国センに寄せられた健康被害情報14%増。「化粧品」が大幅増加(PIO-NETにみる2022年度の危害・危険情報)

(独)国民生活センターが、9月6日、インターネット通信販売などを利用して海外から購入した医薬品や化粧品や、「指定薬物」を含む食品などでの健康被害を公表し、購入や使用についての注意喚起を行っています。

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(独立行政法人国民生活センター 2023年9月6日公表)
個人輸入した医薬品、化粧品等にご注意!
-インターネット通信販売で購入した美白クリームで皮膚障害が発生-
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230906_1.html

カンナビノイド「THCH」は指定薬物です!
-THCHを含む商品を入手したり使用したりしてはいけません-
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230906_2.html
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2022年度の全国の消費生活相談情報での、身体にけが、病気等の疾病(危害)を受けた商品・サービスのトップが「化粧品」、2位が「健康食品」となっています。
今回は、PIO-NET(注1)により収集した全国の消費生活に関する相談情報より、「危害・危険情報」(注2)についてご紹介します。
2022年度の「危害情報」件数は12,847件で、前年度より1,553件増加し、対前年度比13.8%増となりました。これは、「危害情報」の上位商品である「化粧品」が1,023件増加したことが大きく影響しています。

(注1)
PIO-NET (パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベース。
(注2)
危害・危険情報とは、商品・役務・設備に関連して、身体にけが、病気等の疾病(危害)を受けたという情報(「危害情報」)と、危害を受けたわけではないが、そのおそれがある情報(「危険情報」)をあわせたもの。
データは、2023年5月末日までの登録分。なお、消費生活センター等からの経由相談を除く。


「危害・危険」の相談件数、対前年度比12.5%増加

「危害・危険情報」は14,888件で、対前年度比でみると12.5%増となった(2021年度:13,236件)。
「危害情報」は12,847件、対前年度比でみると13.8%増(2021年度:11,294件)。
「危険情報」は2,041件、対前年度比でみると5.1%増(2021年度:1,942件)。

「化粧品」の危害情報件数が大幅増、上位商品、いずれも増加

1位:「化粧品」4,295件(33.4%)、前年度(1位、3,272 件)より1,023 件、31.3%増加。
前年度より「化粧クリーム」 494 件、「ファウンデーション」が 315 件増加したことなどによる。
2位:「健康食品」1,184 件(9.2%)、前年度(2位、1,134 件)より50 件、4.4%増加。
3位:「医療サービス」(美容医療を含む)952件(7.4%)、前年度(3位、851 件)より101件、11.9%増加。
4位:「エステティックサービス」413件(3.2%)、前年度4位、385 件)より28件、7.3%増加。
5位:「歯科治療」373件(2.9%)、前年度(5位、345 件)より28件、8.1%増加。

「危害」内容では化粧品による「皮膚障害」が大幅増加

1位:「皮膚障害」5,380 件(41.9%)、前年度(1位、4,452件)より928件、20.8%増加。
内容の商品・役務等別内訳では、「化粧品」4,060件と7割以上を占め、前年度より1,079 件増加した。次いで、「健康食品」245件で、前年度より51件増加した。
2位:「その他の傷病及び諸症状(※)」)3,180 件(24.8%)、前年度(2 位、2,873 件)より307件、10.7%増加。
内訳は、「医療サービス」533 件で、前年度より128件増加。次いで、「歯科治療」306件で、前年度より25件増加した。
(※)「その他の傷病及び諸症状」には、脱毛、切れ毛、頭痛、腰痛、発熱、精神不安定等が該当し、根本的な原因が明らかでないものが含まれる。
3位:「消化器障害」1,320 件(10.3%)、前年度(3 位、1,183 件)より137件、11.6%増加。
内訳は、「健康食品」699件と過半数を占め、前年度より59件増加した。このほか「調理食品」90 件、「外食」「飲料」ともに 77 件などが多い。
4位:「擦過傷・挫傷・打撲傷」611 件(4.8%)、前年度(4位、563 件)より 48件、8.5%増加。
内訳は、「商品一般」62 件、「自転車」50 件、「エステティックサービス」39 件などが多い。
5位:「熱傷」545 件(4.2%)で、前年度(5位、549 件)より 4件、0.7%減少。
内訳は、「エステティックサービス」103 件、「医療サービス」87 件などが多い。

化粧品の「危害」相談が10歳未満、20歳代を除く、すべての年代でトップ

「化粧品」の相談は、10歳未満、20歳代を除く、すべての年代でトップ。20歳代でも3位に上がっている。
「健康食品」の相談は、30歳代で3位だが、40歳代以上ではすべての年代で2位に上がっている。

被害者の年代別に危害の多い商品・役務の傾向は、以下のとおり。
10歳未満は「外食」が13件でトップ。
10 歳代は「化粧品」が52件でトップ、2位「医療サービス」31件。
20 歳代は「医療サービス」が183件でトップ、2位「エステティックサービス」146件、3位「化粧品」88件。
30 歳代以上の各年代では「健康食品」がトップで、30 歳代が215件、40 歳代が664件、50歳代が1,216件、60 歳代が1,081件、70歳以上が806件。
40歳代以上の各年代では「健康食品」が2位で、40歳代が154件、50歳代が293件、60歳代が233件、70歳以上が287件。また、3位が「医療サービス」で、40歳代が137件、50歳代が143件、60歳代が78件、70歳以上が122件。
30 歳代では、2位「医療サービス」193件、3位「健康食品」87件と、順位が逆転している。

