トクホ広告96件の広告中7件に違反の恐れ。トクホ表示の公正競争規約検討進む (日健栄協 第10回 特定保健用食品広告審査会)

1991 年(平成 3 年)に発足した特定保健用食品制度。
2019年7月現在で1067品目が許可・承認され、市場規模は6432億円(2018年度)となっています。

2018年度トクホ市場規模6432億円、前年度比微減。販売経路別では通販129.7%増の376億円

公益財団法人 日本健康・栄養食品協会では、2013年度より〈トクホ〉の広告表現の適正化と向上を図ることを目的として「特定保健用食品広告審査会」を過去9回開催しています。
今回、2019 年 7月に実施された第10回審査会の審査結果概要を紹介します。

審査した20社36商品96件の広告中7件で、法令や同協会の適正広告自主基準などへの適合性に疑問があると判定しました。
第1回審査会(2013年10月実施)では審査広告216件中32.4%の70件が「問題あり」でしたが、今回は7.3%まで減少し、広告適正化が大きく進んでいると言えます。
また、同協会では「特定保健用食品の表示に関する公正競争規約」の 2020年度早々の運用開始を目指して、協議会設立準備委員会や表示連絡会などの準備が進められています。

審査結果を確認します。

【審査結果】
TV、新聞、雑誌の広告96件について審査を行った。
(ネットの広告については特定保健用食品広告部会で意見交換会を開催し、ネット広告の特性に応じた留意点の普及啓発活動が進められている。)
TV:52件中「A」判定(0件)、「B」判定(2件)、「C」判定(1件)
新聞:32件中「A」判定(1件)、「B」判定(2件)、「C」判定(0件)
雑誌:12件中「A」判定(0件)、「B」判定(0件)、「C」判定(1件)
(第9回:「A」判定 2件、「B」判定 4件、「C」判定 5件)

「A」判定:
健康増進法に抵触する恐れや、消費者庁の「特定保健用食品に関する質疑応答集」および虚偽、特定保健用食品の許可範囲を超える表現など「「特定保健用食品」適正広告自主基準」に著しく抵触するもので、「新聞」の1件。
前回は 2 件あり今回は1件であったが、疾病名や医師・専門家の推奨となる広告表現は許可表示の範囲を超えており、疾病の治療や予防ができるかのような誤認を与える広告が自主基準に著しく抵触していると判定された。

「B」判定:
「特定保健用食品に関する質疑応答集」および「「特定保健用食品」適正広告自主基準」に抵触するもので、テレビ、新聞の各2件で合計4件。
当該製品を摂取するだけで美容効果があるような表現が消費者に誤認を与えるおそれがある広告や、広告に表示が必要な 3 項目(特定保健用食品である旨、食生活のバランス文言、許可表示文言)の記載がない広告が自主基準に抵触していると判定された。

「C」判定:
「特定保健用食品に関する質疑応答集」および「「特定保健用食品」適正広告自主基準」に抵触するおそれのあるもの、および消費者に誤認を与えるおそれのあるもので、テレビ、雑誌の各1件で合計2件。

広告審査は、企業が出稿した広告について、健康増進法等の関連法規、消費者庁「特定保健用食品に関する質疑応答集」 (※1)および「『特定保健用食品』適正広告自主基準」(※2)等への適合性の観点から審査されています。

(※1)
「特定保健用食品に関する質疑応答集」(消費者庁 平成23年6月)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_190329_0004.pdf

(※2)
「『特定保健用食品』適正広告自主基準」((財)日本健康・栄養食品協会)
http://www.jhnfa.org/topic80a.pdf

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第10回 特定保健用食品広告審査会 審査結果 (2019年10月1日 公益財団法人 日本健康・栄養食品協会)
http://www.jhnfa.org/tokuho-b12.pdf

日時:2019年7月8日(月) 13時00分~17時00分
審査対象:
広告収集期間 2018年10月1日~2019年3月31日
収集件数:96件(内訳)テレビ52件、新聞32件、雑誌 12件
(第9回:117件(内訳)テレビ68 件、新聞34件、雑誌 15件)
審査要領:
外部専門家(第三者委員)4名と協会会員企業のメンバーで構成された広告部会の代表(企業委員)3 名で構成し、企業が出稿した広告について、関連法規および「『特定保健用食品』適正広告自主基準」への適合性を確認した。
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。