景表法改正、広告表示の適正管理のための7つのポイン+1

平成26年12月1日に施行の景品表示法の改正。
「不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律(平成26年法律第71号)」

前回の記事では、事業者が講ずべき広告表示の適正管理の指針案を取り上げました。(平成26年9月16日まで、パブコメ募集中)
この指針案と併せて、事業者の理解を助けることを目的とした具体的事例が公表されています。事業者がどのような管理措置を採ることが求められているか、ポイントを確認します。

≪事例の位置づけ≫
当該事例と同じ措置ではなくても、不当表示等を未然に防止するための必要な措置として適切なものであれば、措置を講じていると判断される。
(事例は、景品表示法第7条第1項に定められた必要な措置を網羅するものではない)

≪事業者が講ずべき表示等の管理上の措置の具体的事例(案)≫
1. 景品表示法の周知・啓発の例
・関係従業員等に対し、朝礼・終礼、メール等によって、景品表示法の考え方を周知する、社外講習会等に参加させる、社内の教育・研修等を行う。
・社内報、社内メールマガジン、社内ポータルサイト等において、法令の遵守についての事業者の方針、自社に関わる法令の内容、自社の取扱い商品・役務と類似する景品表示法の違反事例等を掲載し、周知・啓発する。
・適正表示のための定例的な広告審査会(複数部署が参加して表示を相互に批評する会合)を開催する。

2. 法令遵守の方針や手順の明確化の例

・社内規程に以下を定める。
法令遵守の方針等
法令違反があった場合、役員への厳正な対処方針及び対処の内容
不当表示等が発生した場合の連絡体制、具体的な回収方法、関係行政機関への報告手順
・パンフレット、ウェブサイト、メールマガジン等の広報資料に法律遵守に関する事業者の方針を記載する。
・禁止される表示等の内容、表示等を行う際の手順を定めたマニュアルを作成する。

3. 表示に関する情報の確認例
企画・設計段階:
・最終的な商品・役務についてどのような表示が可能なのか、又は当該表示をするためにはどのような根拠が必要なのか検討する。
・特定の表示を行うことを想定している場合には、どのような仕様であれば当該表示が可能か検討する。
調達段階:
・調達する原材料等の仕様、規格、表示内容を確認し、最終的な表示の内容に与える影響を検討する。
・無作為に抽出したサンプルの成分検査を実施する。
生産・製造・加工段階:
・ 生産・製造・加工が仕様書・企画書と整合しているかどうか確認する。
・表示に影響を与え得る生産・製造・加工の過程における誤りを防止するために、必要な措置を講じる。(誤混入の防止のため、保管場所の施設を区画し、帳簿等で在庫を管理する等)。
・定期的に原料配合表に基づいた成分検査等を実施する。
提供段階:
・企画・設計・調達・生産・製造・加工の各段階における確認事項を集約し、表示の根拠を確認して、最終的な表示を検証する。
・企画・設計・調達・生産・製造・加工・営業の各部門間で、表示しようとする内容と実際の商品・役務とを照合する。
・社内外に依頼したモニター等の一般消費者の視点を活用し、一般消費者が誤認する可能性があるかどうかを検証する。

4. 表示に関する情報共有の例
・ 社内イントラネットや共有電子ファイル等を利用して、関係従業員が表示の根拠となる情報を閲覧できるようにしておく。
・ 企画・設計・調達・生産・製造・加工・営業等の各部門間で、表示の根拠となる情報を、証票(仕様書等)をもって伝達する。
・ 表示物の最終チェックを品質管理部門が運用する申請・承認システムで行い、合格した表示物の内容をデータベースにて関係従業員に公開する。

5. 表示等を管理するための担当者等を定めることの例
・既存の品質管理部門・法務部門・コンプライアンス部門を表示等管理部門と定める。
・店舗ごとに表示を策定している場合、店長を表示等管理担当者と定める。
・商品カテゴリごとに異なる部門が表示を策定している場合、各部門の長を表示等管理担当者と定める。
・ チラシ等の販売促進に関する表示等については、営業部門の長を表示等管理担当者と定め、商品ラベルに関する表示等については、品質管理部門の長を表示等管理担当者と定める。
・ 社内資格制度を設け、表示等管理担当者となるためには、景品表示法等の表示等関連法令についての試験に合格することを要件とする。

表示等管理担当者を指名する場合として十分でない例:
・ 表示等管理担当者とされている者に実体のない場合(実際には表示等の管理を行っていない場合等)
・ 表示等管理担当者とされている者の権限が十分でない場合(当該表示等が違法であるとする判断を他の者が覆すことができる場合等)

6. 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ることの例
・表示等の根拠となる情報を記録し、保存しておくこと。
表示等の根拠となる情報についての資料の例:
原材料、原産地、品質、成分等に関する表示
企画書、仕様書、契約書等の取引上の書類、原材料調達時の伝票、生産者の証明書、製造工程表、原材料配合表、帳簿、商品そのもの等
効果、性能に関する表示
検査データや専門機関による鑑定結果等
価格に関する表示
必要とされる期間の売上伝票、帳簿類、製造業者による希望小売価格・参考小売価格の記載のあるカタログ等
景品類の提供
景品類の購入伝票、提供期間中の当該商品又は役務に関する売上伝票等
その他、商談記録、会議議事録、決裁文書、試算結果、統計資料等

合理的と考えられる資料の保存期間の例:
・ 即時に消費される場合又は消費期限が定められている場合、3か月
・ 賞味期限が定められている場合、それに応じた期間
・ 商品の保証期間が定められている場合、それに応じた期間
・ 商品の流通期間や耐用年数が想定されている場合、それに応じた期間
・ 他法令に基づく保存期間が定められている場合(法人税法、所得税法、米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(米トレサ法)等)、当該期間

7. 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応の例
・表示物・景品類及び表示等の根拠となった情報を確認し、関係従業員から事実関係を聴取する。
・事案に関する情報を入手した者から法務部門・コンプライアンス部門に速やかに連絡する体制を整備する。
・速やかに当該違反を是正し、一般消費者に対する周知及び回収を行うとともに、事実関係を関係行政機関へ報告する。
・再発防止に向け、関係従業員等に対して必要な教育・研修等を改めて行い、当該事案を共有し、表示等の改善のための施策を講じる。
・内部通報制度の整備や、社外に第三者が所掌する法令遵守調査室を設置する。

速やかに景品表示法違反を発見する監視体制の整備及び、関係従業員等が報復のおそれなく報告できる報告体制を設け、実施する。

事業者が講ずべき広告表示の適正管理の指針案では、事業者の規模や業態、取り扱う商品又は役務の内容等に応じた措置を講じることとしています。自社ごとに必要な管理体制を検討することが求められます。

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不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項に基づく「事業者が講
ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(案)」
に関する意見募集の開始について
(平成26年8月8日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/141114premiums_5.pdf
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≪関連記事≫

景表法改正、事業者が講ずべき広告表示の適正管理の指針案 (消費者庁 平成24年8月8日)

・景表法改正案閣議決定!急務となる事業者コンプライアンス対策

・景品表示法規制強まる。25年度処分件数 過去7年間で最高!

・25年度の消費者庁の広告表示適正化への取組をチェック!

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。