「葛の花」機能性表示食品9社に景表法課徴金納付命令。自主的お詫び社告の影響は?(消費者庁:平成30年1月19日)

「葛の花」機能性表示食品の表示違反問題に一つの決着がつきました。
1月19日、消費者庁は葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分として、痩身効果を標ぼうする機能性表示食品の販売事業者9社に対し、景品表示法に基づく課徴金納付命令を行いました。

「葛の花」機能性表示食品の表示について、対象商品を摂取するだけで、誰でも容易に、内臓脂肪(及び皮下脂肪)の減少による、外見上、身体の変化を認識できるまでの腹部の痩身効果が得られるかのように表示していたとして、16社が平成29年11月7日に景表法に基づく措置命令を受けていました。
そのうち9社が課徴金命令を受けることとなりました。

・「葛の花」16社に、機能性表示食品で初の景表法措置命令。届出内容と表示の整合性

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葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品の販売事業者9社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について
(消費者庁 平成30年1月19日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180119_0001.pdf
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「葛の花」の措置命令を巡っては、措置命令処分前の異例のお詫び社告が注目されました。
事業者側の目論見として、課徴金を受けるリスク回避や課徴金対象期間を短縮させる意図が推測されましたが、実際に課徴金賦課に対してどのような影響を与えることとなったのか確認してみます。

・スギ薬局の社告に見る、機能性表示食品の不当広告と謝罪告知のタイミング


●課徴金納付命令の概要
課徴金納付命令を受けたのは、課徴金額は高額なものから(株)ステップワールドの4,893万円、(株)ハーブ健康本舗の2,073万円、(株)オンライフの1,167万円、(株)Naleluの775万円、(株)テレビショッピング研究所の689万円、(株)やまちやの592万円、ピルボックスジャパン(株)の351万円、日本第一製薬(株)の285万円、(株)協和の263万円の順となっている。

課徴金納付命令を受けた事業者(9社)課徴金対象期間・金額一覧

●「課徴金対象期間」の考え方
課徴金額は「課徴金対象期間」の対象商品の売上額の3%。
課徴金額の算定基準となる「課徴金対象期間」は、課徴金対象行為(不当表示行為)をやめて以降、商品の取引をしていない場合は、不当表示行為を行っていた期間そのままです。
しかし、不当表示行為をやめて以降も取引が継続していた場合、不当表示行為をやめてから最大6カ月先までが対象となり、最大で3年間とされています。
「課徴金対象期間」をできるだけ短縮するには、不当表示行為をやめると同時に商品の取引を行わないようにすること、それができない場合は自主的な社告掲載などの「誤認解消措置」を取る必要があります。

「課徴金対象期間」=①+②(法第8条第2稿)
① 課徴金対象行為(不当表示行為)をした期間
② 「課徴金対象行為をやめた日」から(a)6か月を経過する日、又は、(b)「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置」をとった日のいずれか早い日までの間に、当該「課徴金対象行為に係る商品又は役務の取引をした」場合
→ ①の期間(課徴金対象行為をした期間)に、当該「課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間」を加えた期間

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景品表示法への課徴金制度導入について
平成28年 消費者庁 表示対策課
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_181225_0002.pdf
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●誤認解消措置を素早く行った課徴金納付対象事業者は、テレビショッピング研究所
今回の課徴金納付対象事業者の課徴金対象期間の延長日数は、短い順に以下の通りです。
(株)テレビショッピング研究所:延長期間13日
不当表示行為をやめた日:平成29年5月31日 誤認解消措置認定日:同年6月13日
日本第一製薬(株):延長期間23日
不当表示行為をやめた日:平成29年7月9日 誤認解消措置認定日:同年8月1日
(株)協和:延長期間57日
不当表示行為をやめた日:平成29年8月24日 誤認解消措置認定日:同年10月20日
(株)ハーブ健康本舗:延長期間119日
不当表示行為をやめた日:平成29年6月6日 誤認解消措置認定日:同年10月3日
(株)Nalelu:延長期間121日
不当表示行為をやめた日:平成29年6月8日 誤認解消措置認定日:同年10月7日
(株)ステップワールド:延長期間122日
不当表示行為をやめた日:平成29年6月22日 誤認解消措置認定日:同年10月22日
(株)やまちや:延長期間132日
不当表示行為をやめた日:平成29年5月17日 誤認解消措置認定日:同年9月26日
ピルボックスジャパン(株):延長期間142日
不当表示行為をやめた日:平成29年5月16日 誤認解消措置認定日:同年10月5日
(株)オンライフ:延長期間6か月
不当表示行為をやめた日:平成29年5月31日 誤認解消措置認定日:平成30年1月17日(課徴金対象期間末日:平成29年11月30日)

9社中オンライフを除く8社が、措置命令処分(平成29年11月7日)前に誤認排除措置を行っています。
不当表示行為をやめた後、最も素早く誤認解消措置を行った事業者はテレビショッピング研究所で、課徴金対象期間延長は13日でした。
オンライフのみ、措置命令処分後の平成30年1月17日に誤認解消措置を行っており、不当表示行為をやめた日から7カ月17日目となっています。課徴金対象期間は不当表示行為機関から最大6カ月の延長となっています。

●課徴金賦課の対象外となった7社は、対象期間の売上額が5000万円未満
課徴金賦課の対象外となった7社は、対象期間の売上額が5000万円未満(課徴金額にして150万円未満)で「課徴金対象となる要件を満たしていなかった」(表示対策課)とされています。

《課徴金賦課の対象外となるケース》
・違反行為を行った事業者が、注意義務を尽くしていたことの証明があったとき
・課徴金の額が150万円未満となる場合(算定対象となる売上高5000万円未満)
・違反行為を行った事業者に対する弁明の機会あり
・違反行為がなくなった日から5年を経過した場合

7社のうち、措置命令処分前に誤認排除措置を行った事業者は4社(ありがとう通販(株)、(株)ECスタジオ、(株)スギ薬局、(株)ニッセン)で、中でもスギ薬局は不当表示行為をやめた日から誤認解消措置を行った日までの日数が13日と最短となっています。
一方、措置命令処分後に誤認排除措置を行った事業者3社((株)太田胃散、(株)CDグローバル、(株)全日本通教)は、不当表示行為期間の売上状況から課徴金賦課の対象となる売上高に満たないという判断があったのかもしれません。

課徴金納付命令を受けなかった事業者(7社)の表示期間・誤認解消措置

措置命令に課徴金制度がセットとなることで、不当な表示に対する事業者の自主的な社告掲載が促進されることは、法規制の効果といえるでしょう。

≪参考記事≫
・返金計画示されず トクホ取消の日本サプリメント景表法課徴金納付命(消費者庁:平成29年6月7日)
・トクホ取消の日本サプリメントに景表法措置命令 強まる景表法の取組(消費者庁:平成29年2月14日)
・日本サプリメント トクホ初の許可取り消しと、規制強化の動向
・景表法課徴金は対象売上高の3%、課徴金賦課の対象外となるケースは?(消費者庁 平成24年8月26日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。