エムアンドエムに景表法措置命令 HMBサプリの筋肉増強効果と痩身効果に不実証広告規制 (消費者庁 2020年3月6日)

消費者庁は3月6日、筋肉増強効果と痩身効果を標ぼうするサプリメントの通信販売業者(株)エムアンドエム(東京都)に対し、景品表示法違反(優良誤認) の措置命令を行いました。
筋肉増強効果と痩身効果に対する優良誤認は不実証広告規制(※)を用いた処分となっています。「健康的な食事や運動と共に」摂取する表現が用いられていましたが、優良誤認とみなされました。
「※適度な食事と運動後の一例の個人の感想で結果には個人差がございます。」といった体験談に対する打消し表示も、打消し効果が認められませんでした。

処分のポイントについて確認します。

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株式会社エムアンドエムに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2020年3月6日)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_200306_02.pdf
———
(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


●違反概要
【対象商品】
「ファイラマッスルサプリHMB」と称する食品

【表示媒体・期間】
自社ウェブサイト
少なくとも2019年4月10日、5月17日、7月3日、8月19日、9月19日、9月30日、10月10日、10月23日
並びに遅くとも2020年1月28日~同年2月25日までの間

【違反内容】
《優良誤認表示》
例えば、
「1日たった4粒飲めば体が引き締まる!」、「筋肉をつけ代謝を上げつつ、余分な摂取をスッキリさせることで、」、「リバウンド知らずの理想の体に!」、
「POINT1 話題のHMBに加え、アスリートも多数摂取“BCAA”も高配合! 2種のビルドアップ成分を超凝縮!プロテインよりボディメイクの実感度アップ!」、
「POINT2 ボディメイクをさらに加速させる、スッキリサポート成分! 自然由来のスッキリ成分を凝縮! HMBやプロテインだけだと、筋肉はついても痩せなかった・・・。 そんなお声が多い中、ファイラは絶妙なバランスでスッキリ系成分を配合することで、ビルドアップとスッキリの両立を実現しました!」、
「【インディアンデーツ】インディアンデーツは、アフリカ原産の天然植物です。現地では乱れた食生活を整える民間薬として用いられています。また、余分な摂取をスッキリサポートする働きが期待されています。」、
「アップ系×カット系W配合 『ファイラマッスルサプリHMB』は、多くのお客様に支持される筋肉サプリです!」、
「ビルドアップしたい方、ダイエット目的の方、その両方の方など様々な方に広くご愛用いただいております。」、
「健康的な食事や運動のお供に、毎日同じタイミングでお飲み下さい。 摂り続けるほど実感度アップが期待できます。1日4粒以上を目安に、毎日、お飲み下さい。」
等と記載。

あたかも、 健康的な食事や運動と共に、本商品を毎日4粒を目安に摂取し続ければ、商品に含まれる成分の作用により、効率よく筋肉増強効果及び痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:ファイラマッスルサプリHMB

(消費者庁資料より引用)

実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

●体験談広告の打消し表示について
(1)例えば、少なくとも平成31年4月10日に、「※適度な食事と運動後の一例の個人の感想で結果には個人差がございます。」と表示していた
(2)例えば、「理想の体※2」との表示について「※2 健康的で美しい体」と表示していた
が、当該記載は、一般消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされています。

【打消し表示例(2)】

(消費者庁資料より引用)

エムアンドエムは、処分が公表された3月6日に、自社HPで措置命令に対する告知を「弊社商品に関するお知らせとなります。」というタイトルリンクで掲載。(リリース本文タイトルは「「ファイラマッスルサプリHMB」の広告表示に対する消費者庁の措置命令について」)
措置命令の原因について、「弊社の意図する商品に関する訴求内容と、一般消費者が商品紹介ページ(LP)から受ける印象が異なる可能性があることについて、弊社における検討が十分でなかったため」と述べています。
再発防止として、「新たに表示管理担当者を指名し、商品紹介ページ(LP)に関する責任を明確にするとともに、社内の決裁体制を整え、必要に応じて外部専門家等の意見を聴取することとした」としています。

(株)エムアンドエムHP掲載(2020年3月6日)
「ファイラマッスルサプリHMB」の広告表示に対する消費者庁の措置命令について
https://www.mandm-ltd.jp/news20200306.html

平成26年12月の景表法改正により、事業者に広告表示を適正管理するための体制整備の義務付けが盛り込まれました。不当な表示が行なわれたか、その結果として消費者に被害が認められたかに関わらず、管理体制に不備があれば「公表」というペナルティが事業者には課されることとなります。

広告の社内適正管理についてしっかりとした体制づくりが求められます。
以下の記事もご参考ください。

・景表法改正 事業者が講ずべき広告表示の適正管理の指針案(消費者庁)

・景表法改正、広告表示の適正管理のための7つのポイン+1

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《参考記事》
・シミ消し、痩身効果、二重価格、Growasの健食、化粧品、下着5商品に景表法措置命令(消費者庁:平成31年3月28日)

・痩身効果及び筋肉増強効果を謳った加圧シャツの表示に景表法措置命。消費者庁による9社一斉処分(消費者庁:平成31年3月22日)

・課徴金1億886万円 シエル「置き換えダイエット」系青汁に景表法措置命令

・言歩木のアイケア酵素飲料に景表法措置命令と課徴金1814万円

・痩身系健康茶、ティーライフ(株)に対し景表法措置命令。体験談広告の問題点は?
(消費者庁:平成29年9月29日)

・景品表示法(優良誤認)の不実証広告規制。表示の裏付けとなる「合理的な根拠」の判断基準とは

・体重増量効果サプリ ふるさと和漢堂に景表法措置命令 (消費者庁 2019年6月28日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。