通販事業者 東亜産業、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)

8月28日、消費者庁は(株)東亜産業に対し、同社が自社ウェブサイトと出店している楽天市場のページ上で販売していた「首下げ型の空間除菌製品」の表示に、景品表示法違反の措置命令を行いました。
東亜産業は東京都の生活雑貨、化粧品等などの製造販売、通信販売を行っている事業者です。

「空間除菌剤」に関しては、消費者庁が実施した新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った商品のネット広告緊急監視(※)において、改善要請を受けた品目に含まれており、監視の目が強まっていました。

(※)
3月10日(第1弾)、3月27日(第2弾)、6月5日(第3弾)の3度にわたって実施され、99事業者125商品の表示に改善要請と一般消費者への注意喚起が行われた。
・続く、消費者庁の新型コロナウイルス予防商品緊急監視(第3弾)、35事業者38商品の表示に改善要請 (消費者庁  2020年4月1日~5月22日)

更に、「首下げ型の空間除菌剤」に関しては、5月15日に販売事業者5社に対する行政指導も行われています。
・携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導について
(消費者庁 2020年5月15日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/019867/

また、過去においては2014年3月に、二酸化塩素を使った空間除菌剤を販売していた大幸薬品(大阪)や大木製薬(東京)など17社に対し、一斉処分の措置命令が出されています。

・「空間除菌剤」17社、景表法措置命令。大幸薬品の新たな広告も問題視
(消費者庁 平成26年 3月27日)

今回の違反も優良誤認で、不実証広告規制(※)を用いた処分となっています。
表示の裏付けとなる「合理的な根拠」と、東亜産業の主張を確認してみました。

———-
株式会社東亜産業に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2020年8月28日)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_200828_1.pdf
———

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


【対象商品】
「ウイルスシャットアウト」と称する商品

【表示媒体・表示期間】
自社ウェブサイト:2020年2月26日
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト:2020年2月27日

【違反内容】
表示内容:
自社ウェブサイト:
商品及びその周囲に浮遊するウイルスや菌のイメージ画像並びに商品の容器包装の画像と共に、
「緊急ウイルス対策!!」
「流行性ウィルスからあなたを守ります!」
「二酸化塩素配合の除去・除菌成分が周囲に浮遊するウイルスや菌を除去します。」
「この時期・この季節に必携!ウイルスの気になる場所でご使用ください。」
「首にかけるだけで空間のウイルスを除去!」
等と記載することにより、あたかも、対象商品を身につければ、身の回りの空間におけるウイルスや菌を除去又は除菌する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト:
商品から成分が出ているイメージの画像及び商品を首にかけた人物の写真と共に、
「ウイルス対策 塩素成分で空間の除菌」
「この時期・この季節に必携」
「幅広く・様々な環境に最適! 学校 オフィス 病院 電車」
等と記載することにより、あたかも、対象商品を身につければ、身の回りの空間におけるウイルスや菌を除去又は除菌する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例:自社ウェブサイト

(消費者庁発表資料より抜粋)

実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

●打消し表示について
自社ウェブサイトにおいて、「※使用環境によって効果が異なります。」と表示していたが、当該記載は、一般消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされています。
(表示例、赤枠部分)

——

●不実証広告規制による、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」と認められるには
今回の不実証広告規制による、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」として提出されたデータは、「狭い密閉空間(1.6リットルや10リットルの空間)での試験結果で、我々の生活空間とはかけ離れたものだった」(消費者庁 表示対策課)と説明としています。
(Wellness Daily News 2020年8月28日)
https://www.wellness-news.co.jp/wng_news/2020/08/20191031103132-0405.html

不実証広告規制で求められる根拠資料が、表示の裏付けとなる合理的な根拠であると認められるためには,次の2つの要件を満たす必要があります。
(1)提出資料が客観的に実証された内容のものであること。
(2)表示された効果、性能と、提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。

商品の性能や効果に関する表現は、その根拠となる実証データと照らし合わせて、内容が適切に対応しているか、どこまでの内容が訴求可能であるか、特に注意が必要です。

●消費者庁と噛み合わない東亜産業の主張
東亜産業は、自社HPにて、「本日の消費者庁のウイルスシャットアウトに関する発表につきまして」という件名で、以下の内容を説明しています。