危害情報上位の薬事関連商品の内容

「危害情報」件数上位の薬事関連商品(「健康食品」「化粧品」)について、性別、年代、商品種別・危害内容内訳、事例を分析した。

化粧品(4,295件、前年度比31.3%増)
性別・年代:
性別では、女性が3,824件(89%)と約9割を占める。

「化粧品」の内訳:
「乳液」が689件(16.0%)、「化粧クリーム」が677件(15.8%)「ファウンデーション」が623件(14.5%)の順。
前年度より「化粧クリーム」が494件、「ファウンデーション」が315件増加したことなどが、前年度比増加の要因。

危害内容:
「皮膚障害」が4,060件(94.5%)、次いで「その他の傷病及び諸症状」200件(4.7%)の順。

<事例>
・定期購入で申込んだシャンプーを使い始めたが、湿疹が出て使用を中止した。(70歳代・女性)
・保湿クリームを使用したところ発疹が出た。医療機関では使用したクリームが原因と言われた。(30歳代・女性)
・定期購入のしわ改善クリームの使用による肌荒れという診断書があるが、業者は解約を認めず不満。(40歳代・女性)
・インターネット通販で購入した洗顔料を数日間使用したところ、皮膚が赤くなり、むけてしまった。(50歳代・男性)
・インターネット通販で美容液をお試しで注文した。肌に合わず皮膚科を受診したところ、使用しないよう言われた。(70歳代・女性)

健康食品(1,184件、前年度比4.4%増)
性別・年代:
性別では女性が924件(78%)と約8割を占める。
年代別では、50歳代が293件(24.7%)で最も多く、次いで、70歳以上が287件(24.2%)、60歳代233件(19.7%)の順となっている。

「健康食品」の内訳:
各種サプリメントなどを含む「他の健康食品」807件(68.2%)、「健康食品全般」237件(20.0%)、「酵素食品」81件(6.8%)の順。
「他の健康食品」が79件、「健康食品全般」が39件増加したことが、前年度比増加の要因。

危害内容:
「消化器障害」がが 699件(59.0%)と約6割を占め、次いで、「皮膚障害」245件(20.7%)、「その他の傷病及び諸症状」189件(16.0%)の順。

<事例>
・定期購入の葉酸サプリを飲んだところ、胃痛と吐き気がした。妊娠中でもありやめたい。
(20歳代・女性)
・インターネット通販で購入したダイエットコーヒーを飲んだところ、発疹が出た。(60歳代・女性)
・通信販売で購入した健康食品を飲用したところ、肝臓の数値に異常が出た。(70歳代・男性)
・テレビショッピングで購入した、血圧を下げるとうたうサプリメントを飲んだところ、貧血のようになった。(70歳代・女性)
・SNSで知ったダイエット用ゼリーを購入し、食べたところ、吐き気や動悸がして、使用を中止した。(30歳代・女性)


2021年度に健康食品と化粧品の危害情報件数1位の順位が入れ替わり、2022年度はさらに化粧品の件数が増加する結果となっています。(健康食品は横ばい)

健康食品に関しては、2020年6月1日には食品衛生法改正(平成30年6月13日公布)が施行され、指定成分等含有食品による健康被害情報の届出が義務化されました。
同時に、容器包装への指定成分に関する表示が義務付けられました。
また、同法改正により、事業者が食品の自主回収(リコール)を行う場合に、行政への届出が義務付けられました。(2021年6月1日施行)

化粧品に関して、今後も健康被害の拡大が続くようであれば、厳しい品質管理規制が求められる可能性もあります。

商品を扱う事業者には、製品の製造管理のあり方はもとより、被害情報収集と情報処理体制整備、消費者に対する適切な情報提供(表示、広告等)が一層求められます。
フィデスでは、顧客からの問合せ・相談情報の分析・活用、情報提供に関するコンサルティングを行っています。
お気軽にお問い合わせください。

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2022年度のPIO-NETにみる危害・危険情報の概要
(独立行政法人国民生活センター 2020年9月3日公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230906_4.html
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《関連記事》

・食品による健康被害防止対策強化へ。食品衛生法、食品表示法改正

・国センに寄せられた健康被害情報、上位3商品・役務は「健康食品」「化粧品」「医療サービス」
(PIO-NETにみる2017年度の危害・危険情報)

増える健康食品、化粧品の健康被害。「皮膚障害」「消化器障害」相談が大幅増加
(PIO-NETにみる2016年度の危害・危険情報)

・健康食品の健康被害と商品名公表
(東京都 平成28年度「『危害』の消費生活相談の概要」)

・国セン、プエラリア・ミリフィカを含む健康食品に注意喚起。厚労省、調査開始
(国民生活センター商品テスト 2017年7月)

・広告媒体別の健康食品に関する消費者相談の傾向とは?
(東京都 平成27年度)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。