一歩先ゆく埼玉県の通販「定期購入」契約トラブルに対する法執行

先日の記事では、埼玉県によるダイエットサプリメント通販の「定期購入」契約表示に対する、景品表示法と特定商取引法による処分事案を取り上げました。

「お試し」のつもりが定期購入になっていた、という健康食品や化粧品のネット通販の定期購入トラブルについては、埼玉県はいち早く2017年2月に国に要望書を提出し、特商法に定める義務表示事項に総額表示の明確化を求めていました。

当初、消費者庁は「現行法令により一定の対応が可能である」として、法律やガイドライン改正には慎重でした。
広告の内容と比して著しく有利であると誤認させるような場合は、特商法や景表法の有利誤認表示に該当する可能性があるということです。

ただ、その後も事業者への法執行がなされることなく、定期購入トラブルは増加、2017年12月に契約時の販売条件の明記を義務付けた特商法の施行規則一部改正が施行されました。

残念ながら、施行規則改正後もトラブル増加は続き、2019年度(2019年11月30日時点)にPIO-NETに寄せられた相談は29,177件と、2018年度の23,002件を既に上回り、前年度同期比約230%と激増。

施行規則改正の運用効果も上がらない状況の中、2019年8月に、埼玉県から「いつでも解約」を謳った育毛剤に対する景表法措置命令が出されました。

・育毛剤(株)RAVIPAに景表法措置命令。「いつでも解約」「顧客満足度」「使用体験者の年齢」「お手入れなし・あり写真」に不当表示認定(埼玉県 2019年8月20日)

そして、同年12月19日に、国民生活センターによる3度目の注意喚起が公表され、ようやく、消費者庁から特商法による処分が12月26日に2事案(化粧品、健康食品通販(株)TOLUTO:業務停止命令(3か月)、健康食品通販(株)アクア:指示)、2020年1月22日に1事案(健康食品通販(株)GRACE)が、立て続けに出されたところです。

・国セン3度目の注意喚起。監視強化必至の通販定期購入の注意点とは

・ネット通販定期購入の表示に特商法での処分 (株)TOLUTOと前代表取締役等に業務停止命令(消費者庁 2019年12月26日)

・続く特商法処分。ネット通販定期購入の最終申込ボタン表示で(株)GRACEに指示(消費者庁 2020年1月22日)

更に、今回のニコリオに対する処分では、埼玉県は「定期購入」契約表示に対して、景表法の有利誤認と特商法の「顧客の意に反する申込み」による違反認定を行っています。
また、定期購入契約トラブルで問題となっている、販売サイトへの流入口となるアフィリエイト広告の表示も違反対象としています。

消費者庁の一歩先ゆく法執行を行う埼玉県に注目しています。

≪参考記事≫

・「ネット通販の定期購入トラブル」と行政の動き(岡村消費者庁長官記者会見 2017年2月22日)

・健康食品や化粧品等、通販で定期購入契約を行う際の広告に、販売条件の明記が義務付けに(特定商取引に関する法律施行規則の一部を改正する命令(平成29年6月30日公布))

・通販の定期購入契約で気を付けたい特商法の留意事項とは。購入手続き画面表示の具体例(特定商取引に関する法律施行規則改正(平成29年12月1日施行))

・特商法改正後も増加する定期購入契約トラブル。景表法規制も

・(株)アクア ネット通販定期購入の最終申込ボタン表示に特商法で指示処分(消費者庁 2019年12月26日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。