課徴金額過去最高16億円超。中国電力の電気料金プランの非公正な料金比較に景表法措置命令。(消費者庁:2024年5月28日)

5月28日、消費者庁は中国電力(株)に対し、景品表示法に基づく課徴金納付命令を行いました。課徴金額は同法の過去最高となる16億5594万円です。

課徴金の対象となった違反行為は、電気料金プランの料金表示についての有利誤認表示で、2023年8月30日に消費者庁による措置命令を受けた事案に対するものです。
不当表示は、同社の自由料金メニューの料金が実際には従量電灯Aよりも高くなる場合があったにも関わらず、自由料金メニューの方が安価であるかのような表示でした。

有利誤認となった理由は、燃料価格が高騰していた時期となる2022年4月1日から2023年1月12日までの期間において、燃料費調整の上限設定がない自由料金メニューと燃料費調整が定額の従量電灯Aを、燃料費調整額を含まない料金で比較していたことによる非公正な料金比較によるものです。

同社は課徴金の納付命令に先立ち、2024年4月30日から返金の手続きを開始していますが、返金措置による課徴金額の減免は認められていません。

今回問題となった非公正な料金比較と打消し表示、課徴金の減免を受けられる返金措置の手続きについて確認します。

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中国電力株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
 (消費者庁 2023年8月30日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/034434

中国電力株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について
 (消費者庁 2024年5月26日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/037971
———


●違反概要
【対象役務】
電気の小売供給サービス
「ぐっとずっと。プラン スマートコース」と称する電気料金メニュー(「スマートコース」)「ぐっとずっと。プラン シンプルコース」と称する電気料金メニュー(「シンプルコース」)

【表示媒体】
自社ウェブサイト
「ぐっとずっと。Eサービスガイドブック」と称するパンフレット

【表示期間】
2022年4月1日から2023年1月12日までの間

【表示内容】
a スマートコース
例えば、「ご家庭のお客さまに最も多くご契約いただいている『従量電灯A』よりも、1年間で約1,200円※1おトクになる新コースです。※2」、「電気のご使用量が比較的少なく、時間帯を気にせずに電気をご使用になりたいお客さま(月平均ご使用電力量400kWh以下)におすすめです。」等と表示するなど、あたかも、少なくとも月平均の使用電力量が400kWh以下の場合のスマートコースの電気料金は「従量電灯A」の電気料金より安価であるかのように表示をしていた。

b シンプルコース
例えば、「『従量電灯A』で電気をたくさん使うご家庭なら年間約10,000円おトクに!※2」、「ご家族が多いご家庭や、昼間は家にいることが多いお客さまなど、ご使用量が月平均400kWhを超えるお客さまにおすすめです。」等と表示するなど、
あたかも、少なくとも月平均の使用電力量が400kWhを超える場合のシンプルコースの電気料金は「従量電灯A」の電気料金より安価であるかのように表示をしていた。

実際:
2022年4月1日から2023年1月12日までの間において、本件2役務に適用される燃料費調整額が従量電灯Aに適用される燃料費調整額を上回るため、スマートコースにおいて月平均の使用電力量が400kWh以下の場合であってもスマートコースの電気料金が、また、シンプルコースにおいて月平均の使用電力量が400kWhを超える場合であってもシンプルコースの電気料金が、それぞれ、従量電灯Aの電気料金より安価にならない場合があった。

【表示例】自社ウェブサイト:スマートコース(赤線部分に打消し表示)

(消費者庁発表資料より抜粋)

【表示例】自社ウェブサイト:シンプルコース(赤線部分に打消し表示)

(消費者庁発表資料より抜粋)

※打消し表示
「※3金額は消費税等相当額を含み、燃料費調整額および再生可能エネルギー発電促進賦課金は含みません。」と記載。

今回問題となった自由料金メニューと従量電灯Aの非公正な料金比較と打消し表示、課徴金の減免を受けられる返金措置の手続きについて、詳しい解説は、以下の記事でご確認下さい。
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≪参考記事≫
・ドミノ・ピザ、チラシの価格表示に景表法措置命令。打消し表示は消費者目線で明瞭に。(消費者庁:2023年6月27日)

・ユニクエスト、葬儀サービスの「追加料金不要」表示に景表法措置命令。Web 広告の打消し表示に注意(消費者庁 平成30年12月22日)

・イオンライフ、葬儀サービスの「追加料金不要」表示に景表法措置命令。「追加料金」請求4割(消費者庁:平成29年12月22日)

・ガリバー運営会社のIDOM、自動車保証の表示に景表法措置命令。打消し表示に注意!

・FREETELのSIMサービス、「業界No.1」「通信料0円」表示に優良・有利誤認の景表法措置命令。打消し表示に注意を(消費者庁:平成29年4月21日)

・セール時の二重価格表示に注意!イオン子会社「SPORTS AUTHORITY」のチラシに景表法措置命令(消費者庁:平成30年1月12日)

・寝具の店頭表示価格 販売実績のない二重価格に景表法措置命令!(消費者庁:平成29年3月8日)

・消費者が有利誤認したという結果は問わない。(有)ミート伊藤の特売日表示に景表法措置命令

・打ち消し表示無効。モデル写真と実質料金に乖離。着物レンタル事業者のDM用カタログに景表法措置命令

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。