買取サービス初の景表法措置命令。ゲオストアの「買取金額UP」期間限定表示(消費者庁:2026年6月11日)

消費者庁は2026年6月11日に、古物の売買等を行うゲオストア(名古屋市中区)が供給するスマートフォン及びタブレットの買取サービスの期間限定キャンペーン表示に対し、景品表示法(有利誤認)の措置命令を行いました。

期間限定での「買取金額UP」をうたいながら、期限後も同じ又はそれよりも有利な割増率で買い取っていたことが、有利誤認とみなされました。本件は、買取サービスに関する初めての措置命令事案となります。

同社は、グループ会社の株式会社ゲオ(映像ソフト、音楽ソフト、ゲームソフト及び書籍の制作、販売並びにレンタル等)※に、表示内容の決定を委ねており、当該表示内容の決定に関与していると認定されました。
※ゲオは、ゲオストアの株式に係る議決権の全てを保有している。

本記事では、処分内容と、買取サービスへの法執行、期間限定表示の違反基準、過去の確約認定と措置命令事案を整理し、実務上の留意事項をまとめました。
さらに、会員限定記事では、期間限定表示と併せて問題となりやすい二重価格表示について、「参考買取価格」と「二重価格表示」の考え方の違い、参考買取価格・買取実績価格の考え方、実務チェック項目を解説します。

《記事内容》
●違反内容
●買取サービスへの法執行、本格化
●期間限定表示における有利誤認の基準
●確約認定か措置命令か判断が分かれる期間限定表示
●本件に見る実務上の留意事項
●買取サービスの「○%UP」、算出の基礎となる価格に注意

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株式会社ゲオストアに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁:2026年6月11日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/046565
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【違反内容】

対象役務:
スマートフォン及びタブレットの買取サービス

表示媒体:
X「ゲオ【GEO】@GEO_official」(ゲオ公式アカウント)
X「ゲオモバイル@GEO_mobile_jp」
「GEO ONLINE」と称するウェブサイトの「特集・キャンペーン」ページ
「ゲオの買取-スマホ・タブレット-」と称するウェブサイトの「スマホ買取キャンペーン」ページ

表示期間:
2025年5月12日から11月9日まで(命令書の別表では、投稿・掲載ごとに期間が記載されている)

表示内容:
例えば、ゲオ公式アカウントの投稿において、2025年5月12日から6月8日までの間、「スマホ・タブレット買取金額 10%UP キャンペーン実施中!」、「2025年6/8日まで スマホ・タブレット買取金額UP! キャンペーン中 高価買取! 即現金お渡し!」等と表示。
このほか、「家に眠っているスマホがある方はキャンペーン期間中がおすすめ」「期間中に売るのが 絶対お得!」「キャンペーン中の今がチャンス!」などと表示。

あたかも、期限内に買取サービスの申込みを行った場合に限り、期限後よりも有利な買取価格の割増率で買取サービスの提供を受けることができるかのように表示していた。

実際:
期限後に申込みを行った場合においても、期限内と同じ又はそれよりも有利な買取価格の割増率で買取サービスの提供を受けることができるものであった。

【表示例(1):X「ゲオ【GEO】@GEO_official」2025年5月12日~6月8日】

(消費者庁発表資料より抜粋)


2025年5月12日~6月8日のキャンペーンにおいては、「AirPods/Apple Watch/Pixel Watchは20%UP」の表示がありますが、違反表示の指摘はされていません。これらの商材に対する買取金額の割増については、6月9日〜8月24日の期間には表示がなく、表示期間後の継続とはみなされなかったと推察されます。
8月25日以降のキャンペーンにおいては、違反表示対象となっています。

【表示例(2):X「ゲオモバイル@GEO_mobile_jp」2025年8月25日~9月7日】

(消費者庁発表資料より抜粋)

買取サービスへの法執行、本格化

今回の処分が示す最初のポイントは、買取サービスの表示が景品表示法の規制対象であることが、処分という形で明確になった点です。
「景品類等の指定の告示の運用基準」は、2024年4月18日の改定で、事業者が一般消費者から物品等を買い取る取引も、物品等を査定するなどして金銭と引き換えるという役務を提供していると認められる場合には、「自己の供給する役務の取引」に当たることを明確にしました(3(4))。

その後、消費者庁は2025年4月30日に「買取サービスに関する実態調査報告書」を公表し、「買取参考価格・買取実績価格」「買取価格アップ」「買取価格保証」「何でも買取り」「どこよりも高く買取り」の5類型の表示について、優良誤認・有利誤認の観点から景品表示法上の考え方を示しました。
このうち「買取価格アップ」について、報告書は、キャンペーンが常態化している場合にも有利誤認のおそれがあるとし、例えば「1月末まで10%アップ」と表示しながら、2月以降も同じ内容を続ける例を挙げています。これは、本件の違反認定と酷似した事例です。

