シミ消し化粧品のアフィリエイト広告に、初の消費者安全法による注意喚起 (消費者庁 2021年3月1日)

消費者庁は、3月1日、「シミが消える」とうたう化粧品・医薬部外品の虚偽・誇大なアフィリエイト広告に対して、消費者安全法(38条第1項)に基づく初の注意喚起を行いました。
消費者庁と長野県の合同調査によるものです。

アフィリエイト広告で宣伝していた商品は、(株)Libeiroの化粧品『エゴイプセビライズ』と(株)シズカニューヨークの医薬部外品『シズカゲル』の通信販売事業者2社2商品ですが、別々の商品で両社に関係はありません。しかし、どちらのアフィリエイト広告も、同一のアフィリエイターが作成していたことから、合わせての公表となっています。

今回の注意喚起は商品ではなく、アフィリエイト広告に対するもので、「消費者被害の発生又は拡大の防止に資する情報」として、販売事業者名と商品名の公表に留まり、対象商品の売上や販売数、事業者の住所、代表者名、アフィリエイター名の公表はされていません。

注意喚起の内容と問題のポイントについて確認します。

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虚偽・誇大なアフィリエイト広告に関する注意喚起
(消費者庁 2021年3月1日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/023269/
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●消費者被害の状況
Libeiroの化粧品『エゴイプセビライズ』とシズカニューヨークの医薬部外品『シズカゲル』のアフィリエイト広告を見て通信販売で購入した消費者から、「シミが消えるなどと表示されていたので信じて購入したが、表示されていたような効果はなかった。」といった相談が、各地の消費生活センターなどに数多く寄せられた。相談者の多くは40~60代女性。
『エゴイプセビライズ』499件(2019年6月1日~2021年1月31日の間)
『シズカゲル』について239件(2017年6月1日~2021年1月31日の間)
寄せられた相談のうち、『エゴイプセビライズ』153件、『シズカゲル』98件については販売業者へ商品代金を支払い済み。支払われた金額の合計は『エゴイプセビライズ』が約71万円(平均4,670円)、『シズカゲル』が約56万円(同5,700円)。

●対象事業者と商品
対象事業者:株式会社 Libeiro(法人番号 3010901038201)商品:エゴイプセビライズ
対象事業者:株式会社シズカニューヨーク(法人番号 5011001103942)商品:シズカゲル

●アフィリエイト広告の内容
Libeiro 『エゴイプセビライズ』のアフィリエイト広告の内容:
ドメイン名「solidtrain.xyz」(2020年3月5日時点の表示)
あたかも、当該商品を使用すれば3日から1週間程度で肌のシミが確実に消えるかのように表示していたが、実際には、当該商品には肌のシミをこのような短期間で確実に解消する効果はなかった。(虚偽・誇大な広告・表示)

表示内容:

(消費者庁資料より引用 画像の目隠しは消費者庁が加えたもの)

ドメイン名「cerotte.com」(2019年12月11日時点の表示)
当該商品を使用したことにより1週間以内に肌のシワが解消したという内容の体験談を表示していたが、実際には、この体験談は、このアフィリエイト広告を作成したアフィリエイターが画像やテキストを編集して実在の消費者の体験談であるかのようにみせかけた架空のものだった。(虚偽・誇大な広告・表示)
また、あたかも、2019年12月11日に限り、通常価格 9,800 円の「エゴイプセビライズ」が 2,980 円で購入できるかのように表示していたが、実際には、当該商品はこの日以降も2,980 円で販売されていた。(虚偽・誇大な広告・表示)

表示内容:

(消費者庁資料より引用 画像の目隠しは消費者庁が加えたもの)

シズカニューヨーク『シズカゲル』のアフィリエイト広告の内容:
ドメイン名「fruitssand.xyz」(2019年11月20日時点の表示)
あたかも、当該商品を使用すれば誰でも3日程度で肌のシミが確実に消えるかのように表示していたが、実際には、当該商品には肌のシミをこのような短期間で確実に解消する効果はなかった。(虚偽・誇大な広告・表示)

表示内容:

(消費者庁資料より引用 画像の目隠しは消費者庁が加えたもの)

