埼玉県は11月18日に、全国で接骨院のフランチャイズチェーン展開する(株)MJG(本社:東京都新宿区)に対し、ウェブサイトにおいて表示した「お客様評価」や、「やせプログラム」の施術効果の表示について、景品表示法優良誤認の措置命令を行いました。
平成26年12月の景表法改正で、都道府県知事に付与された措置命令権限によるもので、「やせプログラム」の施術効果については不実証広告規制(※)を用いた処分となっています。
また、国家資格が必要なあん摩マッサージ指圧・鍼灸・柔道整復(接骨)の施術院の広告は、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき法)」、「柔道整復師法」の法規制の対象となります。
厚生労働省で進められている広告ガイドライン策定の動きもチェックしておきましょう。
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接骨院を経営する事業者に対する措置命令について
(埼玉県 2019年11月18日)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/121293/news20191118.pdf
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
【違反内容】
事業者の概要:
株式会社MJG(エムジェージー)
対象役務:
同社及び同社のフランチャイズチェーンに加盟する事業者が経営する店舗を通じて供給する役務
表示媒体:
ウェブサイト
表示期間:
遅くとも2018年11月1日から2019年10月24日まで
表示内容:
a. お客様評価
例えば以下のように記載し、あたかも、対象役務について顧客や医師からの評価が非常に高いものであるかのように表示していた。
<表示例>
・「全国の患者様から選ばれてNo.1お客様『評価』★★★★★」
・「全国の接骨院でMJG接骨院は三冠達成!」
・「第1位痛みが辛い患者様が選ぶ全国の接骨院技術部門」 ・「第1位安心安全な骨盤矯正全国の患者様が選ぶ骨盤矯正」
・「第1位むち打ち治療に強い接骨院全国の医師が選ぶむち打ち治療」等
実際:
前記の表示は、2018年10月に、同社が調査会社に委託しインターネット上で収集した同社を含む整骨院10者に関するイメージ調査の結果であり、無作為抽出方法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されているとはいえないものであった。
また、当該調査は、腰痛等の痛みが辛い患者を対象とする調査や、医師資格を保有するか否かの確認をしたうえでの調査ではなかった。
さらに、10者のうち同社を除く9者の中には、同社の関連の者が2者含まれている。
b. やせプログラム
例えば以下のように記載し、あたかも、「やせプログラム」を受けるだけで食事指導等も必要とせず容易に体脂肪の減少と身体の全体的な引締め効果が得られるかのように表示をしていた。
<表示例>
・「やせプログラムとは?」、「『やせプログラム』では、『複合高周波EMS』を用いて、鍛えにくい身体の奥の筋肉『インナーマッスル』をはじめとする全身の筋肉を、楽に、しっかりとトレーニングします。」
・「腹筋6000回の効果?特許取得の複合高周波『ダブルインパクト波形』」、「『ダブルインパクト波形』は、従来の複合高周波をさらに進化させた驚異の波形です。EMS初の50万ヘルツという高周波で、より深くまで通電。『インナーマッスル』をしっかり鍛えるとともに、アウターマッスルにも同時に強く働きかけ両方をトレーニングできます。」
・「数字に見る、楽トレ後のサイズダウンの変化」、「※高周波EMSの『楽トレ』で筋肉量を減らすことなく脂肪燃焼と筋肉自体の引き締めが行われた結果、体重の変化は少ないにもかかわらずバランスの良いサイズダウンと体脂肪量の減少という、健康的なシェイプアップに成功しました。」
実際:
当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社は資料を提出したが、当該資料は、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められないものであった。
県内では消費生活支援センター等の窓口に、このサービスに関する相談が2019年11月18日までに54件寄せられたと報告されています。
MJGは措置命令を受けての同社HPでのお詫び掲載で、表示違反について「広告表現に対する認識不足により発生したもの」と説明しています。本年度11月末日までに、全店舗において、広告内容また掲示物の見直し等の対応を順次実施するとしていますが、返金対応についての記載はありません。
埼玉県県民生活部消費生活課からの措置命令に関するお詫びとお知らせ
((株) MJG 令和元年11月20日)
https://mjg.co.jp/wp-content/uploads/2019/11/saitama-gyosei-1.pdf
一方、国家資格が必要なあん摩マッサージ指圧・鍼灸・柔道整復(接骨)の施術院の広告を規制する、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき法)」、「柔道整復師法」については、厚生労働省が、2018年5月より広告ガイドライン作りの検討会を進めています。
2019年11月14日に開かれた第8回会合では広告ガイドライン(案)作成方針が議論され、今年度中にガイドラインを策定し、来年度以降、広告適正化の取組を進めていくとしています。
気になる施術所のHPについては、原則として広告の規制対象外とする考えを示しつつ、バナー広告やリスティング広告を規制対象とする案が出されています。
ただし、あはき法、柔道整復師法では対象外のウェブサイトの表示も、景品表示法においては規制対象となりますので、注意が必要です。
また、国家資格ではない整体院やエステサロンについては、あはき法、柔道整復師法の法規制の対象外ですが、景品表示法の規制は免れません。
過去にも、「小顔矯正」や「整体」「エステ」に対する景表法措置命令や改善指示・指導が複数回行われています。
◆あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会
(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_547242.html
第8回検討会資料:これまでの議論を踏まえた広告ガイドライン(案)作成方針について
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000510988.pdf
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