今回、買取サービスでの初の措置命令となった事案ですが、違反認定された表示は2025年5月12日以降のもので、報告書公表後となっています。
消費者庁は報告書において、「買取サービスにおける不当表示等が疑われる事案に接した場合には、迅速に指導を行い是正を図ることを含め、景品表示法に基づき厳正に対処していく。」としており、買取サービスを手掛ける場合は、しっかりと確認、対応が求められます。

期間限定表示における有利誤認の基準

期間限定キャンペーンは、「今申し込むことが得だ」と思わせて申込みを促す手法です。期限後も同様の条件が続くなら、実際よりも有利な条件で提供を受けられるかのように誤認させる有利誤認となります。

本件においては、期限後も「同じ又はそれよりも有利な割増率」で買い取られていたことが問題とされ、期限、割増率と「おすすめ」「絶対お得」「お見逃しなく」といった訴求を組み合わせることで、消費者には、期限を過ぎれば同じ有利な条件では売却できないとの印象を与える表示となっていました。

公表資料によると、6月8日までと表示された10%アップは、翌6月9日からも10%アップで継続されました。その後、火曜日15%アップやWEB限定20%アップが加わり、9月8日からはスマホ・タブレット全品が20%アップとなっています。
表示されていたキャンペーンの期限と買取金額の割増率は、次のとおり推移していました。

【キャンペーン期限と買取金額の割増率(表示媒体別)】

キャンペーン期限
(表示期間)
表示媒体買取商品割増率
2025年6月8日まで
(5/12〜6/8)
ゲオ公式アカウント(X)スマホ・タブレット10%UP
2025年7月6日まで
(6/9〜7/6)
ゲオ公式アカウント(X)スマホ・タブレット10%UP
2025年8月3日まで
(7/7〜8/3)
ゲオ公式アカウント(X)
ゲオモバイル(X)
GEO ONLINE(特集・キャンペーン)
スマホ・タブレット10%UP
火曜日限定15%UP
ゲオの買取(スマホ買取キャンペーン)iPhone・iPad・Androidスマホ・タブレット10%UP
火曜限定15%UP
2025年9月7日まで
(8/4〜9/7)
ゲオ公式アカウント(X)
ゲオモバイル(X)
GEO ONLINE(特集・キャンペーン)
スマホ・タブレット10%UP
火曜日限定15%UP
2025年9月7日まで
(8/4〜8/24)
ゲオの買取iPhone・iPad・Androidスマホ・タブレット10%UP
火曜限定15%UP
2025年9月7日まで
【WEB限定】
(8/25〜9/7)
ゲオモバイル(X)iPhone・iPad20%UP
ゲオの買取Apple製品(iPhone・iPad・Apple Watch・AirPods)20%UP
ゲオの買取スマホ・タブレット・スマートウォッチ・Androidスマホ・タブレット10%UP
2025年11月9日まで
(9/8〜11/9)
ゲオ公式アカウント(X)
ゲオモバイル(X)
GEO ONLINE(特集・キャンペーン)
スマホ・タブレット(全品)20%UP
ゲオモバイル(X)
【WEB限定】
iPhone・iPad
(9/17以降はApple Watch・AirPodsを含む投稿あり)
20%UP
ゲオの買取(スマホ買取キャンペーン)iPhone・iPad・Androidスマホ・タブレット(全品)20%UP
(消費者庁発表資料より作成)


ゲオの買取ページでは、8月4日〜24日に表示されていた10%UPが、8月25日からのWEB限定の表示でも継続し、Apple製品は20%UPに引き上げられています(いずれも期限は9月7日)。
商品、表示期間、申込方法などの条件には違いがありますが、表示された期限後も、期限内と同じ又はそれよりも有利な買取価格の割増率でサービスを受けられたと認定されています。
期間限定キャンペーンを連続して実施する際は、期限後の商品、値引き価格や割増率(プラスマイナス含む)、特典などの条件が完全に同一でなくても、同様のものとみなされないよう注意が必要です。

期間限定キャンペーンの有利誤認の考え方は、過去の処分事例から、以下の記事で解説しています。ご確認下さい。

・通信講座サイトの二重価格と期間限定キャンペーンに有利誤認。キャリカレ2度目の措置命令 (消費者庁:2024年7月19日)

