トクホ制度見直し、「新たな科学的知見」「定期的な品質管理」の報告義務化 (「特定保健用食品の表示許可等について」の一部改正 2017年3月17日)

消費者庁は、3月17日付で、トクホの許可申請に関する「健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令」と、次長通知を一部改正しました。(※1)
改正のポイントは、「新たな科学的知見を入手した場合の消費者庁への報告の義務化」「第三者機関による定期的な分析の実施及び報告の義務化」「販売の有無に関する定期的な報告の義務化」となっています。

トクホ制度に関しては、2016年9月の日本サプリメント(株)トクホ制度初の表示の許可取り消し問題を踏まえて、消費者委員会本会議にて議論がなされていました。
3月21日の第243回 消費者委員会本会議にて、「健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策と、特定保健用食品の制度・運用見直しについての建議」(平成28年4月12日付)への、消費者庁の対応実施状況報告も行われました。(※2)

今回のトクホ制度・運用見直しのポイントを確認します。


●新たな科学的知見を入手した場合の消費者庁への報告の義務化
新たな科学的根拠の適切な収集方法の確立と、再審査が必要となる要件の見直しを含む再審査制を有効に機能させるために必要な検討及び体制整備を行う。

現行:
保健の用途に関する安全性や有効性に関する知見の情報収集は努力事項だった。
改正後:
・知見の情報収集及び報告が義務付けられた。
・「新たな知見」を入手した場合、入手してから30日以内に消費者庁に報告する。
(30日以内に十分な報告が困難である場合は、後日、追加報告)
・報告が義務付けられた「新たな知見」の内容が具体的に示された。

「健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策と、特定保健用食品の制度・運用見直しについての建議」への対応について(平成29年3月21日 消費者庁資料より引用)

●品質管理の定期的な報告の義務化
許可条件どおりの製品が販売されているか、許可後の販売状況の実態把握につなげる。

・定期的に、少なくとも1年に1回は第三者機関において許可試験と同等の試験検査を実施する。
・試験検査成績書及び品質管理の状況等について、毎年6月末日までに、都道府県を経由して消費者庁に報告する。
・過去1年間の販売実績等についても報告する。

府令と通知改正を受け、トクホの許可に関する質疑応答集も「新たな知見に関する報告」「定期的な報告」に関する部分が加えられています。

また、トクホ制度に対する消費者庁によるその他の取り組みとして、「買上調査」「消費者にとって分かりやすい情報公開」も盛り込まれています。

●特定保健用食品の買上調査
特定保健用食品の販売後の事後チェックとして、関与成分が許可時の規定値を満たしているかを把握する。

平成28年度:
平成29年度から実施予定だった買上調査について、平成28年度に前倒して実施。
対象は、平成28年9月~11月に実施した関与成分に関する調査において試験時期が古い品目及び自社分析品目を中心に7品目を買い上げ、関与成分量の分析試験を第三者機関に依頼。結果については、消費者庁において精査した上で公表予定。

平成29年度(予定):
市場に流通している366品目の中から無作為に35品目程度を買い上げ、関与成分量の分析試験を第三者機関に依頼予定。結果については、平成28年度調査結果と同様に公表予定。

●消費者にとって分かりやすい情報公開
特定保健用食品を含めた健康食品全般の諸情報について、現在、国立健康・栄養研究所のデータベースで一部公開されているが、特定保健用食品の有効性や安全性に関する情報については専門的な内容のため、分かりにくさが課題。消費者にとって分かりやすい情報公開を行う。

平成29年度(予定):
データベースにおいて発信するべき情報の選択と質の向上を図るための調査事業を実施。調査事業を通じて消費者ニーズを把握するとともに、「消費者向け」「専門家向け」の公開情報、事業者に求める公開基準を検証する。

平成30年度(予定):
平成29年度の調査事業において作成した情報を、国立健康・栄養研究所のデータベースに公開。
事業者に求める情報公開の基準を次長通知に明記する等の再改正を予定。

——

機能性表示食品制度との棲み分けという観点からも、国が食品の機能性を審査し、表示について許可を与える特定保健用食品に対して、その品質管理に対する国の保証が強く求められています。

(※1)
「特定保健用食品の表示許可等について」の一部改正について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_specified_health_uses/notice/assets/food_labeling_cms206_20201117_22.pdf
———
・健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成21年内閣府令第57号)一部改正(消費者庁 平成29年3月17日)
・別添1 特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領
・「特定保健用食品の表示許可等について」の一部改正(平成29年3月17日付け消食表第145号)
(別紙)新旧対照表
・(別添)特定保健用食品に関する質疑応答集
———

(※2)
第243回 消費者委員会本会議(内閣府 2017年3月21日)
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2017/243/shiryou/index.html

≪関連記事≫

・消費者委員会の意見案まとまる トクホ制度・運用見直し、広告監視の健増法改正も視野に
(第241回 消費者委員会本会議 2017年1月17日)

健康食品の品質管理と健食ビジネス戦略 
(消費者庁 平成27年度:機能性表示食品制度における機能性に関する科学的根拠の検証)

・トクホ、特別用途食品品質調査結果公表 許可取り消しの判断根拠 (平成28年11月 消費者庁)

・日本サプリメント トクホ初の許可取り消しと、トクホ全商品の調査要請

・トクホの更新制度は復活するのか?保健機能食品の品質管理規制

・強まる健康食品への規制 トクホ広告審査と業界の自主規制の取り組み
(日健栄協 第4回 特定保健用食品広告審査会)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。