・楽天市場サイト等のWEBサイトの表示に対して、消費者庁から、「再発防止命令」を受けた。(製品パッケージの表示は対象となっていない)
・パッケージの裏面において、「風のある屋外や、空気の流れが強い場所では十分に効果が発揮できません」との表示を行っていたが、楽天市場サイト等においては、製品パッケージの表面の画像のみを表示し、裏面の画像を表示していなかった。
ウェブサイトで購入したお客様に対し、必要な表示が欠けていたことについてお詫びする。
・弊社は、本件製品が二酸化塩素を実際に発生させる実験(①)のほか、本件製品の原材料として使用している二酸化塩素発生剤を使用した除菌・ウイルス除去試験(②)の結果を消費者庁に提出した。
・しかし、消費者庁によると、①における二酸化塩素と②における二酸化塩素は化学上異なる物質なので、効果効能の根拠としては認めないと回答。
・弊社は、複数の実験を行い、いずれも二酸化塩素が発生している場合は、化学上同じ物質(ClO2)が発生していると考えるのが常識であると考える。

「消費者庁に対し実験資料を提出して説明をしてきましたが、残念ながらご理解頂けませんでした。今後、正式な手続きを踏むことによって正当性を明らかにして参りたい。」と発表しています。

(株式会社東亜産業HP 令和2年8月28日)
https://toa-ind.com/products.html

両者の主張は全くかみ合っていませんが、仮に二酸化塩素自体の効能効果が実証されたとしても、「二酸化塩素配合の除去・除菌成分が周囲に浮遊するウイルスや菌を除去します。」「幅広く・様々な環境に最適! 学校 オフィス 病院 電車」「●有効範囲の目安として、装着周囲約1m」といった表示による効果、性能と、提出資料によって実証された内容(狭い密閉空間での試験結果)が適切に対応していると認められるとは考えられません。

パッケージに表示されている「風のある屋外や、空気の流れが強い場所では十分に効果が発揮できません」という表示が記載されていたとしても、Webサイトの効果、性能表示に対して、その打消し効果が認められることも難しいと思われます。

性能に関する表示への不実証広告規制による類似の事案では、過去に以下のものがありました。

2012年11月:シャープ「プラズマクラスターイオン技術を搭載した電気掃除機」

2014年3月:大幸薬品や大木製薬など17社の「二酸化塩素を使った空間除菌剤」

2014年5月:エム・エイチ・シー「車載用マイナスイオン発生器」

2015年2月:空間用虫よけ剤4社に景表法措置命令

2019年5月:通販事業者BLI「害虫駆除用品」

今後も、新型コロナウィルス関連広告に対する法執行は続くことが予想されます。
しっかりと、効能効果の根拠資料について理解し準備しましょう。
フィデスがサポートいたします。

======================================
◆エビデンスチェックコンサルティング◆
試験デザインや測定方法など科学的視点から、
広告表現と試験データの対応を検証します。
詳細はこちら
======================================

《参考記事》
・景品表示法上の表示の裏付けとなる「合理的な根拠」。効能効果の適切な実証方法
・気になる消費者庁のネット広告監視動向と処分。新型コロナウイルス予防関連商品は注意!

————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの1週間分の情報を、ダイジェストでお届けしています。

登録はこちら

————————————————————-

関連記事

  1. 糖質カット炊飯器の不当表示問題。消費者庁と国センとで異なる違反認定の視…

  2. 続く中古自動車の景表法措置命令、今回は横浜、川崎、群馬の3社 (消費者…

  3. タカショー 屋外用シェードの日よけ効果表示に景表法措置命令 (消費者庁…

  4. ジェイコムウエストのガス料金の料金比較に景表法措置命令。料金設定の違い…

  5. 第三者認証基準を超える性能表現が問題に。タイガーの電気ケトルの転倒湯も…

  6. 次亜塩素酸水、成分濃度表示下回る3社に景表法措置命令。除菌効果表示も根…

コメント

最近の記事

2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。