問われる媒体事業者の表示責任。食品の健康保持増進効果虚偽誇大の予見性 (ガイドライン改正案パブコメ結果公示 平成28年4月1日)

4月1日から健康増進法の「誇大広告の禁止に係る勧告・命令権限」が都道府県などに委譲されました。
(従来は、消費者庁と、消費者庁から委任された厚生労働局が勧告・命令権限を保有)
これを受けた「食品の健康保持増進効果に関する虚偽誇大広告の禁止・適正化の監視指導に関するガイドライン改正案」について、パブリックコメントの結果が公示されました。(意見募集期間:平成28年2月19日~平成28年3月9日)

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◆「食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)改正案」に対する意見募集の結果について
(平成28年4月1日 消費者庁表示対策課 食品表示対策室)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235070028&Mode=2
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意見提出総数は14件。内訳は、地方公共団体1件、団体8件、個人5件でした。

表示の責任について、広告媒体事業者が食品の製造業者、販売業者と同等の責任を負うわけではないという回答が引き出されましたが、表示の虚偽誇大について予見し得たかどうかが争点となりそうです。

意見公募された改正案では健康増進法の基本的な考え方は変わっていませんが、注目ポイントとして以下の点が明示されていました。

◆虚偽誇大広告等の指針改正案
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000140490

(1)禁止の対象となる「著しく事実に相違する表示」「著しく人を誤認させるような表示」の「著しく」に該当する判断基準

(2)健康増進法で禁止される広告表示の対象者の項目に、「『食品として販売に供する物に関する広告その他の表示をする』者であれば、例えば、新聞社、雑誌社、放送事業者等の広告媒体事業者等も対象となり得る」と表記され、メディア側も違反対象に入ること。

上記改正案への意見に対する考え方が示されています。

◆御意見の概要及び御意見に対する考え方
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000143246

意見:
「著しく」の判断基準をもっと分かりやすく示すべき。

意見に対する考え方:
「著しく」に該当するか否かは、表示された一部の用語や文言のみで判断されるものではなく、当該用語等のほか周辺に記載されているその他の表現、掲載された写真、イラストのみならず、時にはコントラストも含め、表示全体で判断する。
一般消費者が、その食品を摂取した場合に実際に得られる真の効果が広告等に書かれたとおりではないことを知っていれば、その食品に誘引されることは通常ないと判断される場合は、「著しく」に該当する。

意見:
広告を掲載又は放送する広告媒体事業者が、広告を出稿する食品等の製造業者及び販売業者と同等の責任を有するかのように示すものであり、反対する。
インターネット媒体社も同法の規制対象者となる旨を明記すべきである。

意見に対する考え方:
広告その他の表示内容を決定するのは、通常、食品の製造業者、販売業者が一義的に表示の責任を負うのは当然であり、本改正案により、新たに広告媒体事業者に対し製造業者等と同等の責任を有すると示すものではない。
もっとも、広告表示内容が虚偽誇大なものであることを予見し、又は容易に予見し得た場合等特別な事情がある場合においては、広告媒体事業者であっても同項の適用を受けることがあり得る。

原案からの変更点(赤字部分)
第2 健康増進法第31条第1項の規定により禁止される広告その他の表示
1 同項の適用を受ける対象者
健康増進法第31条第1項には「何人も」と規定されている。このため、同項が対象とする者は、食品等の製造業者、販売業者等に何ら限定されるものではなく、「食品として販売に供する物に関する広告その他の表示をする」者であれば、例えば、新聞社、雑誌社、放送事業者、インターネット媒体社等の広告媒体事業者等も対象となり得ることに注意する必要がある。
もっとも、虚偽誇大広告について第一義的に規制の対象となるのは健康食品の製造業者、販売業者であるから、直ちに、広告媒体事業者等に対して健康増進法を適用することはない。しかしながら、当該表示の内容が虚偽誇大なものであることを予見し、又は容易に予見し得た場合等特別な事情がある場合には、同法の適用があり得る。

意見:
健康食品の広告の中には、管理栄養士や栄養士等専門家が推奨しているかのように示す広告については、消費者に誤認を与える可能性があることから厳しく取締りをするべきである。

意見に対する考え方:
健康保持増進効果等については、医師や学者等の談話やアンケート結果、学説、経験談などを引用又は掲載することにより、暗示的又は間接的に健康保持増進効果等を表示するものも、健康保持増進効果等の表示に該当する。
したがって、当該表示が「著しく事実に相違する表示」又は「著しく人を誤認させるような表示」に該当する場合、健康増進法に違反することとなる。

《関連記事》
・健康食品広告法規制強化の流れ。健康増進法にも「不実証広告規制」導入か?

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。