14日(木) 13時00分~17時00分
審査対象:
広告収集期間 2019 年10 月1日~2020 年9月30日(12 か月間)
収集件数:101件 (内訳)テレビ67件、新聞24件、雑誌10件
(第11回:46件 (内訳)テレビ29件、新聞13件、雑誌4件)
審査要領:
外部専門家(第三者委員)4名と協会会員企業のメンバーで構成された広告部会の代表(企業委員)3 名で構成し、企業が出稿した広告について、関連法規および「『特定保健用食品』適正広告自主基準」への適合性を確認した。
———————————————-

≪関連記事≫

・令和の健康食品広告の法規制動向と事業者のコンプライアンス傾向

・トクホ広告46件の広告中3件に違反の恐れ。広告自主基準を改定(許可表示、アンケート・モニター結果、データの取り扱い等)
(日健栄協 第11回 特定保健用食品広告審査会)

・トクホ広告96件の広告中7件に違反の恐れ。トクホ表示の公正競争規約検討進む 
(日健栄協 第10回 特定保健用食品広告審査会)

・トクホ広告117件の広告中11件に違反の恐れあり。トクホと機能性表示の棲み分け検討も
(日健栄協 第9回 特定保健用食品広告審査会)

・強まる健康食品への規制 トクホ広告審査と業界の自主規制の取り組み
(日健栄協 第4回 特定保健用食品広告審査会)

・トクホ広告23%に違反の恐れあり。今後はWeb広告も審査対象に
(日健栄協 第3回 特定保健用食品広告審査会)

・トクホ広告15%に違反の恐れあり。過半数が新聞広告
(日健栄協 第2回 特定保健用食品広告審査会)

・トクホ広告適正基準、個人の感想等や映像媒体でのグラフ使用の注意事項とは
(日健栄協)

======================================
◆広告法務コンサルティング・社員教育◆
販促・広報戦略、商品表示・広告チェック社内体制構築等、
社外専門家としてのノウハウとサポート
詳細はこちら
======================================

————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの1週間分の情報を、ダイジェストでお届けしています。

登録はこちら

————————————————————-

関連記事

  1. 一歩先ゆく埼玉県の通販「定期購入」契約トラブルに対する法執行

  2. 消費者庁 健康食品広告ネット監視133事業者(136商品)の表示に改善…

  3. 消費者庁 健康食品広告ネット監視99事業者(101商品)の表示に改善要…

  4. 健康食品の品質管理と健食ビジネス戦略 (消費者庁 平成27年度:機能性…

  5. 令和3年度ネット広告(年間24,000件)監視 234通販事業者に改善…

  6. 消費者庁 健康食品広告ネット監視230事業者(231商品)の表示に改善…

最近の記事

2024年12月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。