消費者庁は、2024年10月3日、美容クリーム等を販売する通信販売業者である(株)SUNSIRI(本店所在地:埼玉県川越市)と同社の代表取締役 榊原 実に対して、特定商取引法違反で3カ月間の業務停止(禁止)を命じました。
処分となった内容は、誇大広告(12条)と最終確認画面の表示義務違反(12条の6第1項)によるものです。
誇大広告については、裏付けとなる合理的な根拠なく、商品を塗布するのみで即座にしわやしみを完全かつ確実に消すことができるかのような表示が優良誤認の認定となりました。
他方、最終確認画面の表示義務違反については、定期購入契約の解除に関する事項を表示していなかったことが違反認定されています。
本件は、2022年6月1日に施行された詐欺的な定期購入商法対策を目的とした、定期購入契約での「最終確認画面」の義務表示事項を定めた特定商取引法改正後、5件目となる法執行です。
また、誇大広告(12条)+最終確認画面の表示義務違反(12条の6第1項)を適用条項とした法執行では、今年3月15日の(株)サン(健康食品)、4月9日の(株)オルリンクス製薬(健康食品)、4月18日の(株)HAL(電子たばこ)に続き、今回で4事案目となります。
処分の内容と、定期購入契約の法執行状況について確認します。
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通信販売業者【株式会社SUNSIRI】に対する行政処分について
特定商取引法違反の通信販売業者に対する業務停止命令(3か月)及び指示並びに
当該業者の代表取締役に対する業務禁止命令(3か月)について
(消費者庁 2024年10月3日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/039565
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【事業概要】
処分対象事業者:株式会社SUNSIRI(本店所在地:埼玉県川越市)
取扱商品:「ケシミシワ」と称する美容クリーム等
取引類型:通信販売 自社が運営するウェブサイト「https:// www.suncosme.com」
代表者:代表取締役 榊原 実
【認定した違反行為】
同社は、次のとおり、特定商取引法の規定に違反する行為をしており、通通信販売に係る取引の公正及び購入者の利益が著しく害されるおそれがあると認められた。
(1)誇大広告(特定商取引法第12条)
少なくとも2024年5月22日から2024年7月2日までの間、本件商品の効能について広告をしたとき、
「塗って速攻?!深いシワも完全消滅!!」「塗ると速攻顔中のシワが完全に消えた!」
「市販の美容品とは違い確実にシワからシミまで消せます!」との文言を表示するとともに、顔面にクリームを塗ってなでるような動作をすると即座にしわが消えたかのような動画及び本件商品の使用前後の状況を対比したかのような画像を表示。
あたかも、本件商品を塗布するのみで即座にしわ及びしみを完全かつ確実に消すことができるかのような表示をしていた。
消費者庁は、SUNSIRIに対し、特定商取引法第12条の2の規定に基づき当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出された。
しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
よって、商品の効能につき、実際のものよりも著しく優良であると人を誤認させるような表示に該当するものとみなされる。
【表示例】
(2)最終確認画面における表示義務違反(特定商取引法第12条の6第1項)
少なくとも2024年5月22日から2024年7月2日までの間、ランディングページ上やチャットボットページ上における定期購入契約の最終確認画面上において、定期購入契約の解除に関する事項を表示していなかった。
解除に関する事項:
1)消費者が、商品の受領後、次回のお届け予定日の15日前までに問合せ窓口に電話をかけ、
2)自動音声による案内が終わった後にショートメッセージサービスにより送信されたURLにアクセスし、申込み時には設定を求められていないパスワードの入力を求められ、パスワード設定の手続を行った後、
3)消費者が自身で前記 URLに戻ってパスワードの入力をし、解約理由を選択し、「コースを解約する」と表示されたボタンをクリックし、名前、電話番号、住所及び解約理由を入力及び送信することによって解約が完了する
等。
【表示例】
本件定期購⼊契約の特定申込みに係る手続が表示される映像面及び利用規約(抜粋)
【処分の内容】
(1)業務停止命令
内容:
通信販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
1)SUNSIRIが行う通信販売に関する商品の販売条件について広告を行うこと。
2)SUNSIRIが行う通信販売に関する商品の売買契約の申込みを受けること。
3)SUNSIRIが行う通信販売に関する商品の売買契約を締結すること。
期間:
2024年10月4日から2025年1月3日まで(3か月間)