ドメイン名「cerotte.com」(2019年11月26日時点の表示)
当該商品を使用したことにより短期間で肌のシワが解消したという内容の体験談を表示していたが、実際には、この体験談は、このアフィリエイト広告を作成したアフィリエイターが画像やテキストを編集して、実在の消費者の体験談であるかのようにみせかけた架空のものだった。(虚偽・誇大な広告・表示)
また、あたかも、2019年11月26日までに限って販売されるものであり、在庫数が僅かであって売り切れた場合には長期間購入できなくなるかのように表示していたが、実際には、当該商品はこの日以降も販売されており、また、在庫が僅少になってはいなかった。(虚偽・誇大な広告・表示)

表示内容:

(消費者庁資料より引用 画像の目隠しは消費者庁が加えたもの)

●広告主、ASP、アフィリエイターの広告への関与
・Libeiroとシズカニューヨークは、それぞれASPに対して広告業務を依頼し、ASPがアフィリエイターへアフィリエイト広告の作成を再委託することを承知していた。また、アフィリエイト広告の表示内容の決定に関与していた。
(2社はアフィリエイト広告の内容に修正指示をしており、問題があることを認識していた。)
・それぞれのアフィリエイト広告の中には、両商品が別の商品であるにもかかわらず、商品名以外はほとんど同じ画像や文章が使われていた。(同一のアフィリエイターが作成したもの)

●Libeiro 及びシズカニューヨークのアフィリエイト広告の現在の状況
事故認定された広告は、現在閲覧できないが、2021年1月時点において、これらの広告と同様に、肌のシミを短期間で解消する効果があるかのような内容の広告が公開されていた。

●アフィリエイト広告内容への関与を否定する2社の弁明
内藤誠消費者政策課財産被害対策室長の発表による2社の弁明内容は以下の通り。
Libeiro:
信用できるASPを介したアフィリエイト広告の実行あるいは自社でアフィリエイト広告を管理できる体制構築をしていく。
シズカニューヨーク:
アフィリエイト広告については自社の責任ではない。

注意喚起と同日に2社のウェブサイト上に掲載された注意喚起に関するお詫び文では、「当該広告については、弊社の業務委託先が制作および運用していたものであり、弊社にて広告内容を作成し、あるいは広告内容について指示をしていたものではないが、結果的に弊社商品に関して不適切な広告が行われたことにについてお詫びする。今後は、弊社および、弊社取引先企業においても、法令順守をいっそう徹底する。」としている。

消費者庁による注意喚起に関するお詫びについて
(株式会社Libeiro  2021年3月1日)
キャプチャ画面
https://libeiro.co.jp/information/20210301/

消費者庁による注意喚起について
(株式会社シズカニューヨーク  2021年3月1日)
キャプチャ画面
https://by-shizuka.jp/headsup/

肌のシミを短期間で確実に解消する効果について、2社ともに消費者庁の調査に対し、即効性がないとしており、それをもって誇大広告であると認定しています。
また、2社は、今回事故認定されたアフィリエイト広告の表示内容の決定への関与が認められています。
今後、景品表示法の措置命令に発展する可能性もあります。

アフィリエイト広告が違反表示とみなされた措置命令事案には、過去に、サプリメントや下着の痩身効果、石けんの美白効果に対するブレインハーツ事案(消費者庁 2018年6月15日)と、サプリメントの痩身効果に対するニコリオ事案 (埼玉県 2020年3月31日)があります。

・アフィリエイトサイトの表示も規制対象!ブレインハーツの通販サイトに景表法措置命令(消費者庁:平成30年6月15日)
埼玉県、ダイエットサプリ通販のニコリオに景表法措置命令と特商法業務停止命令。アフィリエイトも注意! (埼玉県 2020年3月31日・4月1日)

また、大阪府警による健康食品通販会社ステラ漢方(株)及び、広告代理店、委託先の制作会社の社長や従業員の薬機法違反逮捕が、2020年7月にあります。

・健康食品「肝パワーEプラス」の記事態広告アフィリエイトで薬機法違反。広告主、広告代理店、制作会社社員が同時逮捕

今後、アフィリエイト広告の管理責任について、広告主となる事業者やASPには強く求められていくことになりそうです。

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《参考記事》
・悪質業者に対する徹底した法執行。景表法と特商法のダブル適用を行った行政の意図とは

・健康食品の健康被害と商品名公表(東京都 平成28年度「『危害』の消費生活相談の概要」)

・ネット通販定期購入の表示に特商法での処分 (株)TOLUTOと前代表取締役等に業務停止命令(消費者庁 2019年12月10日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。