東京都 子供用ライフジャケットの浮力表示に優良誤認の景品表示法措置命令。表示の裏付けとなる根拠資料の確認を(東京都 2019年12月17日)

12月17日、東京都は大阪府の釣具・レジャー用品の製造・輸入販売事業者(株)ラムセスに対し、同社が販売していた子供用ライフジャケットの浮力表示に、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。

表示媒体は、商品に添付している取扱説明書で、優良誤認は不実証広告規制(※1)を用いた処分となっています。

東京都では、2019年3月に、消費者や事業者等に子供用ライフジャケットの安全な使用についての情報提供を行うことを目的として、各種調査(※2)を行っており、浮力についての試験・表示調査も行っていました。
その消費者アンケート調査によると、ライフジャケットを購入する際に重視する点として「浮力」を挙げる消費者が50.5%と半数を超えていることから、「浮力」は消費者がライフジャケットを選ぶ重要な基準となる品質として、今回単なる「誤表示」ではなく、優良誤認表示にあたるとみなされました。

(※2)
平成31年3月「子供用ライフジャケットの安全な使用に関する調査」(東京都生活文化局)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/torihiki/hyoji/keihyo/documents/lifejacket3.pdf

処分のポイントについて確認します。

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子供用ライフジャケットの浮力について不当表示を行っていた事業者に景品表示法に基づく措置命令 (東京都 2019年 12月17日)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/torihiki/hyoji/keihyo/20191217.html
———
(※1)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


【対象商品】
「ジュニア用フローティングベスト」と称する子供用ライフジャケット
(型番 ラムセス LJ-1007)

【表示媒体】
商品に添付している取扱説明書

【表示期間】
2010年11月19日から2019年8月30日までの間

【違反内容】
表示内容:

・「もちろん、浮力については、運輸省「小型船舶安全規則」に定める、7.5kg/24 時間(小児用は5kg)以上の性能を備えています。」
と記載することにより、あたかも、本件商品が、小型船舶安全規則に定める5キログラムの質量の鉄片を淡水中で 24 時間以上支えることができる浮力を備えているかのように表示をしていた。

実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社は、期間内に資料を提出しなかった。

措置命令では、同社に、以下を命じています。
1. 各事業者が行った表示は景品表示法に違反するものである旨を、一般消費者に周知徹底すること。
2. 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
3. 今後、同様の表示を行わないこと。

ラムセスは、自社Twitterアカウントにて、景表法違反の報告と改善策として「日本の製品安全試験センターに浮力検査を依頼して、近日中に正確な浮力を公示する」、また、「今後は、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有した上で、誤った表記などが行われないよう、また商品を製造する際、役員、従業員一人一人が誤表示などがないか確認し、工場への指導も徹底するなど、再発防止に努めていく」と発表しています。

釣具・アウトドア用品のラムセス
https://twitter.com/lamses_jp?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Eembeddedtimeline%7Ctwterm%5Eprofile%3Alamses_jp&ref_url=http%3A%2F%2Flamses.jp%2F

消費者への周知徹底の方法や再発防止策については、あらかじめ、東京都の承認を受ける必要があり、Twitterでの告知は措置命令に基づく公示としては不十分であると考えられます。

東京都は、事業者に対して、以下の要請を行っています。
メーカー・卸売事業者に対して:
作成する商品説明・販売促進資料は、販売事業者が行う消費者向けの広告表示に大きな影響を与えることから、合理的な根拠のない内容は記載せず、また、表示と異なる商品とならないような品質の確保に努める。

販売事業者に対して:
メーカーや卸売事業者から資料を取り寄せ、商品の品質等の根拠を確認した上で広告表示を作成し、資料を保管する。
他社の広告表示や雑誌の記事等を内容の確認なしに、そのままコピー&ペーストして広告表示に使用しない。

性能に関する表示への不実証広告規制による類似の事案では、過去に以下のものがありました。

2012年11月:シャープ「プラズマクラスターイオン技術を搭載した電気掃除機」

2014年3月:大幸薬品や大木製薬など17社の「二酸化塩素を使った空間除菌剤」

2014年5月:エム・エイチ・シー「車載用マイナスイオン発生器」

2015年2月:空間用虫よけ剤4社に景表法措置命令

2019年5月:通販事業者BLI「害虫駆除用品」

不実証広告規制で求められる根拠資料が、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには,次の2つの要件を満たす必要があります。
(1)提出資料が客観的に実証された内容のものであること。
(2)表示された効果、性能と、提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。商品の性能や効果に関する表現は、その根拠となる実証データと照らし合わせて、内容が適切に対応しているか、どこまでの内容が訴求可能であるか、特に注意が必要です。


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《参考記事》
・景品表示法上の表示の裏付けとなる「合理的な根拠」。効能効果の適切な実証方法

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。