確約認定か措置命令か判断が分かれる期間限定表示

期間限定表示は、措置命令だけでなく確約計画認定を受けているケースも多い違反類型です。

【期間限定表示の確約計画認定・措置命令の主な事例】

区分事業者(業種)日付記事・出典
確約計画の認定caname
(パーソナルジム)
2025年2月26日詳細記事
ビッグローブ(インターネット接続サービス)2025年9月26日詳細記事
ソシエ・ワールド
(エステティックサロン)
2026年3月3日消費者庁の発表
措置命令ユニットコム
(パソコンEC)
2025年3月27日詳細記事
創建(外壁塗装)2025年9月22日詳細記事
エステ3社(シェイプアップハウス、ミス・パリ・ジェイピーエヌ、スリムビューティハウス)2026年3月25日詳細記事

エステサロンでは、HOT PEPPER Beautyのクーポンの期間限定表示という近い類型でも、ソシエ・ワールドは確約認定、3社は措置命令でした。

確約手続は、事業者の自主的な改善や消費者への返金などの取組を評価する制度であるため、すべての事案が対象となるわけではありません。確約手続通知の有無、申請の有無、却下の有無は公表されないことから、ゲオストアが確約手続に至らなかった理由も公表資料からは分かりません。

繰り返しの違反や悪質かつ重大な違反によって対象外となるケースを除いて、確約手続を選択するか否かは事業判断となります。期間限定表示で確約認定と措置命令で対応の分かれたエステサロンの事例を、以下の記事で詳しく解説しています。

・ホットペッパーのクーポン、エステサロン計37店舗で期限後も同条件で継続。エステサロン運営3社に景表法措置命令 (消費者庁:2026年3月26日)

本件に見る実務上の留意事項

本件は買取サービスの事案ですが、買取以外の取引にも共通する実務での留意事項を整理しました。

1. 適切なキャンペーン計画・管理を行う

キャンペーンの期限、条件、割増率や値引き額、特典等の履歴を管理し、キャンペーン実施前に同様の条件で提供した実績および期限後に同様の条件で提供する計画がないかを、企画段階で確認します。特典の内容や名称を切り替える運用も、実質的に同様の条件とみなされないかを慎重に検討しましょう。

2. 問題が判明した後に求められる「迅速かつ適切な対応」

措置命令では一般消費者への周知徹底を「速やかに」行うよう定めています。(周知方法は消費者庁長官の事前承認が必要)
本件でのゲオストアの対応は、命令当日に処分を受けた旨の報告とお詫びの公表にとどまり、そこに表示内容と実際の差についての記載はありませんでした。措置命令が求める一般消費者への周知として、表示内容、実際、違反である旨を備えた周知文が掲載されたのは、命令公表から36日後の2026年7月17日でした。
ゲオストアは、命令当日に処分を受け入れる旨を公表していることから、処分を争う姿勢ではありません。命令を受けて36日後の掲載は、速やかな周知とは言い難いと考えます。

消費者庁の「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」に関するQ&Aでは、販売が終了している場合でも、不当な表示が判明したときは、誤認を排除する対応を速やかに行う必要があるとしています。平時から、速やかな対応がとれるよう、過去に遡っての事実確認、周知、再発防止のための手順と担当を決めておく必要があります。

(ゲオモバイルオンライン:https://geo-mobile.jp/information/archives/2026/20260611_info.html)

3. 措置命令の対象となる表示責任の所在と組織的なコンプライアンス対応

景品表示法の規制対象は、「自己の供給する商品・サービスの取引についての不当な表示について、その内容の決定に関与した事業者」です。
本件の買取サービスを提供しているゲオストアは、表示内容の決定を親会社のゲオに委ねていましたが、当該表示内容の決定に関与していると認定され、措置命令の対象となっています。

グループ内で広告の企画や制作を一括している場合も、役務を供給する事業者として、表示内容を確認する必要があり、組織的なコンプライアンス対応が求められます。

買取サービスの「○%UP」、算出の基礎となる価格に注意

期間限定キャンペーンの有利誤認においては、先のキャリカレ事案のように「通常価格」等による二重価格表示が併せて違反認定されるケースも多く、注意が必要です。
本件においては、機種ごとの「参考買取価格」に「今ならさらにUP!」を添えた表示が見られました。「参考買取価格」は、割増率の算出の基礎となる価格に当たりうる表示ですが、違反認定の対象とはされていません。

買取サービスの「買取参考価格・買取実績価格」に対しては、二重価格表示における比較対照価格での販売期間についての考え方がそのまま適用できません。そこで「買取サービスに関する実態調査報告書」において買取サービスに固有の考え方が示されています。
今後、景表法による表示の取り締まり強化が予想される買取サービスについて、会員限定記事では、通常取引での二重価格と比較しつつ、参考買取価格・買取実績価格の考え方、実務チェック項目を解説します。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。