金宝堂「家族葬 10.45万円~」のCMに景表法措置命令。低価格訴求と打消し表示の注意点(消費者庁 2026年9月18日)

2026年9月18日、消費者庁は、葬儀サービス「小さな森の家」を提供する株式会社金宝堂に対し、景品表示法に基づく措置命令を行いました。テレビCMでの、貸切ホールを用いる家族葬に対して実際よりも安い価格訴求表示が、有利誤認表示に該当すると認められたものです。

葬儀サービスの料金をめぐっては、消費生活センター等への相談が高い水準で続いています。

本記事では、処分内容と、処分の背景となる消費者相談の状況、テレビCMでの打消し表示の問題、実務上の留意事項を整理します。さらに、会員限定記事では、過去の葬儀サービスの処分事例にみる価格訴求の問題点と、実務で押さえておくべき低価格訴求での打消し表示のポイントを解説します。

《記事内容》
●違反概要
●葬儀サービスでクローズアップされる「高価格・料金」に関する消費者トラブル
●テレビCMで認められなかった打消し表示
●本件に見る実務上の留意事項
●物価高騰の今、低価格訴求で注意すべきことは?

————-
株式会社金宝堂に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁2026年9月18日)
 https://www.caa.go.jp/notice/entry/047522/
————-

違反概要

【対象役務】
「小さな森の家」と称する屋号で供給する、貸切ホールを用いる家族葬に係る葬儀サービス

【表示媒体・表示期間】
・地上波放送を通じて放送したテレビコマーシャル
2025年3月1日~24日、3月26日~4月18日、4月21日、5月1日~22日、5月26日、5月28日~31日

【違反内容】
表示内容:
たとえば
「1日1組 貸切ホール」の文字、
「選べるホールがこんなに」の音声と「えらべるホールがこんなに」の文字、
「お得なプランがこの価格から」の音声と「家族葬 10.45万円~(税込)」の文字
を映像で表示。

あたかも、貸切ホールを用いる家族葬が、最低料金として10万4500円で提供されるかのように表示していた。

実際:
貸切ホールを用いる家族葬の提供を受けるには、僅かな場合を除き、30万8000円以上の費用が必要であった。

【表示例1】(音声:「1日1組限定」)

(消費者庁発表資料より抜粋)

【表示例2】(音声:「お得なプランがこの価格から」)

(消費者庁発表資料より抜粋)

葬儀サービスでクローズアップされる「高価格・料金」に関する消費者トラブル

本件では、葬儀内容に関する表示のイメージと広告の価格との乖離が問題となりました。
葬儀サービスを巡っては、全国の消費生活センター等に寄せられる相談が増加傾向にあり、特に、葬儀費用が想定を上回り高額な料金に納得できないという「高価格・料金」に関する相談が半数前後を占める状況が続いています。
国民生活センターは2026年6月3日に、「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル――『家族葬だから安い』と思っていませんか?」を公表しました。葬儀サービスに関する消費者相談状況を確認します。

——
依然として多い葬儀サービスの料金トラブル
―『家族葬だから安い』と思っていませんか?―
(国民生活センター 2026年6月3日公表)
 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260603_2.html
——

葬儀サービスの相談は年間900件前後、「高価格・料金」の相談が半数前後
2025年度(2026年3月31日までの登録分)の葬儀サービスに関する相談件数は917件で、そのうち「高価格・料金」に関する相談の割合は52.6%であった。
相談件数は2019年度の632件から2024年度の978件へと増加し、「高価格・料金」の割合は2019年度の33.2%から上昇して、2021年度以降は50%前後で推移している。

※「高価格・料金」は、相対的に高いか否かにかかわらず、相談者が高いと申し出た相談を指す。(国民生活センター公表資料より)

主な相談事例
【事例1】
ネット広告で見つけた葬儀社に家族葬を依頼したところ、高額な契約となった
広告にあった50万円のプランで申し込み、遺体を搬送してもらった。翌日の打ち合わせで提案されたのは120万円のプランで、キャンセルするなら搬送費用として20万円を請求すると言われ、約120万円で契約した。後で広告を見直すと、依頼しない場合は搬送費用はかからない旨が記載されていた。広告の50万円に減額してほしい。(2026年1月受付 60歳代 男性)

【事例2】
「一日葬は約30万円」とのチラシを見て依頼したところ、約80万円の契約になった
「最安約10万円、通夜を行わない告別式のみの一日葬は約30万円」のチラシを見て、電話で2度、本当に約30万円でできるのか確認したうえで依頼した。遺体を引き取ってもらった翌日に80万円以上の見積もりを出された。キャンセルしたかったが、仕方がなく、約80万円で契約した。明細にはマイクの使用料や花・仏具の搬入搬出代などが含まれていた。チラシには仏具・仏衣は料金に含まれると記載されており、納得できない。(2025年5月受付 60歳代 男性)

【事例3】
「家族葬50万円」との表示を見て依頼したところ、高額なプランを案内された
インターネットで「家族葬50万円」と表示していた葬儀社を訪ねたところ、50万円のプランは無宗教の人向けだと言われ、140万円のプランを案内された。読経を希望していたので承諾したが、見積書にはプラン名と「一式」の記載のみで明細がなく、会食などの追加費用で総額が200万円を超えた。広告の表示に疑問がある。(2025年11月受付 60歳代 女性)