業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して3年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを、法人に対しては3億円以下の罰金を科する手続きを行うこととなっています。
(2)指示
1.前記違反行為の発生原因について検証し、違反行為の再発防止策及び社内のコンプライアンス体制を構築(法令及び契約に基づく返金及び解約の問合せ等に適切かつ誠実に対応することを含む。)して、これを同社の役員及び従業員に、業務停止命令に係る業務を再開するまでに周知徹底すること。
2.2024年5月22日から2024年10月3日までの間にSUNSIRIとの間で本件売買契約を締結した全ての相手方に対し、消費者庁のウェブサイトに掲載される、業務停止命令及び本指示をした旨を公表する公表資料を添付して、2024年11月4日までに文書により通知し、同日までにその通知結果について消費者庁長官宛てに文書により報告すること。
3.誇大広告の内容を消費者に周知すること。
4.今後、SUNSIRIが行う通信販売について、特定商取引法の各規定を遵守すること。
上記指示に違反した者には、6月以下の懲役又は100 万円以下の罰金、又はこれを併科、違反が法人の業務の場合には、行為者を罰するほか、その法人に対し100 万円以下の罰金が課せられます。
また、本件では、SUNSIRIの代表取締役 榊原 実に対して、同社が命ぜられた業務停止の範囲内の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)を3か月間禁じる処分が下っています。
※榊原は、SUNSIRIの代表取締役であり、かつ、同社が停止を命ぜられた業務の遂行に主導的な役割を果たしていた。
上記指示に違反した者には、個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金が科せられます。
特商法にも不実証広告規制あり
本件の誇大広告については、商品の効能について特定商取引法第12条の2の規定に基づく優良誤認認定となっています。特定商取引法第12条の2の規定は、事業者に対して期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求める「みなし規定」で、景品表示法の不実証広告規制(法第7条の二項)と同様の規制です。
通販での定期購入を行うにあたり、合理的根拠なく「実際のものより著しく優良であると人を誤認させるような表示」は、景表法だけでなく特商法でも規制されることに留意が必要です。
続く、誇大広告(12条)+最終確認画面の表示義務違反(12条の6第1項)による法執行
本事案は、特商法の誇大広告禁止規定(12条)が初めて適用されたサンの事案から、誇大広告(12条)と最終確認画面の表示義務違反(12条の6第1項)による4事案目の処分となっています。誇大広告に認定された表示内容は、健康食品のNo.1表示(サン)、サプリメントの定期購入契約が容易に解約できるような表示(オルリンクス製薬)、電子たばこでの二重価格表示(HAL)、そして本件の化粧品の美容効果の優良誤認表示となっています。
いずれも、景表法での規制を受ける内容ですが、通販での定期購入契約申込における義務表示違反に関連した誤認表示違反は、今後も特商法の誇大広告禁止規定(12条)を適用した処分が予測されます。
特商法による処分は、景表法での処分よりも事業へのインパクトが大きいと言えます。
特商法と景表法との処分の違いについては、サンの事案で解説しています。
・No.1不当表示、特商法の通信販売規制でも。法改正後2件目の処分、ネット通販定期購入(株)サンに業務停止命令(3カ月) (消費者庁 2024年3月15日)
特定商取引法のポイントについて、以下の記事で解説しています。
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≪参考記事≫
・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)
・消費者保護の更なる強化。特商法・消契法の改正案閣議決定(平成28年3月4日)
・電子たばこのネット通販定期購入(株)HALに特商法業務停止命令(3カ月)。「メーカー希望小売価格」に誇大広告認定 (消費者庁 2024年4月18日)
・定期購入契約が容易に解約できるかのような表示。ネット通販定期購入オルリンクス製薬に特商法業務停止命令(3カ月) (消費者庁 2024年4月10日)
・特商法改正後初の処分。ネット通販定期購入(株)LITに特商法による業務停止命令(6カ月)。積極的な消費者被害救済の指示も(消費者庁 2023年6月28日)
・ネット通販定期購入(株)BIZENTOに特商法による業務停止命令(3カ月)。「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(案)」のパブコメ開始(東北経済産業局 2021年11月25日)
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