3月14日、消費者庁は、日用雑貨等の製造及び販売事業者(株)イースマイル(東京都港区)と販売事業者(株)スマイルコミュニケーションズ(東京都渋谷区)が供給する、ダニの捕獲効果等をうたうシリーズ5商品の表示に対して景品表示法措置命令を行いました。
今回は、2社に対してそれぞれ4件、合わせて8件の表示が措置命令の対象となっており、いずれも不実証広告規制(※)による優良誤認となっています。
4件の各表示内容は、以下の効能効果表示です。
- シート状の2商品の「ダニの捕獲効果」
- スプレータイプ商品の「光触媒の作用によるアレル物質分解、不活化する効果」
- スプレータイプ商品の「成分によるダニを寄せ付けない効果」
- スプレータイプ商品の「ハウスダストやダニアレルゲンを低減させる効果、除菌・消臭効果」
2社は表示の裏付けとなる根拠資料を提出しましたが、合理的な根拠とは認められませんでした。
なお、措置命令では、4つの商品についてパッケージ上の不当表示が継続されていることから、イースマイルに対して表示の取りやめを命じています。
処分の概要と、効能効果表示を行う上での留意点を確認します。
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ダニの捕獲効果等を標ぼうする商品の販売事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2024年4月26日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/041427/
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
●違反概要
【対象商品】
➀「さよならダニー」
②「さよならダニーデラックス」
③「さよならダニーアレル物質分解ミスト」
④「さよならダニースプレーワンプッシュ式」
⑤「さよならハクション」
【表示媒体・表示期間】
➀「さよならダニー」
イースマイル
商品パッケージ:2022年12月2日
自社ウェブサイト「さよならダニー」:2022年11月24日~2023年2月27日
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「こだわり宅配便 sponsored bye-Smile」:
2022年11月24日~2023年2月7日
「YouTube」動画広告:2022年11月24日~2023年10月17日
スマイルコミュニケーションズ
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「FUNS MARKET」:2024年6月25日~7月3日
②「さよならダニーデラックス」
イースマイル
商品パッケージ:遅くとも2024年2月9日以降
自社ウェブサイト「さよならダニー」:2024年2月5日~2025年2月6日
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「こだわり宅配便 sponsored bye-Smile」:
2024年2月5日~2025年2月25日
スマイルコミュニケーションズ
「Makuake」と称するクラウドファンディングサービスに開設したウェブサイト:
2023年11月24日~2024年1月8日
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「FUNS MARKET」:
2024年6月25日~7月19日
③「さよならダニーアレル物質分解ミスト」
イースマイル
商品パッケージ:遅くとも2022年12月7日以降
自社ウェブサイト「さよならダニー」:2023年9月8日~2025年2月5日
「YouTube」動画広告:2023年4月3日~2025年2月5日
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「こだわり宅配便 sponsored bye-Smile」:
2023年3月2日~3月20日
スマイルコミュニケーションズ
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「FUNS MARKET」:2024年6月25日~9月2日
④「さよならダニースプレーワンプッシュ式」
イースマイル
商品パッケージ:遅くとも2023年10月25日以降
自社ウェブサイト「さよならダニー」:2023年9月8日~9月13日
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「こだわり宅配便 sponsored bye-Smile」:
2023年9月8日~10月2日
スマイルコミュニケーションズ
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「FUNS MARKET」:2024年6月25日~9月6日
⑤「さよならハクション」
イースマイル
商品パッケージ:遅くとも2023年10月25日以降
自社ウェブサイト「さよならダニー」:2023年9月7日~11月27日
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「こだわり宅配便 sponsored bye-Smile」:
2023年9月8日~10月13日
スマイルコミュニケーションズ
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「FUNS MARKET」:2024年6月25日~9月6日
【違反内容】
表示内容(例):
➀「さよならダニー」②「さよならダニーデラックス」
イースマイル
(商品パッケージ)
商品の画像と共に、「3次元ダニ捕りシートだから1枚でなんと25万匹※捕獲!」
「★約2ヶ月で大量のダニが捕獲される可能性があるため、衛生上、設置して2ヶ月後に新しい『さよならダニー』とお取替えください」等と表示。
スマイルコミュニケーションズ
(「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「FUNS MARKET」)
「1シートあたりのダニの捕獲力 26万匹」、「誘引剤 ダニが好むフェロモンの香り」等と表示。
あたかも、商品に含まれる誘引剤が寝具等に生息しているダニを誘引することにより、約2か月間で本件商品のシート1枚当たり25万匹(もしくは26万匹)捕獲される効果が得られるかのように示す表示をしている又は表示をしていた。
表示例1:商品パッケージ(さよならダニー)

表示例2: 「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト(さよならダニー)