(国民生活センター公表資料より)

広告に記載された料金と実際に請求される料金との乖離が、トラブルにつながっている様子がうかがえます。
同センターは、葬儀社の業界団体に対し、サービス内容の詳細な説明や、見積書を渡して正確な請求金額を伝えることなどを要望しています。

テレビCMで認められなかった打消し表示

「家族葬 10.45万円~」と強調表示されたCM画面の下部には小さな文字で、次の注記が表示されています。
(消費者庁発表資料【表示例2】)

  • 会員割引適用価格
  • こちらの料金は火葬式プランになります。
  • 10.45万円のプランはお付き添い面会はできません。
  • 火葬料金は別途お客様負担になります。
  • 事前に資料請求と会員登録が必要です。
  • 資料請求・会員登録・年会費無料

この注記によれば、10.45万円は付き添い面会のできない火葬式プランの会員割引価格であり、CMが音声と映像で強調していた「貸切ホール」の家族葬の価格ではなかったと読みとれます。
しかし、表示全体として、「あたかも、貸切ホールを用いる家族葬が、最低料金として10万4500円で提供されるかのような表示」として、有利誤認に当たると認定されました。

命令書の本文では注記への言及はありませんが、報道によると、付き添い面会ができない旨の注意書きが出たのは、CM中で約2秒ほどで、字が小さく見えづらいことから、消費者庁は「一般消費者が認識するのは難しい」と判断したと伝えられています(時事通信、2026年9月18日配信)(※2)。つまり、注記が付されていても打消し表示として認められなかったと考えられます。

強調表示に対する例外条件や制約条件等について、打消し表示を行う際には留意すべきポイントがあります。会員限定記事では、消費者庁の公表した「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」(※1)より、特に動画広告について解説します。

本件に見る実務上の留意事項

(1)表示の基本条件は、価格と表示内容の対応

本件では、「貸切ホール」「選べるホール」といった文字・音声と、「家族葬 10.45万円~」の価格が一つのCMの中で強調されて表示されていました。
最低価格を強調して表示すること自体は、事実に反するものでない限り問題となるものではありません。有利誤認が問われるのは、表示全体から一般消費者が受ける認識と、実際の取引条件が一致しているかどうかです。
低価格を訴求する際、有利誤認表示とみなされないための基本条件は、商品・サービスの内容を表す画像、イラスト、音声などを含む表示と、その金額が適切に対応していることです。表示全体から一般消費者が受け取る内容と価格との対応が、確認の起点になります。

(2)打消し表示での対応にはリスクがある

本件では、「10.45万円のプランはお付き添い面会はできません。」等の注記が付されていても、打消し表示として認められませんでした。
打消し表示を前提とした設計はリスクを伴います。打消し表示は、強調表示だけでは認識できない例外条件や制約条件がある場合に、例外的に使用されるものです。強調表示そのものが実際を反映していることが原則であり、やむを得ず打消し表示を用いる場合も、文字の大きさ、表示時間、音声での表示の有無など、一般消費者が正しく認識できる表示方法が求められます。

(3)広告制作会社に任せきりにしない

措置命令書の事実認定によると、金宝堂は、CMの表示内容の決定を広告制作会社に委ねていましたが、当該表示内容の決定に関与していると認定されています。景品表示法の規制対象は、「自己の供給する商品・サービスの取引についての不当な表示について、その内容の決定に関与した事業者」です。制作会社に委ねていても、表示の責任は事業者が負います。
納品された最終版の映像・音声・注記を、自社で確認・承認する体制が必要です。

物価高騰の今、低価格訴求で注意すべきことは?

葬儀サービスの多様化や費用項目の複雑化を背景に、葬儀サービスの料金相談が高い水準で続くなかでの行政処分となりました。葬儀サービスに限らず、他の商材においても低価格訴求を行うにあたり、価格と表示内容の対応を確認する重要性を示唆しています。

会員限定記事では、過去の葬儀サービスの処分事例にみる価格訴求の問題点、打消し表示における留意事項、実務で押さえるべきチェックリストを解説します。
この機会にぜひ、ご登録ください。(会員登録(無料)はこちらから)

《参考情報》

(※1)
消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180607_0004.pdf

(※2)
時事通信「『小さな森の家』CMで不当表示 葬儀会社に措置命令――消費者庁」
(2026年9月18日) 
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026091800947&g=soc

===================================
◆フィデスの広告法務コンサルティング◆
消費生活アドバイザーが、貴社の広告コンプライアンス
体制構築をサポートします。
詳細はこちら
===================================

————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの更新情報を、ダイジェストでお届けしています。
登録はこちら
————————————————————

関連記事

  1. ファクトリージャパン、整体の「期間限定」割引キャンペーン表示に景表法措…

  2. 今年度5社目。レッドスパイスの首下げ空間除菌製品に景表法措置命令。除菌…

  3. 「明日以降は〇〇円!」将来の販売価格を用いた二重価格表示に注意!ジュピ…

  4. 黒酢サプリ市場6年連続売上トップの「えがおの黒酢」に、景表法措置命令 …

  5. 値引きキャンペーン「1カ月限定」が、実際は5年近く継続。法律事務所に景…

  6. 水素関連食品 3社に景表法措置命令 商品テスト対象銘柄も(消費者庁:平…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

最近の記事

2026年11月
月 火 水 木 金 土 日
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。