コロナウイルス不活化効果、20畳の実空間での裏付けなし マクセルのオゾン除菌消臭器に景表法措置命令(消費者庁 2021年7月28日)

新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った「空間除菌製品」に対する処分が続いています。今回は「オゾン除菌消臭器」に対する景品表示法の措置命令です。

7月28日、消費者庁は電池、記録機器、電気器具等の製造販売業マクセル(株)(京都府乙訓郡)に対し、同社が販売していたオゾン除菌消臭器の自社ウェブサイトの表示に、景品表示法違反の措置命令を行いました。

今回の違反も優良誤認で、不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められませんでした。また、今回は打消し表示に対する指摘はありませんでした。

内容を確認します。

———-
マクセル株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2021年7月28日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/025055/
———

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。

【対象商品】
「オゾン除菌消臭器 オゾネオ エアロ MXAP-AE270」と称する商品

【表示媒体】
「マクセル公式ショップ 本店」と称する自社ウェブサイト
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト
「PayPayモール」に開設した自社ウェブサイト

【表示期間】
2020年10月27日~2021年1月29日までの間

【違反内容】
表示内容:
例えば、
【新型コロナウイルス不活化効果を確認】Maxell マクセル オゾン除菌消臭器 オゾネオ エアロ MXAP-AE270 20畳までの空間を快適空間に オゾンでウイルス除去を徹底サポート」、
「10月27日(火)リリース マクセル製オゾン除菌消臭器で生成した低濃度のオゾンによる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化効果を確認 公立大学法人奈良県立医科大学と2例目となる共同研究を実施」等と表示。
あたかも、対象商品を使用すれば、商品によって発生するオゾンの作用により、リビングルームや玄関などの20畳までの様々な空間において、新型コロナウイルスを除去する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例:

(消費者庁発表資料より抜粋)

実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

●措置命令に対するマクセルの対応
マクセルの持ち株会社のマクセルホールディングスは、措置命令と同日7月28日付で、今回の措置命令に対して、「同製品が生成するオゾンが有するウイルス除去の効果に関して、第三者機関を通じて十分な検証の上で行われていたものと認識しているが、本措置命令による指摘事項については、内容を精査し対応を検討する」とし、「今後も継続して本製品を含めたオゾン除菌消臭器の品質の向上とともに、製品ラインアップの拡充と拡販に努める」と公表しています。



マクセルホールディングス(株)(2021年7月28日)
「消費者庁による当社子会社への措置命令に関するお知らせ」
https://www.nikkei.com/markets/company/sys/redirect_dis.aspr?ano=d10o3u&t=https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/d10o3u/

報道では、

消費者庁の担当官は、「実験は小さな箱の中で行われたものであり、20畳の空間での効果を示すとは言えない。コロナウイルス不活化と言っても、実験はあくまでもシャーレ上のものであり、こちらも実空間での効果を裏付けるものではない」と回答した。

と報じられています。

新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った「空間除菌剤」に関しては、首下げ型の製品や室内用のマイナスイオン発生器等の製品に対して複数の措置命令が出されています。

・コロナ予防効果広告、GSDのマイナスイオン発生器に景表法措置命令(消費者庁 2021年3月31日)

・「滝風イオンメディック」のアップドラフトに景表法措置命令。ウイルス除去、空間除菌、疾病予防効果に優良誤認(消費者庁:2021年6月17日)

・「消費者庁公認」を謳った首下げ型の空間除菌製品。ドラッグストアチェーンのププレひまわりの店頭POP広告に景表法措置命令(消費者庁 2021年6月11日)

・今年度5社目。レッドスパイスの首下げ空間除菌製品に景表法措置命令。除菌効果への打消し表示認められず(消費者庁 2021年3月18日)

・Nature Link、萬祥、首下げ空間除菌製品2社の表示に景表法措置命令。分かれる両社の対応(消費者庁 2021年1月15日)

通販事業者 東亜産業、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)

・Salute.Lab、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。実証データは、訴求内容に適切に対応を(消費者庁 2020年12月22日)

いずれのケースにおいても、不実証広告規制を用いた処分であり、多くのケースにおいて「効果を保証するものではない」旨の打消し表示が記載されていましたが、打消し効果を認められていません。

新型コロナウィルス関連に限らず、その他の広告においても、商品の効能効果を謳う表示に対する不実証広告規制による処分は、引き続き厳しく執行されることが予測されます。

しっかりと、合理的根拠や打消し表示の考え方について理解し準備しましょう。
フィデスがサポートいたします。

・景品表示法上の表示の裏付けとなる「合理的な根拠」。効能効果の適切な実証方法

消費者庁が本気で調査!打消し表示は明瞭に

《参考記事》

・携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導について
(消費者庁 2020年5月15日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/019867/

気になる消費者庁のネット広告監視動向と処分。新型コロナウイルス予防関連商品は注意!

「空間除菌剤」17社、景表法措置命令。大幸薬品の新たな広告も問題視(消費者庁 平成26年 3月27日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。