③「さよならダニーアレル物質分解ミスト」
イースマイル
(商品パッケージ)
「アレル物質分解!」、「ダニのフンや死がいを不活化します。」、「光触媒とは? 光触媒とは、光を受けるとその表面で強力な酸化力を生み、接触するダニのフンや死がい、花粉などのアレル物質を酸化分解する環境浄化材料です。」等と表示。
あたかも、本件商品を使用するだけで、商品に含まれる光触媒の作用により、寝具等に付着したダニのフンや死骸、花粉等のアレル物質が分解され不活化する効果が得られるかのように示す表示をしている又は表示をしていた。
スマイルコミュニケーションズ
(「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「FUNS MARKET」)
例えば、「さよならダニーSERIESアレル物質分解ミストなら」、「ダニアレルゲンを90%以上分解して不活化!」等と表示。
あたかも、本件商品をソファ、じゅうたん、寝具等に噴霧するだけで、本件商品③に含まれる光触媒の作用により、ダニアレルゲンを90パーセント以上分解して不活化する効果、
花粉、ウイルス、菌、悪臭成分等を分解する効果並びにアレル物質、花粉及びウイルスを水及び二酸化炭素に分解して無害化する効果が得られるかのように示す表示をしていた。
表示例3: 商品パッケージ「さよならダニーアレル物質分解ミスト」

④「さよならダニースプレーワンプッシュ式」
イースマイル
(商品パッケージ)
「\ダニが逃げだす!よりつかない/」、「たった1プッシュ※1でダニよけ 効果約1ケ月※2」等と表示。
あたかも、本件商品に含まれる成分の作用により、寝具等にダニを1か月間寄せ付けない効果が得られるかのように示す表示をしている又は表示をしていた。
スマイルコミュニケーションズ
(「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「FUNS MARKET」)
例えば、「日中も夜間もず~っとダニよせつけない!」、「ダニが嫌がる“安全性の高いダニよけ成分”が煙のように広がり、生きたダニを忌避+よりつきにくくします。」等と表示。
あたかも、本件商品を寝具、ソファ、カーペット等に噴霧するだけで、本件商品に含まれる成分の作用により、寝具等にダニを1か月間寄せ付けない効果が得られるかのように示す表示をしていた。
表示例4:「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト
(さよならダニースプレーワンプッシュ式)

⑤「さよならハクション」
イースマイル
(商品パッケージ)
「スプレーするだけ 1ヶ月持続」、「ダニのフン 死がい そして花粉 掃除しきれないハウスダストを抑制」、「●ハウスダスト※3を包み込んで分解! 抗アレル物質成分『アレルGプラス』配合」、「●殺虫成分不使用のダニよけ※1 お子様やペットにやさしい!」、「●除菌・消臭効果※4」等と表示。
あたかも、本件商品使用するだけで、本件商品に含まれる成分の作用により、寝具等に付着したダニのフン、死骸、花粉、ほこり等のハウスダストを分解し抑制する効果、ダニを寄せ付けない効果及び除菌・消臭効果が得られるかのように示す表示をしていた。
スマイルコミュニケーションズ
(「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「FUNS MARKET」)
例えば、「ハウスダスト低減率98.9%」、「3 空気中のアレルゲンだけでなく、後から降ってきたアレルゲンも分解+無害化!」等と表示。
あたかも、本件商品を使用するだけで、本件商品に含まれる成分の作用により、1か月間空気中のアレルゲンを分解及び無害化することでハウスダストを98.9パーセント低減させ抑制する効果、ダニを寄せ付けず、ダニの増殖を防ぐことにより、ダニアレルゲンを97パーセント低減させる効果並びに除菌・消臭効果が得られるかのように示す表示をしていた。
表示例5:「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト(さよならハクション)

実際:
消費者庁は、2社に対し当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、2社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
本件商品では、ベッド、車の中、ソファ、カーペットなど、様々な設置個所でのダニの捕獲効果をうたっていました。
効果表示の裏付けとなる根拠資料が「合理的な根拠」として認められるためには、表示された使用方法に対応した実使用空間における実証であることが求められます。
以下の記事では、本事案で「合理的な根拠」として認められなかったと考えられる試験方法と効能効果表示を行う上での留意点について解説します。
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《参考記事》
・度重なる措置命令。過去事例にみる空間除菌製品広告表示で留意すべきポイントとは
・二酸化塩素による空間除菌製品、今回も根拠認められず。興和、中京医薬品、ピップ、三和製作所に景表法措置命令(消費者庁 2024年1月31日)
・2023年度では1件目となる空間除菌製品の景表法措置命令。共立電器産業、フォレストウェル(消費者庁 2023年12月22日)
・プラチナチタン触媒による空間除菌効果の表示根拠認められず。ゼンワールドに景表法措置命令(消費者庁 2023年4月27日)
・空間用虫よけ剤4社に景表法措置命令。四社四様の対応姿勢(消費者庁:平成27年2月20日)
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